8月の家族たち

●726 8月の家族たち 2013

 ウェストン家の夫べバリーと妻バイオレットの夫妻は二人暮らし。夫は酒を飲み、妻は薬を飲む暮らしをしていた。夫べバリーは先住民であるジャナを家政婦として雇う。しかしバイオレットがそれが気に入らなかった。バイオレットは初期の口腔癌を患っており、その痛みから逃れるため薬物中毒の状態だった。

 その後べバリーは黙って家を出て行方不明となる。近所に住む次女アイビーが来て、長女バーバラやバイオレットの妹であるマティに連絡、バーバラの家族、マティの家族など、皆が家にやってくる。バーバラは母に父は散歩に出かけただけだと慰めるが、バイオレットは長女であるバーバラが家を出た事を非難する。その夜保安官がやって来てべバリーが溺死体で見つかったと知らせる。自殺だと思われた。

 べバリーの葬儀が行われる。三女カレンも婚約者を連れてやってくる。バーバラは夫と別居中でありそのことがアイビーにバレる。さらにバーバラの娘ジーンは母であるバーバラを嫌っており反抗期状態だった。そんなジーンにカレンの婚約者スティーブが近づく。マティの息子リトルチャールズも遅れてやってくる。リトルチャールズはアイビーと秘密裏に付き合い始めていた。

 葬儀が終わり自宅で会食が始まる。そこでバイオレットは薬の影響もあり、暴言を吐きまくり娘たちを次々と避難し始める。挙げ句の果てに夫の遺産を全て自分が受け取ると話し娘たちに了承させる。その後も暴言を吐き続ける母親にバーバラがキレてしまい、母の薬を取り上げ、家中を探し全ての薬を捨ててしまう。

 バーバラは母の担当医の元を訪れ、バイオレットを薬漬けにした事を非難する。帰り道で母親は車から降り草原に逃げ出してしまう。バーバラが追いかけ母親を止める。バーバラは食事の時の自分の行動を謝罪する。

 家に戻った3人の娘たちは母親のことについて話し合う。次女アイビーはリトルチャールズとのことを打ち明け、引っ越すことを宣言する。バーバラが非難しようとするが、先に実家を捨てたのはバーバラだと言い返されてしまう。その後、母親と会話をする3人。母バイオレットは自分の若い時、母親からされた仕打ちを告白する。

 翌日、アイビーはリトルチャールズと仲良く話をしていた。それを見たマティが息子のことを非難する。それを聞いたマティの夫チャールズは激怒、これ以上息子を非難するならば離婚をやむを得ないと話す。偶然その話を聞いてしまったバーバラはマティに話しかける。するとマティは息子の実の父親は、バーバラたちの父であるべバリーだと告白する。しかしそれは姉バイオレットも知らないことだとも。そしてマティはアイビーにリトルチャールズとの付き合いを辞めるように説得してくれとバーバラに頼む。

 その夜、ジョナはカレンの婚約者スティーブが、バーバラの娘ジーンにマリファナを吸わせイタズラしようとしているのに気づき、スティーブをスコップで殴打する。皆が騒ぎに気づき集まってくる。事情を知ったバーバラはカレンの元へ行くが、カレンはスティーブだけの責任ではなく、ジーンにも責任があると言い残し、スティーブとともに家を出て行ってしまう。それを見送るバーバラと夫ビル。ビルは娘ジーンを連れて帰ると言い出し、翌朝帰ってしまう。

 バーバラはアイビーにリトルチャールズと付き合うのを辞めるように話すが彼女は聞き入れない。家に残ったバーバラ、アイビー、バイオレットの3人で食事をしようとしたところでアイビーがリトルチャールズとのことを母親に告白しようとするが、バーバラが食い止めようとする。それでも話を続けようとしたアイビーに、バイオレットはリトルチャールズはあなたの弟よと話す。バイオレットは夫と妹の不倫を知っていたのだった。アイビーは激怒し家を出て行ってしまう。

 残ったバーバラは母に話しかける。母バイオレットは夫が行方不明になった際に置き手紙をしていたことを話し始める。母は父の行き先を知っていたのだった。しかし母は夫を探す前に貸金庫に預けられた財産を手に入れることを優先していたのだった。それを知ったバーバラも家を出て行く。残されたバイオレットは皆を探し始めるが、最後には家政婦ジョナを求める。

 バーバラは一人車で帰って行く。

 

 

 このブログを始めて数百本の映画を観てきたが、本作はその中でも特に記憶に残る1本になると思う。

 父親が亡くなり残された母親のいる実家に、娘3人と母親の妹がそれぞれの家族を連れてやってくる。初期ガンによる痛みを抑えるため母親は薬に頼っているが、そのため薬物中毒となっており、そのためか娘たちに暴言を吐き散らす。この暴言がヒドい。特に映画中盤の夕食のテーブルで繰り広げられる会話の中の暴言は凄まじい。このシーンが約20分続く。それでもこのシーンを見続けられるは、あくまで映画の中の他人事だからなのか、それとも母親の暴言に中に刺さる言葉があるからなのか。

 母親の暴言に耐えかねた長女バーバラが突然キレて、母親が頼りにしている薬を全て破棄し、さらに母の担当医のところに乗り込むシーンは一種のカタルシスを感じるが、この映画はこれでは終わらない。

 物語終盤に怒涛の展開が待っている。バーバラが叔母マティの秘密を知ってしまうのが第一弾。続けて三女カレンの婚約者が長女バーバラの娘にマリファナを与えイタズラをしようとするのが第二弾。これらにより一人ずつもしくは一家族ずつ、母親の家から去って行ってしまう。

 そしてマティの秘密が次女に明かされるのが第三弾。ここでも次女が去り、残されたのは何かと相対してきた母親と長女の二人。二人だけになった家で最後の秘密が暴露される第四弾。これで長女バーバラも家を去ることに。 

 

 家族崩壊の話だと説明するのは簡単だが、この映画はその過程が凄まじすぎる。観ていて会話が多い映画だと思ったが、元は舞台劇だったと知って納得。それを豪華俳優陣で映画化したものなのだろうが、「豪華俳優陣」が本当に活かされている映画だと言える。

 家族をテーマにした映画は、「どこか冷たく」それでいて「どこか暖かく」描かれるのが、映画の定番だと思っていたが、本作は「暖かく」を一切排除したことで、記憶に残る一本となった。