銭形平次捕物控 美人鮫

●684 銭形平次捕物控 美人鮫 1961

 夜、後ろ手に縛られ簪で刺された女が街中に逃げて来る。それが麻薬中毒の男の騒ぎがきっかけとなり発見される。頭巾の女が坊主の男の見張りが原因だと叱責していた。

 翌日女は武蔵家の娘お美代とわかる。八五郎武蔵家に昨日のお美代の行動を聞きお茶の稽古に行ったという妙照寺に。そこで美人の尼に話を聞く。それらを八五郎から聞いた平次は、時間の食い違いからその尼が怪しいと考える。

 奉行所若年寄京極がやってきて江戸市中で麻薬が蔓延していると話し奉行に探索を命じる。与力笹野は平次にそのことを伝え、お美代の件も聞く。平次はお美代の首に巻き付いていた縄が船で使ったものだと答える。

 平次と八五郎は寺で浪人ちに襲われている娘を助ける。浪人の他に頭巾の女がおりそれを追いかけ、妙照寺に入り込んでしまう。庭で女の死体を発見、例の尼さんだと八五郎は言うが平次は死体が尼さんでは特徴を持っていることを見抜き、本当の尼さんは逃げただろうと話す。そこへ寺社奉行がやってきて管轄違いだと平次を捕まえ牢に入れてしまう。

 牢の平次に笹野が会いにきて、平次が罠にかけられたこと、祐天丸という交易船が江戸を離れたこと、船の持ち主は長崎五島屋だということを告げる。平次はその船が麻薬を売り、帰りには女たちを攫っていき他国に売り飛ばすのだと話し自分を牢から出して欲しいと懇願する。

 平次と別れた八五郎は旅に出ていた。途中先日寺で助けた女琴江と出会い一緒に西国へ行くことに。平次も小間物売りに姿をかえ西に向かっていた。祐天丸は大阪で女たちを拐かした男たちと取引をしていたが裏切ろうとする男たちを殺していた。それを平次が見ており、船に乗り込み女たちを逃がそうとするが見つかってしまい逃亡する。船を出港させた一味、女お吟は平次がなぜ牢を出ているのかと不思議がる。

 京極が奉行所に。平次が牢から出たことを聞いた京極はそれを褒め、長崎へ応援の与力神谷を送り込むように命じる。祐天丸は長崎にいた。お吟たちに麻薬を求める男がいたが一味は一蹴する。その頃平次も長崎へきており、祐天丸の行方を追っていた。八五郎と琴江も長崎におり合流する。平次は琴江が京極の命令で探索に来ている伊織を探していることを聞く。

 一味のアジトに神谷がやって来る。彼は江戸でしくじりをやった坊主を斬り殺す。神谷は一味の仲間だった。その頃平次は長崎奉行に事の次第を報告に行くが、協力はできないと追い返されてしまう。一味のアジトでは、五島屋がお蓮に言われお吟や仲間たちとは手を切るという話をしていた。

 琴江は街で笛を吹く。それを聞いた竜二が琴江に近づき、自分は伊織だと名乗る。伊織は探索のため顔を傷つけることまでしたが、自分が麻薬にハマってしまったと告白、自分の着物の襟に調べたことを知らせる書状が縫い付けてある、それを届けて欲しいと話す。それをお吟たちが見ており、伊織を襲う。平次たちが駆けつけるが伊織は斬られ、襟の書状も盗まれてしまう。死んだ伊織に中国人の娘玲花が寄り添う。そこへお吟が現れ銃で撃とうとするが、玲花が銃で反撃する。玲花は父の船を一味に騙し取られた上に父も殺されており、お吟を殺そうとする。平次がそれを止め、祐天丸はどこにあるのかと尋ねる。玲花は船は順天号という名前だと答え、一味のアジトも教える。

 平次は一味のアジトへ。そこで伊織の書状を奪い返す。一味から追われる平次は神谷と遭遇。江戸からきた神谷に驚く平次だったが、事情を聞き、これまででわかったことを報告する。神谷は祐天丸が隠されている場所を平次に伝える。

 平次は宿に戻るが、八五郎が縛られ女たちがさらわれていた。平次は八五郎に船に行くための艀を用意するように命じる。その頃長崎奉行所に京極が来るとの知らせが入る。平次は八五郎とともに船へ。そこで玲花のものを発見、船の中を探り捕らえられていた玲花を見つける。しかし3人は閉じ込められてしまい、船に仕掛けられた爆薬に火をつけられてしまう。平次は投げ銭で導火線を切り危機を脱出する。

 祐天丸では五島屋と神谷たちが祝杯をあげていた。しかし五島屋とお蓮は酒を飲んで死んでしまう。神谷は手を切るため彼らを裏切ったのだった。出港しようとする神谷たちだったが、そこへ平次が乗り込んで来る。戦いの最中に琴江が現れ神谷を刺し殺す。さらに京極も現れ平次を褒める。しかし平次は最後の仕上げだと話し、琴江が一味の持っていた書状を書いた本人だと話す。追い詰められた琴江は自害する。平次は京極になぜ琴枝の名前を知っていたのかと問いかけ、親玉は京極であり、長崎奉行時代から麻薬で私腹を肥やしていたのだと話す。京極は配下の者に平次を襲わせる。そこへ長崎奉行が駆けつけ、京極を断罪、京極は観念する。

 八五郎は船に囚われていた娘たちを解放、助けてくれたのは平次親分だと謳う。全てが解決し、平次と八五郎長崎奉行と玲花に見送られ江戸へ戻って行く。平次は八五郎に江戸に戻ったらあの娘たちが押しかけて来るぞと話し、八五郎は喜ぶ。

 

 長谷川一夫銭形平次の鑑賞5本目であり、同シリーズ18本目の最後の作品。前回観た「美人蜘蛛」も設定が面白かったが、本作は最終作品ということもありなかなかの大仕掛けがされている。

 江戸の町で起きた殺人と麻薬捜査を任された平次。殺人事件の捜査が原因で寺社奉行に捕まり牢に入れられてしまうが、与力のおかげで出ることができ、さらに大阪長崎へと怪しい船を追う。

 長崎にたどり着いた平次、謎の中国人娘や探索に来ていたはずの武士、麻薬の一味、平次の応援に駆けつける与力など多くの人物が登場、話を盛り上げる。が注目すべきはラストの船の上。

 平次の応援に江戸から来たはずの与力が一味の仲間であり、一味の頭を殺すところからスタート。さらに無関係と思われていた江戸の娘がその与力を刺し殺す。ここで一件落着かと思いきや、その娘も悪者の一人であり、長崎に駆けつけた若年寄がその親玉だったことが判明。いつもの投げ銭で応戦する平次を助けたのは、なぜか途中平次に冷たい態度をとっていた長崎奉行、というオチ。

 ある意味凝りに凝ったラストだったが、ここまで必要だったのかしら。12年で18本も製作されているのだから人気シリーズだったと思われるが、後半は年に2本も3本も製作されているのを見るとさすがにワンパターンが過ぎると飽きられていたか。そのため最後の作品はこれまでにないどんでん返しの繰り返しを持って来たのだろうなぁ。

 平次がアジトに乗り込んだシーンや中国人玲花に殺されそうになった女があっさり改心したりと御都合主義満載なのは仕方ないだろうし、おそらく当時の売れっ子お笑い3人組のがコミックソングで盛り上げるのも仕方ないだろうし。いろいろとやろうとしたのはなんとなく理解できる。

 主演の長谷川一夫さんはこの2年後に映画界から去ったようで、一つの時代の終わりの象徴のような作品だったのかもしれないなぁ。