トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

●696 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 2015

 トランボはMGMの脚本家だが、俳優以外のスタッフの賃上げのためストライキを行うなど労組活動を重視していた。会社はトランボとの契約更新をするが、共産主義活動を控えるように言う。しかしトランボは御構い無しだった。

 やがて政府は非米活動委員会を設立、共産主義者を排斥しようと活動を始める。俳優の中にはその活動に協力する者が現れ始めるが、トランボと仲間たちは自由を訴え続ける。有名なコラムニストのホッパーは委員会側の人間で、MGMの責任者にも圧力をかけ続ける。ある日トランボの元に委員会の公聴会への召喚状が来る。

 公聴会でトランボは質問にまともに答えず法廷侮辱罪で逮捕され実刑を食らうことに。その頃脚本を完成させたトランボはその脚本「ローマの休日」を仲間に売り金を得る。そしてトランボは刑務所に入ることに。刑務所でのトランボの支えは家族に手紙を書くことだけだった。

 出所したトランボは金がないために引越しをするが、トランボに対する近所の目は冷たかった。仕事がないトランボはキングの元で別名で脚本を書き続ける。家に電話を5本引き、5つの名義で脚本を書き続け、家族にも事情を説明する。トランボの書いた「ローマの休日」がアカデミー賞を受賞する中、トランボは仲間の脚本家たちにも仕事を振り始める。仲間との話の中でトランボはいつか見た闘牛のことを語り、それを脚本にする。その脚本「黒い牡牛」がアカデミー賞を受賞するが、受け取りをする代理人がいない状態だった。これがきっかけとなり、トランボが脚本を書いているのではという噂が流れ始める。

 トランボは脚本を書くことに全精力を集中させ始める。それは家族のことを顧みないまでとなってしまう。娘はそんなトランボに反抗、それを見ていた妻がトランボに助言をしトランボは娘に謝罪をする。

 脚本仲間だった友人が死亡。その彼の借金のため自分たちのことを委員会で告げた俳優に会にいくことに。

 そんな中、カークダグラスがトランボに「スパルタクス」の脚本を依頼に来る。さらにペレミンジャー監督も「栄光への脱出」の脚本依頼にやって来る。ホッパーも噂を聞きつけ、委員会のメンバーがキングの元に来てトランボを解雇するように告げるが、キングは彼を襲い追い返してしまう。ダグラスもホッパーの脅しには屈しなかった。

 トランボは全てを告白するためにインタビューを受ける。彼の名前が「スパルタクス」の脚本家として名前が出ることに。それを受けホッパーたちは映画への反対活動をするが、影響はなく映画は好評だった。さらにケネディ大統領が映画を見て好評価したことで世間の流れも変わり始める。

 1970年脚本家協会での受賞式が行われ、トランボはスピーチをする。

 

 ハリウッドの赤狩りの話はビックコミックオリジナルに掲載された山本おさむの「赤狩り」で読んでいたので内容は知っていたつもりだったが、漫画では知ることができなかった点もありなかなか面白かった。

 特にヘッダホッパーというコラムニスト。ジョンウェインが委員会側の立場だったのは知っていたが、こんな女性が大きな影響力を持っていたとは驚いた。

 仲間たちとのやりとり、裏切りなど残酷でリアルなシーンが多いが、その分ラストのトランボのスピーチが感動的。決して誰かを非難するわけではなく、赤狩りがあったことを悲しい事実として語り、それでもそれを受け止めるという決意は現代にも通じるメッセージだと思う。