鬼平犯科帳 第1シリーズ #25 雨の湯豆腐

鬼平犯科帳 第1シリーズ #25 雨の湯豆腐

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 浅草寺境内、呉服問屋越後屋伊兵衛が共のものを連れてガマの油売りを見ていた。男が伊兵衛をつけており、立ち止まった伊兵衛のそばに寄ると針で伊兵衛の首元を刺して去って行く。伊兵衛は死んでしまう。偶然居合わせた鬼平は知らせを聞いて伊兵衛の死体に針で刺したような跡があるのを発見する。

 伊兵衛を刺した男、時次郎は家へ帰る。仕事に使った針を水で洗い、表向きの仕事である楊枝作りをしつつ、飼っているカラスに生肉の餌を与える。そこへ上松の清五郎がやってくる。彼は時次郎に伊兵衛殺しを依頼しており、成功を受けて半金の50両を持ってきたのだった。清五郎は元締めである赤大黒の市兵衛の使いの者だった。さらに清五郎は次の仕事を依頼する。蝋燭問屋辻屋半右衛門の妻お照が次のターゲットだと話すと時次郎の顔つきが変わる。それを見て清五郎は訳ありならば他の人に頼むがと言うと時次郎は、やる、あの女は他のだれにはやらせたくないと答える。

 お照は神田明神に出かける。時次郎はそれをつけながら昔のことを思い出していた。時次郎は以前御座松の孫八一味におり、その娘おきちことお照と恋仲だった。しかしそれが孫八にバレ、孫八の甥の為吉に罰せられ、一味を破門になっていた。お照は境内で為吉と会う。時次郎は二人を追う。そんなお照を酒井と伊三次が見ていた。伊三次はお照が男を食い尽くし女だと言い、孫八の甥為吉と組んでいるのはまた何か企んでいるはずだと話す。その時二人を追う時次郎を見かける。酒井は伊三次に時次郎を追うように命じる。

 時次郎は伊三次の尾行に気づき彼を巻く。お照と為吉は蕎麦屋へ入っていた。為吉はお照が辻屋をいつ襲えるのかと聞くがお照はごまかす。その時何者かが二人を覗いているのを見かける。お照はそれを機に店から出て行く。

 役宅で鬼平は酒井と沢田からお照の噂を聞き会ってみたいと話す。そこへ久栄がやってきて沢田のしくじり話だと話をごまかす。さらに酒井はお照と為吉をつけていた時次郎のことも話す。鬼平は時次郎のようなヤツこそ危険だと話し、先日の浅草寺での伊兵衛殺しは商売として人殺しをしているヤツの仕業だろうと話す。そしてお照や為吉が時次郎に狙われていると考え、沢田に時次郎のことを調べろと命じる。

 時次郎の家にまた清五郎がやってきて、大工の万吉を殺して欲しいと頼む。万吉とは為吉の偽名だった。時次郎はタダでも殺すと仕事を引き受ける。清五郎はお照と万吉、どちらを先に殺すかは任せると言って出て行く。時次郎は殺し屋仲間の浪人宮沢に会いに行く。時次郎はお照と為吉の殺しのことを話すが、今度の殺しはしくじりそうだと話す。宮沢は女に惚れてるから仕事を恐れているのだと話し半金で代わりに仕事をしてやるというが時次郎は断る。なおも殺し稼業を悔いている時次郎に宮沢は手伝ってやると言い、一緒に為吉の家へ。宮沢は為吉に一太刀浴びせトドメを刺すように時次郎に言う。時次郎は切り出しで為吉を刺すがその切り出しを抜かずに為吉の家から去ってしまう。

 伊三次が酒井に為吉が殺されたことを知らせ、町方は下手人は2人だと言っていると伝える。切り出しで為吉が殺されたとの知らせを受けた鬼平は、浅草寺の伊兵衛殺しも針が凶器だったことなどから、共通点があると考える。酒井に時次郎の家を探るよう、沢田にはお照を見張るよう命じる。

 時次郎は悪夢に苛まれていた。そんな時次郎の家へ清五郎が、為吉を殺した件での残りの半金50両を持ってくる。さらにお照殺しは依頼主が死んだので取り止めだと告げる。時次郎は為吉殺しの依頼主がお照だと見抜き、その仕事のやり方について清五郎を詰る。清五郎は殺し屋も同じだと話し、殺しの現場に切り出しを残したことを非難、時次郎も焼きが回ったと話し、町方も調べていると忠告する。

 時次郎はお照に会いに行く。茶屋にしけこんだ二人、時次郎は金を見せ、お照に一緒に上方へ行こうと誘う。お照はその言葉にほだされ時次郎を布団へ誘うが断られてしまう。するとお照は突然帰り支度を始める。そんなお照に時次郎は明後日日本橋で待つと話す。

 時次郎は商品を収めている楊枝屋卯の木屋に行き、上方に行くので取引はこれまでと断りを入れる。時次郎が去った後、その店に酒井と伊三次がやってきて、為吉殺しに使われた切り出しを見せる。

 お照は赤大黒の店にやってくる。そして殺しの元締めである市兵衛と会い、時次郎殺しを依頼する。

 時次郎を家を伊三次が見張る。時次郎は湯豆腐で一杯やろうとしていた。そこへ近所の農夫がネギを持ってやってくる。その夜、宮沢が時次郎の家へ来て酒を飲む。時次郎は殺し屋を辞め、上方へ行くと話し、幼少期のことを語る。宮沢は話を辞めさせ、女は来ないと話す。時次郎は宮沢が自分を殺しに来たことを悟り、金で手を打とうとするが、宮沢に斬られてしまう。そこへ鬼平たちがやってくる。酒井と沢田が相手をするが、沢田の刀が宮沢に折られてしまう。それを見た鬼平が宮沢と相対し斬り捨てる。

 お照は主人と寺を参っていた。それを鬼平が酒井と見ていた。酒井はお照は恐ろしい女だと話すが、鬼平は「女はあれでいい、女には昔はねえもの、今が幸せなら古傷が疼くことがねえのが女という生き物だ」と語る。

 役宅に帰った鬼平は同心や久栄の前で時次郎のことを話し、この世から悪を根絶しようという盗賊改方の仕事も男の儚い夢かもと語る。久栄はそれは素晴らしい夢ですと答えると、鬼平はそれも同心や密偵たちのおかげだと話す。

 

 このブログの鬼平シリーズについては15年ほど前にTVで放送されていた全シリーズを録画、それを5年ほど前から1本ずつ鑑賞し書き始めた。5年前に書いた鬼平第1シリーズは24話を書いたところで終わっている。今回、初めて本作である第1シリーズ第25話を鑑賞、ブログを書くことに。

 15年ほど前に録画したものの中に本作が含まれていない、つまり放送されなかった理由は、本作のゲストキャラである時次郎を演じているのが清水健太郎であることは明らか。15年前は放送NGだったものが、昨年BSフジで放送されたということらしい。清水健太郎wikiを見るとここ10年ほどは事件を起こしていないようだ。なんにしろ初めて本作を見ることができたのは嬉しい限りである。それにしても、殺し屋家業から足を洗おうとするが、これまでの悪行の報いとして悪夢を見る清水健太郎の表情は演技とは思えない(笑 クスリなどやらなければ、良い時代劇俳優となっていただろうに残念。

 

 ストーリーは池波正太郎鬼平シリーズの原作にはない話らしく、後の梅安シリーズにつながる仕掛人が主人公となる話。そのためか、事件?犯人?たちと盗賊改方との絡みはぎこちないのは仕方なしか。殺し屋である主人公が、因縁のある男女を殺すように依頼され、男は殺すが、女とはよりを戻そうとする。しかし女に見限られ、逆に女に依頼された殺し屋に殺されてしまう、という身もふたもない話。

 しかもその女は殺しを依頼したにもかかわらず、ラストでは平和な暮らしを送っているのを鬼平に見届けられる。女だけでなく、殺しを請け負う元締めも鬼平の手にかかることはない。この辺りは、原作が鬼平シリーズではないからなのだろう。

 

 本作の鬼平の役割は、主人公を殺した殺し屋を切り捨てるだけ。しかしそれでは足りないと思ったか、「女」の生き様を鬼平に語らせている。

 「女はあれでいい、女には昔はねえもの、今が幸せなら古傷が疼くことがねえのが女という生き物だ」

 このセリフがこの年齢になると実感できるのがポイントか(笑

 

 それでも第1シリーズ通常放送のラストである本作(次の26話はSP版として放送されている)、事件解決後、鬼平が同心や密偵たちへの感謝の言葉を述べるのが、いかにも第1シリーズの終わりを感じさせる。

 このブログでは、鬼平シリーズのSP版は取り上げて来なかったが、本作を見ると第1シリーズのラストの26話SP版も少し見てみたくなった。機会があれば見ることにしよう。

 

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