クドリャフカの順番 米澤穂信

クドリャフカの順番 米澤穂信

 

 神山高校1年生の折木奉太郎は、姉の勧めもあり、同級生である千反田える福部里志伊原摩耶花たちとともに古典部に入部する。奉太郎は自身の身の回りで起こる不思議な事柄の謎を解いていき、いくつかの事件を解決する。そんな中、学校での文化祭が始まるが…。

 

 神山高校の文化祭が始まる。奉太郎たち古典部は文集「氷菓」を販売することになるが、摩耶花のミスで30部発注する予定が200部発注してしまい、古典部の皆はそれを売り尽くすために奮闘することになる。

 えるは壁新聞や校内ラジオ放送で宣伝してもらうため、里志はクイズ大会や料理コンテストに出場し「氷菓」の宣伝をすることに。奉太郎は教室で店番をしながら「氷菓」を売る。摩耶花は漫画部での仕事が忙しく古典部のためには動けなかった。

 里志の宣伝が少し効果を発揮するが、「氷菓」の売り上げはそこまで伸びない。奉太郎は店番をしながら、なぜかわらしべプロトコルにハマり、様々なものを入手して行く。摩耶花は漫画部で先輩と作品について口論になってしまう。

 そんな中、文化祭に参加している各団体でつまらないものが盗まれ、十文字を名乗る犯人からのメッセージが残されるという事件が起こり始める。えるや里志がその情報を手に入れ、奉太郎に相談、えるの一言でまたも奉太郎はその事件に絡んで行くことに。

 やがて奉太郎は事件がアイウエオ順で起きていることに気づく。そして古典部もそれに含まれることに気づき、これを「氷菓」売り上げのために使うことを考え始める。

 しかし8番目となる「ク」の部活では事件が起こらず、なぜか次の9番目「ケ」で事件が起きる。一方、奉太郎は姉の助け?で昨年文化祭で販売されたある漫画を入手、その中のあとがきに今回の事件のヒントを見つける。

 そして文化祭最終日、10番目のターゲットとして古典部が狙われるが…。

 

 シリーズ3作目。前の2作品がいずれも面白かったため、当然のように本作を読むことに。

 本作はこれまでの作品の中で最も凝った作りとなっている。最初は文集「氷菓」を200部売るために古典部の皆が奮闘する物語なのかと思って読み進めたが、途中「十文字」事件が起きる。これがクリスティのあの名作のパロディのような展開。これだけでも面白いのに、なぜか奉太郎の身の上で「わらしべプロトコル」が発生、さらには200部問題?の当事者である摩耶花は「氷菓」販売のために動けず、漫画部で先輩と漫画のことで口論を始めてしまう。

 一見全くバラバラに見えていた事柄が徐々につながりを見せていく展開は非常に面白かった。奉太郎のわらしべプロトコルは事件と無関係で、料理コンテストの小麦粉で終わりだと思ったらまだ続くし、結果的には摩耶花が問題としていた漫画となり、奉太郎はそれを読むことで事件解決のヒントを得るし。

 「十文字」事件の犯人?の動機は理解できるが、本作のような事件を起こす必要があったのかと思うとちょっと疑問。だがそれも犯人の「口で言えるなら、言ってるよ」ということなのだろう。高校生というのは大人になったような気分でいるくせに、本当に大事なことを言えない年頃だからなぁ(笑

 

 上記した1点だけちょっと残念に思えたが、全体的には1作ごとに面白さが増しているシリーズだと感じる。こりゃアニメにもなるしそれがヒットしたのもわかる気がするなぁ。