●女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび 古内一絵
路地裏にあり見つけにくいマカン・マランはドラァグクイーンであるシャールが営む夜食カフェ。そこに様々な悩みを持つ人間が客として訪れる。
以下の4編からなる短編集。
蒸しケーキのトライフル
西村真奈は27歳の派遣社員。会社で同じ派遣社員の古株中島美知佳の目を常に気にしながら仕事をしていた。ある時同じ派遣社員の鶴見綾乃が結婚することになり、祝いの品を選ぶ役割を押し付けられてしまい、マカン・マランを訪れる。真奈は綾乃の後任として働きはじめた峯山晶子の態度に驚くが、マカン・マランで自信をつけた真奈は彼女に話しかけるようになる。
梅雨の晴れ間の竜田揚げ
藤森裕紀は漫画家を志しアシスタントをして3年。しかし実家の老舗旅館を継いだ兄が急死したため漫画家になる夢を諦め実家に戻ろうとしていた。最後に漫画を見てくれていた編集者堀内美南に原稿を見てもらいアドバイスを受ける。裕紀は酒を飲んだ雨の日に家のそばにあったマカン・マランへ。そこで兄に対する思いを語る。後日裕紀は漫画を描き直し美南に見せる。
秋の夜長のトルコライス
伊吹未央は一人息子圭の子育てに必死だった。圭は発達障害の可能性があったためだった。保護者会で未央はPTA役員をしている朝倉千寿子と知り合う。千寿子と街であった未央は彼女とともに通学路にあるマカン・マランへ苦情を言いにいく。そこで未央は圭がおどけて見せた行動が店のおかまがしているのと同じであることに気づき驚く。未央が圭を叱った翌日圭がいなくなってしまう。未央はマカン・マランで圭がおしゃべりをしているのを目撃してしまう。後日、夫が圭を実家に連れて帰った日、未央は一人でマカン・マランを訪ねることに。
冬至の七種うどん
柳田敏は娘真紀が突然理系に進学したいと言いだし驚く。教師である柳田は娘が理系に向いていないと思っており、ハワイで見たイルカに感動しイルカの研究者になりたいという理由も納得していなかった。柳田はマカン・マランへ。そこでシャールの父親が亡くなりそうだと聞く。後日、シャールの父親が亡くなる。その様子を見ていた柳田は親子関係の難しさを知り、娘のことを見守ろうと決意する。
シリーズ2作目。前作は最初正直少しとっつきにくかったが、ラストの老婆の活躍が良かったので、続きを読んでみることに。
1話目を読んで前作に比べて非常に良くなっていると感じた。その後の2話目、3話目も同じ。3話目の話はラストで少し涙ぐんでしまった。まさかこのシリーズでこんな気持ちになるとはちょっと自分でも意外だった。
展開は前作と同じスタイルなのにどうしてなのだろうと考えたが、各話の主人公の年齢が下がっているからなのかもしれない。前作のそれぞれの話の主人公は40代が多かったように思う(3話目のフリーライターはもう少し若かったと思うが)。それに対し本作はどれも20代、行っていても30代前半だと思われる。前作も本作もマカン・マランを訪れるゲストキャラは自分の生活や仕事に疲れ苦しんでいるのだが、本作は年齢が若いため、より自分の世界しか見えていないように思える。だからシャールの言葉がより彼らの心を打つ、という展開が納得できる。
前作1話目の40代キャリアがシャールと出会いその後の生き方を考え直す展開は、本作を読んだ後だとやはり少し無理があるように思う。前作2話目はシャールの同級生柳田の話だから除外するとして、前作3話目のフリーライターの話が前作のゲストキャラの中では一番納得しやすかったのは、本作と同じ理由だろう。
2作目にして急に面白さが増したように思える本シリーズ。まだ残りがあるようなので楽しみに読んでみたい。
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