ランチ酒 おかわり日和 原田ひ香

●ランチ酒 おかわり日和 原田ひ香

 犬森祥子は同級生亀山が社長の「中野お助け本舗」で「見守り屋」をしている。見守り屋は、深夜の見守り、付き添いをする仕事。祥子は午前中に仕事を終え、酒を飲みながらランチができる店での食事を楽しみにしている。10編からなる短編集。

 

 前作が面白かったので早速続編を読んだ。大きく変わったのは、16編から10編になったことか。それに伴い、前作が1話15ページ前後だったのに本作は30ページ弱となり、1話あたりのボリュームが倍になった。そのためか、祥子が食べるランチの内容が詳細に語られるようになり、夜中に読む私にとっては、なかなかの食テロとなることに(笑

 

 前作から変わったのは各章のボリュームだけではない。前作では小山内のみが「見守り屋」のリピーターとして複数回登場しただけで、他は全て新しい客だったのに対し、中学1年生の黒江や女子大生の実咲、作家の春佳が本作登場ながら複数回祥子と顔を合わせている。さらに前作で登場した新藤や小山内や角谷なども本作に登場、初対面ではない客と祥子とのやりとりが何度もある。新藤の嫌な男っぷりは本作も変わらないのがスゴい(笑

 前作は客とほぼ初対面ばかりだったのに対し、本作では客の内情を知った祥子が相手のことを思う度合いが増しているのである。まるで前作が「見守り屋」という職業を紹介するためのシリーズ第1冊だったのかと思うほど。

 裏側を考えると著者が主人公祥子の生き方を描いていくのに、これら準レギュラーのような登場人物が必要だったということなのだろうけど。実際祥子はこれらの人物と関係を深めていき、それが祥子本人の生き方にも影響をしてくるのが、本作の見所となっている。

 離婚をし元夫に娘を預けてしまった祥子がこれからどうやって生きていくのか、娘と一緒に暮らすためにはどうすれば良いのか、前作でも祥子は悩んでいたがその答えは出ずに終わっていた。しかし本作では客であった人々と関係を深めていくことで、おぼろげながら祥子の生き方が見えてきたような気がする。もちろん本シリーズの展開は非常にリアルであり、簡単に祥子が娘と暮らすようになるとは思えないけれど。

 

 それでも本作最終章では娘のため、を理由に小山内からの申し出を断った祥子がわざわざ御殿場まで角谷に会いにいく姿が描かれる。娘のため、だけではない生き方を祥子が選んでいくのかどうか、彼女が取るランチと酒と同じくらい気になる展開である(笑

 

 前作に引き続き、次回作もあるようなので、本作の各話についてメモをしておく。

 

 

表参道 焼き鳥丼

 田端史江 パリにいる娘時江 早朝の病院での予約

 史江に離婚や娘とのことを話す

秋葉原 角煮丼

 新藤剛志 前回の謝罪 突然プロポーズされるが、冗談だったとも言われる

日暮里 スパゲッティーグラタン

 山口黒江 中学1年生 両親不在のため一晩見守ることに

 小山内学から娘のことで手紙を書くようにアドバイスされ、娘と会うが元夫の再婚相手 美奈穂とファミレスに行くことに

御殿場 ハンバーグ

 角谷一希 書類を渡す仕事をするが、次からはこの仕事を断るように言われる

 角谷が逮捕されたことをニュースで知る

池袋・築地 寿司、焼き小籠包、水炊きそば、ミルクセーキ

 甲田拓海 母亜矢子 模擬テスト会場まで送り届ける

 樋田春佳 小説家 小山内学の紹介 食べたものの話をし、築地に行くよう言われる

神保町 サンドイッチ

 小松実咲 女子大生 ミスキャン候補 彼との写真がネット流出し炎上 スマホ中毒

 小山内学と食事 母元子、作家樋田春佳のことを報告される

中目黒 焼き肉

 財前蒼太 IT関連会社 買い物依存症 小松実咲のことを相談アドバイスを受ける

 山口黒江 何度か見守り話をするようになる

中野 からあげ丼

 小山内元子 病院に見舞う ほぼ寝たきり状態 学からプロポーズされる

 亀山とランチ 角谷のことを聞く 実咲のことを相談

渋谷 豚骨ラーメン

 小松実咲 事態解決に向け善後策を助言 蒼太の調査 写真の出所が友人優花?

 実咲母娘とパフェ その後ラーメン屋で小山内学と合流、プロポーズ断る

豊洲 寿司

 樋田春佳の依頼で築地へ 

 角谷からの手紙をもらい、待ち合わせに指定された御殿場に会いに行く

 

 さて、シリーズ3作目の次の作品、どうなることやら。