探偵はBarにいる2

●706 探偵はBarにいる2  2013

 探偵の俺は拉致されスキーのジャンプ台にいた。その経緯は。

 街の仲間であるおかまのマサコがマジックを始めた。初めは拙いものだったが、本人の努力により人気があるショーができるほどに。周りはTVのマジック番組に出るように勧めるが、本人は有名になると誰かに迷惑がかかるかもと躊躇していた。それでもマサコは番組に出演、優勝する。しかしその2日後、マサコは殺されてしまう。皆でマサコの遺品整理をしていると、マサコが好きだというバイオリン奏者のCDが見つかる。

 マサコの事件は警察が捜査していたが3ヶ月経っても犯人は見つからなかった。その間俺はある女に夢中になっていた。その女にフラれた俺はマサコの仲間だったおかまのフローラの店を訪ね、マサコの事件を調べようとするが、フローラたちは捜査に非協力的だった。俺は情報屋である客引きたちに話を聞こうとするが、彼らも口を閉ざす。その理由はマサコの死に大物政治家橡脇が絡んでいる、というものだった。新聞記者である松尾から橡脇は両刀使いで昔東京時代に付き合っていたおかまが北海道の政治家となった橡脇のために身を引いたという噂があるという話を聞く。

 マサコの事件を調べる俺につきまとう人間がいた。ある時俺はその人間を捕まえる。それはマサコがファンだったというバイオリニストの河島弓子だった。彼女も昔からのファンだったマサコの事件を調べており、それを聞いた俺は弓子に依頼人になるように話す。

 俺は橡脇と関係がある桐原組に連絡をする。すると組の相田に拉致され冒頭のスキージャンプ台へと連れていかれる。桐原組長は昔先代の橡脇を殺害していたが、俺はその息子のことが知りたいと話し許してもらう。

 俺は客引きの学生から事件当日橡脇がマサコと接触していたという目撃証言を得て、橡脇を調べ始める。そんな俺は何者かに襲撃されるが、相田の助けで逃げることに成功。相田に寄れば俺は、橡脇陣営、反橡脇陣営、橡脇に恩を売りたいフリーの3グループに追われているとのことだった。

 俺はフローラに会いに行く。彼女たちが口を閉ざした理由は、店の一人トオルがマサコから聞いた話を店で話したため、その後何者かに脅されたということだった。俺はフローラからトオルの実家を聞き会いに行く。トオルと話し、脅した相手が橡脇の秘書だとわかる。さらにマサコが室蘭出身だと聞き、彼女の実家も訪ね幼い頃のマサコのことを聞き込みする。そこで俺たちは花岡組に襲われるが、なんとか逃げ切る。

 その事件で弓子は報道陣の前でお詫びをし、俺が襲われにくい状況を作る。しかしフローラが襲われ俺たちは呼び出される。襲撃した集団を倒し話を聞くと、彼らは橡脇の政治方針に共鳴する一般市民だった。橡脇は脱原発を目指す議員だったのだ。

 俺は新聞記者松尾に会い、橡脇のことを記事にしろと言うが彼はそれを受け入れなかった。しかし松尾から警察の内部情報として、橡脇が事件当日花束を持ってマサコに会いに行っていたとのネタをもらう。俺は松尾に室蘭を捨てたマサコのその後の人生を調べて欲しいと松尾に頼む。

 俺は橡脇本人に会いに行く。マサコのことを素直に認めた橡脇だったが、殺してはいないと言う。俺は橡脇のせいでマサコが死んだと怒るが、彼は脱原発のためあと3年は政治家として頑張りたいと答える。

 俺は弓子に調査報告をし、時間はかかるだろうが橡脇を起訴すると話す。弓子はそれを聞いて頷き、俺に感謝をして去って行く。俺は客引きの学生と会い酒を飲むことに。そこで学生が話した事件当夜の話に矛盾があることに気づいた俺は彼を問い詰める。すると彼はマサコ殺しを自供する。彼は単純に有名になったおかまが憎かったのだった。学生は俺たちから逃げたが、車に轢かれ死んでしまう。俺は弓子に連絡をするが、マネージャーも居場所を知らなかった。そこへ松尾から連絡が入る。マサコと弓子は兄弟であり、バイオリニストとなるためにマサコは稼いだ金を弓子に仕送りしていたとのことだった。俺は講演をしている橡脇の元へ。そこで橡脇を殺そうとしていた弓子を食い止めるが、代わりに弓子に刺されてしまう。

 退院した俺は弓子とBarで会う。そしてバイオリニストに復帰するのがマサコのためだと話し、かつてマサコからもらった花をプレゼントする。弓子はその花を胸に刺しコンサートに復帰する。

 

 シリーズ第2作。前作が謎の電話依頼で探偵である俺が調査に動き出し、調べて行く中でいくつかの事件が複雑に絡み合っていることがわかってくる、という展開だったのに対し、本作は冒頭で仲間のおかまマサコが殺され、3ヶ月後に俺が事件を調べ始めるという単純なもの。

 このため話は非常にわかりやすく、さらにかなり早い段階でマサコ殺しに地元の有力政治家が絡んでいることまで判明する。観客としては、力のある有力政治家を一探偵である俺がどうやって追い詰めて行くのか、だけが焦点となる。

 そのせいか、中盤は俺が謎の集団に追われ続ける、というシーンが多い。飲食店を出たところで襲われ、路面電車内で襲われ、室蘭ではカーチェイスまで。

 

 そして終盤、とうとう俺はその政治家である橡脇陣営に乗り込み、話をする。その結果、橡脇も自分の陣営の誰かがマサコを殺したかもしれないと白状、しかし政治家としてあと少し生かし続けて欲しいと懇願する。一般市民に襲われたこともあり、俺は橡脇に直接手出しができないまま話は進む。そして弓子とマサコの関係がわかり、ラストシーンへ。

 

 前作に比べると話が単純明快すぎる感があるのは否めないだろう。ラスト、弓子がマサコとの過去を思い出すシーンを見ていた時に、これらのシーンを途中に挿入していればもう少し観客側の思いも変ったのにとも思ったが、弓子とマサコの関係性は本作のようにラストで初めて明かす方がインパンクとは強く、物語としてはそれが正解だったのだろう。

 

 前作のように悲劇で終わらないので、爽やかに見終えることができるのも良かったのかも。話には直接関係しない松重豊さんや波岡一喜さんの登場も楽しい。特に今回の事件に直接関わりのない花岡組の波岡さんを登場は今後のシリーズを続けるための伏線なのだろうか(笑

 

 シリーズはもう1作あるようだ。それで終わりなのかもしれないが、もう少し楽しませてもらうことにしよう。