第1シリーズ #20 山吹屋お勝

第1シリーズ #20 山吹屋お勝

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 鬼平の従兄弟、三沢仙右衛門が料理茶屋山吹屋の女、お勝に入れ込んでしまう。この話には忠吾も一枚噛んでいた。仙右衛門はお勝を嫁にするつもりでいたが、息子から猛反対を受け、鬼平に息子への口利きを依頼に役宅へやって来る始末。困った鬼平は息子に会う前にお勝本人の様子を見たいと言って仙右衛門を納得させる。

 山吹屋を訪れた鬼平はお勝と会って話をする。その際、お勝の手を握るがそれを振りほどくお勝の仕草が素人女とは思えないものだった。自身も一枚噛んでいた忠吾は密偵関宿の利八にお勝のことを調べるように頼む。利八は夜兎の角右衛門の配下だったが、鬼平の計らいで足を洗い密偵となっていた。

 利八は山吹屋へ大店の主人を装い訪れる。その時お勝は怪しい男たちに声をかけられていた。利八はお勝の姿を見て愕然とする。お勝は夜兎の角右衛門一味で働いていた頃、恋仲となったおしのだったためだ。そのことが原因で盗人の掟を破った利八は左手の小指を詰めさせられていた。利八はお勝の住む長屋へ忍び込み様子を探ることに。

 その頃お勝は霧の七郎一味の盗人宿にいた。お勝は一味の命で仙右衛門に取りいり、彼の屋敷の引き込み女となる計画だったが、お勝はまだ仙右衛門の家の様子を探れていなかったため、七郎はお勝に仕事を急ぐように命じる。盗人宿から帰ったお勝を一味の政が待っていた。二人は愛し合っており、お勝は政がいるため仙右衛門に抱かれることを拒んでいたのだった。その二人の様子を利八は天井裏から盗み見ていた。

 その頃役宅へ仙右衛門が押しかけ鬼平と面会を望むが、鬼平は居留守を使っていた。また忠吾は利八に会いにいくが店を休み利八はいなかった。山吹屋で働くお勝の元へ駕籠が迎えにきて川清へ。女中は仙右衛門の身内がお勝のことを調べるためだと喜ぶ。

 お勝が川清にいくと待っていたのは利八だった。二人は再会を喜び、利八は今は妻も子もいると話す。そしてお勝に金を差し出しこの金で今すぐに逃げろと言うが、お勝はそれができないのはわかるでしょうと答え、金を受け取らずに店を後にする。

 山吹屋を政が見張っていた。そこへ利八がやってきて金を渡しお勝と逃げるように話すが、政はそれが親分による罠だと勘違いし利八と取っ組み合いになる。しかし利八の小指がないことに気づき、政は事情を理解し金を受け取る。

 利八は役宅へ出向き、鬼平に正直に事の次第を話す。沢田は怒るが鬼平は利八に金を与え酒を飲むようにと話す。利八が店に帰るとお勝が待っていた。お勝は利八が妻がいると嘘をついた事を見抜き、まだ利八を愛していると告げる。そこへ忠吾がやって来る。利八は全ては済み鬼平に報告済みだと話し忠吾を帰らせるが、お勝は利八が盗賊改方の狗であると知り、利八に怒り店を出て行ってしまう。忠吾がその様子を見ており、利八とともにお勝の跡をつける。お勝はその足で七郎一味の盗人宿へ行く。忠吾は役宅に知らせに行き、利八が盗人宿を見張る。お勝は盗賊改方に全てバレたからすぐに逃げなければと訴えるが、七郎は聞く耳を持たなかった。七郎は政がお勝と共に逃げるつもりだったことを突き止めており、政をなぶり殺しにしていた。お勝も同じ目に合わせろと配下の者に命じ、お勝は襲われる。そこへ利八がやってきてお勝を助けようとするが、利八もお勝も刺されてしまう。そこへ鬼平たちがやってきて、一味を捕まえる。鬼平は利八とお勝の最期を看取る。

 役宅に仙右衛門がやってきて、お勝がいなくなったのは、鬼平の仕業だと訴え鬼平に会わせろと久栄に迫る。鬼平は忠吾とともに役宅を抜け出す。忠吾は仙右衛門を沈めるためには新しい女を紹介するしかないと話すが、その女に出会ったのが見回りの最中だとこぼしてしまい鬼平を呆れさせる。

 

  初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 鬼平あるあるで、ゲストキャラが密偵の場合は悲劇で終わる、というパターン。そのため冒頭、コミカルな音楽とともに忠吾が登場し、仙右衛門と女の話をしたあたりでは、コメディちっくな話になると思ったが、森次晃嗣さん演じる利八が密偵として登場した段階で、嫌な予感がしていた。

 話は、鬼平の従兄弟が茶屋女に惚れる、というところからスタートし、忠吾が絡んでいたため、忠吾の密偵として働く利八に話が行き、その利八と茶屋女お勝が昔デキていた、という展開。そのお勝に今は別の男がいることを知った利八が二人に金を渡し逃がそうとするが…。

 

 鬼平の従兄弟仙右衛門は、この後もシリーズに何度か登場する準レギュラー的な存在。北村和夫さんが演じているが、現在(2023年10月期)BSテレ東で放送されている「たそがれ優作」というドラマの主役が、北村有起哉さんで北村和夫さんの息子さん。和夫さんも見事なバイプレーヤーだったが、息子さんも父に負けないバイプレーヤーぶりを発揮している。

 俳優さんで言えば、森次晃嗣さんはウルトラセブンだし、お勝役の風祭ゆきさんは松田優作で有名な映画の方ではない、TBSの「探偵物語」で知った懐かしい女優さん。さらに政役の森田順平さんは、金八に欠かせない数学教師。

 

 俳優さんのことばかり書いてしまった。悲劇で終わる話だが、コメディ部分も見逃せない。仙右衛門の訪問を受け鬼平が役宅を抜け出すのは2回もあるし、終盤仙右衛門が喋る鬼平の悪口に久栄が乗っかる場面は妙に可笑しい。ラスト、調子に乗った忠吾の話ぶりに呆れる鬼平も。

 もちろん、悲劇の中での鬼平の格好良さも忘れてはいけない。クライマックス、利八とお勝の最期を看取る鬼平のセリフは優しさに満ちているし、政とお勝のために動き、それを正直に役宅に話に来た利八に鬼平がかける、今宵は酒でも飲むしかないだろう、は泣ける。

 のちにSP版として扱われることになるエピソードであるのもわかる気がする。

 

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