ランチ酒 原田ひ香

●ランチ酒 原田ひ香

 犬森祥子は同級生亀山が社長の「中野お助け本舗」で「見守り屋」をしている。見守り屋は、深夜の見守り、付き添いをする仕事。祥子は午前中に仕事を終え、酒を飲みながらランチができる店での食事を楽しみにしている。16編からなる短編集。

 

 これもAmazonお勧めの一冊。「ランチ酒」というタイトルに惹かれて読んでみた。自分も酒好きだが、昼間から飲むと午後使いものにならないのでランチ酒をすることはほぼないが、憧れはある(笑 そんな気持ちで読み始めたが、どうやらそこがこの小説のメインではない。

 

 離婚をし娘を元夫のもとに置いてきたアラサー祥子が主人公。様々な「見守り」の相手をし、その後ランチ酒をしながら、お客のことや娘明里、元夫のことなどを思い出しながら話は進んでいく。

 終盤、元夫から再婚話がなされ、娘と会いそのことを伝える。同級生であり現在の勤め先の社長である亀山や同じく同級生の幸江に励まされる話もある。その後娘と二人で食事に出かけるが娘が良い反応をせず、どうすればよかった悩む祥子。

 

 予想とは異なる小説だったが、なぜかグイグイと読み進めてしまった。「見守り屋」という職業が実際にあるかどうかは不明だが、現代であれば需要がありそうに思え、小説内での客の話もリアルさを感じさせる。それでも一番は等身大で描かれる祥子の気持ちか。離婚し手放してしまた娘への思いが綴られ、ハッピーエンドが待っているかと思いきや、残酷な結末が示されるのもリアルだった。

 

 不思議な小説で一冊完結かと思ったが、続編がありシリーズ化されている模様。続編のために、念のため本作の各話のポイントをメモしておく。各章の1行目は「見守り屋」の客、2行目は祥子の取った行動など(いきなり2行目の場合あり)。

 

武蔵小山 肉丼 

 横井華絵(3)キャバクラ勤めシングルマザー 

 娘明里と月1回の面会、来月会えず

中目黒 ラムチーズバーガー 

 老犬(15) 染野葉 株式トレーダー 

 元夫、杉本義徳との出会い馴れ初め

丸の内 回転寿司

 小山内元子 アルツハイマー 息子学  元夫との結婚について話す

 幸江という中学からの同級生がいる

中野 焼き魚定食

 老夫婦 

 亀山とのランチ 大阪行きの仕事の依頼される 亀山と幸江、昔付き合っていた

阿倍野 刺身定食

 亀山から依頼された大阪での仕事

御茶ノ水 牛タン

 小山内元子 一緒に娘明里が住む家を見に行く

新宿 ソーセージ&クラウト

 矢代愛華 漫画家 パーティー出席後 

十条 肉骨茶

 堀田安雄 半年前妻冴子を亡くす 友人藤堂

新丸子 サイコロステーキ

 元夫と会う約束すっぽかされる 別れた夫との生活の最後を思い出す

秋葉原 からあげ丼

 新藤剛志 超エリートサラリーマン 不眠症

新丸子リベンジ アジフライ

 市川こずえ 娘が大学に入り一人になった

 元夫と会う 再婚話をされる

代官山 フレンチレストラン

 娘、元夫と3人でレストランへ 元夫の再婚話を娘に伝える

房総半島 海鮮丼

 亀山と幸江に誘われ、房総半島へドライブと食事に

不動前 うな重

 浜谷陽菜の祖母と母 出会い系アプリで知り合った男性と会うため

秋葉原、再び とんかつ茶漬け

 小山内元子 娘と二人での外食、唐揚げを食べに行った話をする 

 夜、唐揚げを娘に届ける

中野坂上 オムライス

 成田ゆかり 彼氏の親が来るので、部屋の片付け

 

 

 早速続編を入手。気になる続きを読んでみようと思う。