銭形平次捕物控 まだら蛇

●707 銭形平次捕物控 まだら蛇 1957

 ある屋敷に武家の大沼を始めとした商人、医者などが集まっていた。彼らは現在の文政小判ではなく金の含有率の高い元文小判の贋金を作り儲けようとしていた。彼らの背後には勘定奉行の谷田部が付いており万全の構えであり、穴蔵と呼ぶ地下室にいる囚人たちに贋金作りをさせていたのだった。

 囚人たちの扱いは酷く、その中には抗議のための血書を書く者もいたが、見張りの侍たちは目もくれなかった。そんな中、一人の囚人が地下室から贋金を持って脱走する。

 とある旅籠。源太に頼まれた男たちが調べてきたことを報告する。源太が探していたお吉は小吉という名で叔母お栄の営む舟栄で働いており、彼らは小吉に源太から預かった小判を渡してきていた。その旅籠に門つけ芸人の新三がやって来る。さらに旅籠に役人が宿改めにやって来るが、それを見た源太は逃げ出すが捕まってしまう。

 旅籠の飲み屋に客がやってきて、元文小判と文政小判のことを話す。彼は新三に頼まれ、賭場へ入るために必要な元文小判を手に入れてきたのだった。そこへ小吉がやってきて源太のことを聞き彼を探しに行く。それを見ていた新三も小吉を追いかける。その頃役人に捕まった源太は頭巾をかぶった武家に預けられていた。

 小吉は舟に乗り、橋の下で源太の死体を見つける。それを新三が見かけ声をかける。岡っ引きがその辺りを調べにきたためだった。岡っ引きは何も発見できず去っていく。小吉は源太の片腕が切り落とされているのを発見する。その片腕は囚人たちを監視している侍が持って帰り、囚人たちに見せしめのために見せていた。

 とある賭場。師匠と呼ばれる女お絹が博打に負け簪や着物をカタに入れてまで夢中になっていた。他の男客たちはそれを楽しんで見ていた。賭場に居合わせた新三はお絹に上着を貸してやる。お絹は賭場を出て医師桂周庵の家へ。お絹は周庵から金をもらい賭場の囮としてわざと負けて男客を呼び寄せているのだった。

 お絹は小吉の舟でとある屋敷へ。舟に乗っている時に赤毛が舟に落ちているのを見つけ指に巻く。お絹が行ったのは上賭場と呼ばれる場所だった。その鳥羽の控え室には、橋を調べにきた岡っ引きや源太を殺した浪人などがいた。岡っ引きは子分の九六に尋ねて、お絹が乗ってきた舟が小吉のものだと知る。

 小吉は源太の墓へ。そこには新三がいた。新三は源太が小吉の父清兵衛の弟で、金銀細工ができる源太であり、二人が牢屋から御赦免になった後、行方不明になっていることを告げる。そして父の居場所が知りたいなら、と小吉が源太から預かった小判を見せろと話しそれを見せてもらうが、小吉がそれを取り返そうとするのを知って、信用できないならばと去って行ってしまう。

 新三は小吉の小判を調べ、贋金だと確信する。さらに小判の裏にあった符牒から龍神社を思いつき、そこへ向かう。そこには元火付盗賊改の大沼の屋敷があった。その屋敷では入るためには元文小判10枚が必要な賭場が開かれているとの情報も得る。

 その賭場にいたお絹が呼び出され賭場から出て行く。その頃大沼たちは源太が逃げた時に偽小判2枚がなくなっていることに気づく。お絹は小吉の舟に乗っていたが、それを男たちが乗った舟が追い、お絹と小吉は襲われる。しかし男たちは小吉が持っていた小判が本物であることを知ると去って行く。お絹はそこに居合わせた新三のことを銭形の親分だと話すが、新三はそれを認めなかった。

 後日、小吉が新三を訪ねて来る。新三は小吉に前に小判を見せてもらった時に源太から預かった小判を本物とすり替えておいたと話す。そして今後何か連絡を付けたかったら、橋に銭を隠せと話す。小吉は新三にあなたは誰と尋ねると、新三は銭形平次だと名乗る。

 平次は笹野に会い、大沼の屋敷で偽金作りがされていることを話し、屋敷が銭座だった頃の図面を手に入れるために、その頃の支配だった勘定方の安部に引き合わせて欲しいと頼む。そこへ八五郎がやってきて、大川でまた片腕のない死体が見つかったと知らせる。平次は八五郎にその死体のことを調べにやらせる。

 平次は安倍の屋敷へ。しかし安倍は直前に亡くなっていた。その娘喜久江から父は殺されたのだと聞いた平次は詳しい事情を聞くことに。安倍は金座の不正を取り締まる役目をしており、金座の招待を受けた先で倒れ、それ以降声も出ず、医師桂周庵の治療を受けていたとのことだった。さらに喜久江は平次に証拠の品として、父が持っていた試金石と偽小判を受け取る。平次は銭座の工場のことを尋ねる。喜久江は工場は大川の水を使って水車を回していたため、地下にあったと答えるが、その図面は勘定奉行に差し出してしまったと答える。しかし喜久江は父が不正をしていた犯人を知っており、それを口の動きだけで平次に伝える。平次は読唇術でそれを読み取る。喜久江は父の仇を取って欲しいと平次に頼む。

 平次は全てを笹野に報告するが、笹野は身分を越えたこととなるので、手を出すなと平次に忠告し、賭場に出入りするための元文小判30両を渡す。

 小吉と八五郎は橋で出くわす。そこへそこへ平次がやってくる。小吉が片腕を見つけたと話すと平次は小吉と八五郎に片腕がどこから流れ着いたか、木の枝を流して確かめてくれと頼む。平次は敵の本拠地に乗り込むことに。

 平次は大沼の屋敷の賭場にいた。お絹もその場にいた。しかし岡っ引きが平次に気づき、屋敷内を調べようとしていた平次を地下へ落とす。平次はそこで偽金作りをさせられている囚人たちを見かけるが、川へ落とされてしまう。その頃小吉と八五郎は木の枝を追って大沼の屋敷までたどり着く。そこで平次の紙入れを見つけ、平次の身の上に何かが起きたと心配する。

 平次が賭場に戻ってこないことを不審に思ったお絹は控え室にいた岡っ引きに声をかけるが、あれは銭形平次であり、今頃もう土左衛門になっていると告げられる。お絹は賭場から去るが、岡っ引きはお絹は色々知りすぎたと考え殺そうと企む。

 小吉と八五郎は橋で平次が死んだのではと嘆いていた。そこへ平次が現れる。そして八五郎に喜久江が図面を描いてくれたはずなので取りに行けと命じる。小吉にはお絹のことを聞くが、小吉はお絹は桂周庵の家へ行ったと答える。周庵の家へ戻ったお絹を九六が呼び戻ろうとする。お絹は抵抗するが、九六に襲われる。それを新三が助ける。お絹は新三が平次であることを見抜き、命がけで手伝うと話す。平次は大沼の家の水門を開けるのを手伝って欲しいと頼む。

 平次は喜久江が描いた図面を持って笹野に会いに行き大沼の屋敷に乗り込むことを伝える。しかし笹野は町方の分際を越えると平次の言い分を認めなかった。平次は十手を置き、単独で大沼の屋敷へ乗り込むことに。

 大沼の屋敷に小吉が女中として乗り込む。八五郎も一緒だった。お絹は平次と一緒に水門から屋敷に入りこむ。屋敷では大沼や谷田部などが集まっており、偽金作りの総決算として、工場を閉鎖、働いていた囚人や岡っ引き、用心棒などを始末する計画を話していた。平次は囚人たちがとらわれている地下へ。しかし牢には鍵がかかっていた。その頃小吉は牢の鍵を探し出していた。八五郎がそれを持って地下へ行き、平次は囚人たちを解放する。しかし屋敷の侍たちに見つかり大乱闘となる。

 逃げようとする桂周庵をお絹は銃で撃ち殺す。小吉は父親を探し当て一緒に逃げようとする。その時、笹野が町方を連れ大沼の屋敷に討ち入ってきた。

 事件が解決し、小吉が操る舟に八五郎とお絹が乗っていた。平次は笹野と舟に乗っており、笹野は平次に礼を言い、十手を返すのだった。

 

 BS12で放送された「銭形平次捕物控」シリーズ。鑑賞は7本目となる。製作された順番でいうと、前回鑑賞した「人肌蜘蛛」の次に作られた作品らしい。

 前作「人肌蜘蛛」に豪華な祭りがあったのに比べると、セットそのものは見劣りする。地下にあるという偽金工場が登場するがそのセットは大きさは凄いものの、映画全盛だと思われるこの時代としてはいささか普通に思える。

 しかし本作はやはり共演者の美空ひばりがウリなのだろう。小粋な若い衆の扮装で登場、小舟の船頭をしながら歌うシーンは見応えがある。しかも終盤では女中の姿とは思えないほどの豪華な衣装を身にまとい、美しさを見せつける。美空ひばり出演の映画は初めてキチンと観たが、wikiによれば美空ひばりは生涯に約170本の映画に出演しているのね。TVが家庭に普及する前、映画全盛期の大スターだったのがよくわかる。

 

 話は冒頭から悪人どもを描くためとてもわかりやすい。勘定奉行まで入った悪の組織が牢屋から御赦免になった囚人を捕らえ偽金作りをさせる、というもの。そんな悪事を働いているのだから、おとなしくしていれば良いものをなぜか賭場を開いており、それが事件解決の糸口となっっている。

 

 平次が別人に変装するのは、このシリーズの定番。それでも中盤自分の父親のことをよく知っている小吉に、アナタは誰と聞かれ、銭形平次だと名乗るシーンは他の作品にはない見せ場なのだろう。これまで見た他の作品では、別人に変装していても終盤突然平次に戻っているパターンが多かったので。

 

 もう一つのこのシリーズの定番が、平次が笹野に命をかけてでも、と訴えるシーン。本作ではそれでも町方が勘定奉行支配の事件に手を出そうとする平次を笹野が最後まで認めようとせず、平次は十手を置いて現場へ向かう。これも他の作品にはないパターンで見せ場だったのだろうなぁ。もちろんラスト、反対していた笹野が町方を連れて屋敷に乗り込んできて事件は終わるのだが(笑

 

 このラスト、牢に閉じ込められていた囚人たちを救い出し、彼らとともに屋敷の悪人たちと戦うのだが、侍相手に平次が一人で戦うのはさすがにちょっと無理があった(笑 鉄砲まで持っている相手だったが、いつの間にか彼らはいなくなり、大勢での大乱闘となってしまう。さすがの平次もこれを納めるのは無理筋だと思っていたところへ、笹野が乗り込んできて、いきなり事件は解決。支配違いの件は触れられないまま(笑

 

 それでも、十手を置いて戦いに挑んだ平次へ笹野が十手を返して映画は終わる。定番中の定番とはいえ、このシーンがないと締まらないからなぁ。

 

 今回も八五郎役は堺正章さんのお父さん。しかも顔のアップがありその尊顔をじっくりと拝見できたが、やっぱりマチャアキにそっくりなのね。

 

 蛇足だが、これまで観た7本のこのシリーズで、楽天でDVDが売られているのは本作だけ(記事下の楽天の紹介ページ参照)。やっぱり長谷川一夫美空ひばりの共演作だから人気が高いんだろうなぁ。

 

 BS12での放送はあと1本残されている。楽しみにしておこう。