鬼平犯科帳 第1シリーズ #23 用心棒

 ●鬼平犯科帳 第1シリーズ #23 用心棒

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 味噌問屋佐野倉にゴロツキが来て店頭で因縁をつけていた。店の者は用心棒高木軍兵衛に頼み、ゴロツキたちを追い払う。この頃江戸の治安は悪く、裕福な商家は用心棒を雇っていた。高木も唐津藩浪人だったが、用心棒として佐野倉に雇われていた。

 その頃粂八は盗賊馬越の仁兵衛の盗人宿を見つけたと鬼平に知らせにくる。盗人宿は今戸の船宿舟長だった。舟長の向かいの蕎麦屋で忠吾が見張り役をしていた。舟長に仁兵衛が入るのを見た忠吾は粂八の帰りが遅いのを気にして、蕎麦屋に使いを頼み、そば屋の吉蔵が役宅へ走ることに。

 夜、盗賊改方が舟長に押し入るがもぬけの殻だった。吉蔵が舟長に知らせたと思われた。その頃仁兵衛一味は舟で逃げていた。そこには吉蔵もいたが、彼は舟長にいる博打仲間が捕まるものと思って知らせたのだが、彼らが盗人だと知らされ殺されてしまう。

 佐野倉の内儀は軍兵衛のことを気に入っており、36歳ならば所帯を持たせようと考えていたが、番頭が軍兵衛は店の女中おたみに気があるようだと話す。軍兵衛はおたみにヒゲを剃った顔を見たいと言われ指切りをしていた。その様子を手代の文六が見ていた。

 鬼平は浪人姿になり仁兵衛の足取りを追う。そして五鉄で粂八からも仁兵衛の足取りが消えたと聞く。鬼平は仁兵衛が江戸を売ったのではと考えるが、粂八は仁兵衛は仕事に時間をかける執念深い男なのでまだ江戸にいるはずだと答える。

 軍兵衛は手代文六の集金に付き合う。二人が茶屋で休んでいると浪人が1両を賭けての勝負がしたいと持ちかけてくる。実は剣の腕がからっきしの軍兵衛は持ち合わせがないと断ろうとするが、文六が代わりに1両出して勝負を受ける。軍兵衛はコテンパンにやられてしまい、文六は1両を取られてしまう。軍兵衛は文六に店の者にはこの事は黙っていれくれと頼む。軍兵衛が弱いことがバレれば用心棒として店に置いてもらえなくなるためだった。文六は軍兵衛の願いを聞き入れ、店に帰っても怪我をしたのは大勢の浪人から集金した金を守るために戦ったからだと皆に話す。その夜、軍兵衛の活躍を祝い宴が行われる。軍兵衛は文六に礼を言い、アンタのためなら命も賭けると話すと文六はそのうち死んでもらうかもと答えほくそ笑む。

 夜、文六は出かけある家へ。そこは仁兵衛たちの新たな盗人宿だった。文六は一味の引き込み役として佐野倉に入っていた。仁兵衛に軍兵衛が実は弱いことを伝える。用心棒がいたため計画が遅れていた仁兵衛はそれならばと計画を急ごうとするが、文六は軍兵衛を上手く利用することを思いついていた。

 軍兵衛はおたみに治療をしてもらっていた。そしておたみが叔父の家に行くのについていくことに。道中、武士たちのケンカを目撃する。そこにいたのは例の浪人2人で、若い侍に1両で立会いを申し込んでいた。おたみは軍兵衛に助けるように言うが、軍兵衛は腰が引けていた。そこに浪人姿の鬼平が現れ、浪人2人をあっという間に倒してしまう。見ていた人々は五鉄で見かける浪人だと話す。軍兵衛は鬼平を追いかけ名前を聞く。鬼平は上州浪人木村平九郎だと答える。

 店に帰ったおたみは軍兵衛に怒っていた。若者が絡まれたのを軍兵衛が助けようとしなかったためだ。そこへ文六が来て一緒に出かけることに。行った先は仁兵衛たちの盗人宿。そこで文六は軍兵衛に店の蔵の鍵を持ち出して欲しいと頼む。蔵の鍵がどれかは主人と番頭と軍兵衛しか知らなかった。軍兵衛が断ると仁兵衛や手下たちが現れ、軍兵衛はボコボコにされてしまう。さらに文六から手伝わないなら軍兵衛の本当のことを店に話してしまうと脅される。

 店に戻った軍兵衛は蔵の鍵を持ち出す。文六はそれで型を取る。それをおたみが盗み見ており、事情を聞こうとするが軍兵衛は何も答えられなかった。

 鬼平は役宅で村松に味噌味の深川めしを作らせ食べていた。村松深川めしは醤油味こそだと言い出すが、そこへ久栄がやって来て、鬼平に五鉄から急の使いが来たことを知らせる。鬼平は五鉄へ。そこに待っていたのは、軍兵衛とおたみで木村平九郎に会いたいとのことだった。二人は事情を平九郎に話す。平九郎は文六は盗賊の引き込みだと話し、自分で相手を倒せばと答えるが、お民が軍兵衛は実は弱いと話し、平九郎に助けを求める。平九郎は軍兵衛に盗人の頭の名前を聞き、それが馬越の仁兵衛だと知る。

 一味は文六の取った型から合鍵を作ることに。鬼平は佐野倉周辺の地図を元に盗賊たちの逃走ルートを検討、しかし基本的には自分一人で盗賊たちと相対すると与力たちと打ち合わせをする。鬼平は平九郎の姿となり、軍兵衛の長屋で待機することに。二人は酒を飲んで時間を潰す。翌日文六は軍兵衛に今晩盗みに入ると告げる。その夜も平九郎と軍兵衛は酒を飲む。軍兵衛は盗賊たちが来ることを恐るが、平九郎は自分も、そして盗賊たちも怖いのだと話す。そこへ一味がやってくる。鬼平と軍兵衛が一味と対決する。鬼平が一味を、逃げ出したものたちは控えていた盗賊改方が捕らえる。軍兵衛は文六と一対一の勝負となり見事に倒す。平九郎は軍兵衛にこれは皆軍兵衛一人でやったことにしろと言い残し去っていく。

 翌日軍兵衛は嘘をつけないと言い出すが、おたみはそれを止め、これから強くなれば良いと話す。そこへ長谷川平蔵が来たと知らせが入り、軍兵衛は会うことに。しかしそこにいたのは平九郎だった。驚く軍兵衛に鬼平は暇があるなら剣術の稽古をしろ、道場を紹介すると話す。その後、軍兵衛は坪井道場へ通うことに。

 後年、鬼平のことを聞かれた軍兵衛は必ずこう答えたという。

 『長谷川平蔵様という人は、つまり、怖くて優しくて暖かくて思いやりがあって、そして何よりも怖いお方じゃ』

 

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 鬼平が、実際には弱いのにそれを隠して用心棒を務める浪人を助ける話。シリーズでは鬼平が盗賊と仲良くなったりする話はあるが、本作はちょっと異例かも。

 佐野倉の用心棒である軍兵衛が弱い、という設定が良い。序盤終わりでそれが明らかになる。ここからはシリーズには珍しいコミカルな展開となる。冒頭のゴロツキこそ追い返すことに成功するが、手代文六と出かけた先でケンカを売られる。しかも金がないことを理由に断ろうとする軍兵衛に、文六が金を出すと言ってケンカを受けることになり、あっさりと負けてしまう。これだけでも笑えるシーンなのだが。

 その後、惚れているおたみと出かけた先で同じ相手を見かけてしまうことに。おたみは軍兵衛が強いと思っているので若侍を助けてあげてといわれるが、軍兵衛は尻込み。通常のドラマならこのシーンは、見ているのこちらも恥ずかしさを覚えるようなシーンなのだが、なぜかこの話では笑ってしまう。ジョニー大倉さんの気弱な軍兵衛ぶりが見事なのだ。

 

 その後軍兵衛は、盗賊の引き込み役だった文六に良いように使われるが、それを偶然目撃したおたみの進言によって、木村平九郎こと鬼平に相談し、無事事件は解決する、というめでたい結末。そうそう、おたみ役の森口瑤子さん。この時24歳らしいが実に可愛らしい。森口さん寅さん映画がデビュー作なのね。wikiで初めて知った。その作品もう一度見てみよう。

 

 少し気になったのは、木村平九郎に化けた鬼平が軍兵衛とともに長屋で酒を飲みながらした会話。軍兵衛は盗賊一味との対決を怖がっており、それに鬼平が自分も怖いし、盗賊たちも怖いと思っている、だから奴らは徒労を組んでいるのだ、と語る。その先を続けようとした鬼平だったが、その時盗賊たちが現れた気配を察知し話をやめてしまう。自分も盗賊たちも怖いと感じている、でその先鬼平は何を語ろうとしたのだろう。だから軍兵衛も恐れるのは普通なのだ、とでも言うつもりだったのか。

 

 全体的にコミカルな話だったが、終盤前に役宅で村松深川めしについて議論をしていた鬼平も良かった。味噌味を押す鬼平と醤油味だと断言する村松鬼平は幼少の頃家を飛び出し飲まず食わずの時に作ってもらった味噌味の深川めしが忘れられないと話すのだった。

 

 ゲストとしては記憶に残るキャラだった軍兵衛、第7シリーズで再登場するのだが、それはまた先の話。

 

 

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