小早川家の秋

●693 小早川家の秋 1961

 小早川秋子は叔父北川弥之助から呼ばれバーに。そこで弥之助の知り合い磯村に紹介される。磯村は再婚相手を探しており秋子がタイプだったため乗り気になるが、やはり夫を亡くしている秋子はあまり乗り気ではなかった。

 その後弥之助が家に来て秋子の縁談話を進めようとするがやはり秋子は良い返事をしなかった。それを聞いた父小早川万兵衛は、秋子とその義妹紀子の結婚を心配していた。万兵衛は家業である酒屋を長女文子の夫久夫に任せ隠居の身。しかし毎日のようにどこかへ出かけ家族を心配させていた。

 店の番頭が店員丸山に万兵衛の後をつけさせ行き先を探ろうとするが、一枚上手の万兵衛は尾行して来た丸山を丸め込んでしまう。万兵衛が通っていたのは、昔恋仲だった元芸妓の佐々木つねという女性の家だった。つねには21歳になる娘百合子がおり、万兵衛は百合子を自分の娘だと思っていた。

 丸山は万兵衛に丸め込まれた後も密かに尾行をしており、万兵衛の行き先がつねの家だと突き止める。それを文子に知らせると文子は激怒。家に帰って来た万兵衛に嫌味を言うようになる。

 そんな中、万兵衛は急に倒れてしまう。親戚一同が呼ばれ万兵衛の身を心配するが、意外にも万兵衛は早くに元気を取り戻し、皆は安心する。子供と遊ぶまで回復した万兵衛だったが、またもつねの家へ黙って出かけてしまう。

 家族が心配する中、つねから万兵衛が倒れたと連絡が入る。久夫と紀子がつねの家へ。向かうと万兵衛はすでに息を引き取った後だった。葬式が行われ親戚が集まる。秋子は紀子と話をする。紀子は縁談相手ではなく自分が好きな相手のいる札幌に行こうと思うと話し、秋子もそれが良いと答える。秋子も縁談話を断るつもりだと話す。

 

 2023年12月にBS松竹東急で放送された一連の小津作品の最後の一本。これまで観て来た作品とは出演する俳優陣が大きく異なるためちょっと驚いたが、wikiによると本作は事情により東宝で製作されたものであり、当時あった五社協定のためそれまで小津作品と縁がなかった俳優さんたちが多く出演しているらしい。

 確かに森繁久弥小林桂樹加東大介の3人は社長シリーズでおなじみの3人。社長シリーズの真っ最中にこの作品に出演していたかと思うと驚きである。その他にも小津作品では馴染みのない俳優さんが多いが、特に驚いたのは遠藤太津朗さん。大川橋蔵演じる銭形平次シリーズでの三輪の親分と言ったらこの人だった。

 

 東宝専属の俳優さんたちを多く出演させるためなのか、それとも昔の家族が多かったことが影響しているのかわからないが、小早川家の家族関係は非常に複雑。このブログを書くためにいろいろとネットをチェックしていたら、このような家系図を発見。

 あぁ加東大介さんは、万兵衛の義理の弟になるのね。だから万兵衛に対する言葉遣いが少し丁寧だったのか。さらに原節子演じる秋子も、万兵衛の実の娘ではなく、長男の嫁だったのか。こちらは加東大介さんの場合と異なり、映画の中ではあまり感じられなかったかも。しかし原節子さんは嫁の立場多いなぁ(笑

 

 ストーリーは二人の娘の結婚を心配する父、の話かと思いきや、その父の老いらくの恋と死がメインらしい。確かに後半は万兵衛が主役であったし、その葬式場面で挿入される、小早川家とは全く関係のない笠智衆さん演じる夫婦の会話もなかなかのものだった。

 しかしこれが遺作の一つ前の作品だとはなぁ。