碁盤斬り

●785 碁盤斬り 2024

 柳田格之進は娘お絹と暮らしているが、大家に家賃を催促されるほどの貧乏暮らし。篆刻を作り上げた格之進はそれを届けにお庚の元へ行き1両の代金を受け取る。帰りに碁会所に寄るが、新顔の客が賭け碁で店の腕自慢たちを倒しているのを見て、その客に勝負を挑む。しかし勝負の途中で1両を払い帰ってしまう。その客源兵衛は萬屋の主人だった。

 ある時、萬屋に言いがかりをつける浪人がやってくる。通りかかった格之進はその浪人が持っていた茶器を値踏みし浪人を追い払う。しかし格之進は店からの礼も受け取らずに帰ってしまう。源兵衛は使用人である弥吉に格之進を探させる。格之進の家を見つけた源兵衛は改めて10両の礼を持って行くが、格之進は受け取らない。そこで源兵衛は源兵衛が勝てば10両を受け取ってもらうという条件で碁の勝負をするが、負けてしまう。源兵衛は碁会所での勝負のことを聞くと、格之進は碁は正々堂々と勝負したかったためと答える。源兵衛はその後も格之進と碁を打つようになる。ケチ兵衛と言われていた源兵衛は少しずつ商売の仕方も変わってくる。源兵衛は格之進のことを尋ね、格之進は彦根藩の武士であったことを告げるがそれ以上は話さなかった。

 源兵衛の金で格之進たちが住む長屋で宴が行われる。源兵衛は弥吉に格之進から碁を習うように話す。お絹に惚れ始めていた弥吉はその話を受ける。

 源兵衛は十五夜の宴に格之進とお絹を誘う。お絹は亡き母の着物をお庚に着せてもらうが、吉原の女将であるお庚の厳しい面も見ることになる。源兵衛の家で格之進と源兵衛は立派な碁盤で碁を打つことに。その勝負の最中に伊勢屋が50両の金を返しにきたため、番頭が50両を源兵衛に渡す。

 彦根藩の武士梶木左門が格之進を訪ねてくる。左門は格之進が受けた冤罪が柴田兵庫の仕業だったこと、格之進が妻が自害したのも柴田が原因だったことを告げる。格之進は藩にいた頃、柴田と碁の勝負をしたことがあったが、その日の帰り道柴田に襲われたことがあった。その時格之進は柴田の足を斬り怪我をさせていたのだった。左門はさらに、柴田は出奔し中山道あたりにいるらしいとのこと、殿が格之進の帰藩を求めていることなどを告げる。話を聞いた格之進は源兵衛との碁を続けるが、源兵衛は格之進の異変に気づき、碁を打掛とする。

 翌日、萬屋で50両の件が持ち上がる。源兵衛は50両をどこかに持ち出した記憶がなく、50両がなくなったのは格之進の仕業だと番頭が騒ぎ出す。その頃格之進は柴田を討つため旅立とうとしていたが、そこへ弥吉がやってきて50両のことを持ち出す。格之進も話を聞いたお絹も弥吉に怒る。格之進は旅立つの辞め、お庚への手紙を書いてお絹に届けさせる。格之進の様子がおかしいと思ったお絹はその手紙を読む。そこには50両を盗んだと疑われたため、切腹をして身の潔白を証明すると書かれていた。お絹は急いで家に帰り、格之進を止める。

 お絹は50両を作るためにお庚のもとへいき、50両を作る。お庚は格之進に50両を渡すが、大晦日までに返さなければお絹を店に出すと言い渡す。格之進は50両を弥吉に渡すが、もし50両が出て来たら弥吉と源兵衛の首をもらうと話す。

 話を聞いた源兵衛は驚き、格之進たちの家へ行くがすでに夜逃げをした後だった。格之進は吉原を見た後、中山道へ向かっていた。碁会所を巡り柴田を探すがなかなか見つからない。塩尻で格之進は左門と出会う。彼は柴田に盗まれた探幽の掛け軸を取り戻そうとしていたため、格之進のお供となる。格之進は左門を相手に、自分が藩で行って来たことは間違いだったかもしれないと話す。清廉潔白で生きて来た格之進は藩内で起きた不祥事を訴え続け、処罰された武士の残された家族は困窮していた。

 江戸では祭りが行われていた。弥吉は街中でお絹に会う。どうして姿を消したのかと問う弥吉にお絹は怒る。お絹が吉原の大門の中に入って行くのを見て弥吉は何が起こったのか理解したのだった。

 格之進は韮崎の宿場に足の悪い碁打ちがいることを聞き出す。碁の打ち方などから柴田で間違い無いと思われたが、柴田は江戸で行われる賭け碁に出るために3日前に両国へ向かったとのことだった。

 大晦日横網の長兵衛の仕切りで賭け碁が行われていた場所へ格之進と左門がたどり着く。土下座までして頼む格之進の姿を見て長兵衛は彼らを中へ案内する。格之進は柴田を見つける。そしてお互いの首を賭け、碁で勝負することに。

 その頃、萬屋では新年のために源兵衛が新しい書を書いていた。

 格之進と柴田の碁は石の下が決まり、格之進が優勢となる。劣勢を感じた柴田は格之進を斬ろうと暴れ始める。長兵衛の手下たちが柴田を斬ろうとするが敵わなかった。格之進は長兵衛から刀を受け取り柴田の腕を斬る。負けを認めた柴田は格之進に解釈を頼む。

 萬屋では源兵衛が書いた書を新しい額に入れて飾ろうとした時、古い額の中から50両が見つかる。

 格之進と左門は吉原へ急ぐ。しかし大門は閉じられてしまう。そこへ50両を持った弥吉が現れる。事情を悟った格之進は萬屋へ向かう。そして源兵衛と弥吉を前に二人の首をもらうと宣言するが、二人はお互いをかばい合う。それを見た格之進は二人の首の代わりに碁盤を斬る。

 正月、格之進は改めてお庚の元へ行き50両を返す。お庚は期限のことなど忘れたと話し、お絹に家に帰るよう話す。

 格之進は柴田が持っていた掛け軸を持って藩に帰る左門に対し、その掛け軸をくれと話す。柴田が言っていた通り、掛け軸を売って自分が訴えを起こしたために困窮している残された家族に金を渡したいのだと話すと、左門は掛け軸を格之進に預け帰って行く。

 お絹と弥吉は祝言を挙げる。源兵衛は隠居をすると格之進に話し、いつか打掛にしていた碁の続きをしましょうと言って碁盤を探しに行く。碁盤を持って帰って来た源兵衛だったが、格之進の姿は消えていた。彼は約束通りのことをするために旅立っていたのだった。

 

 

 碁は打ったことがないが将棋が好きなので、この映画のタイトルは気になっていた。Amazonプライムで公開されたので早速鑑賞。

 ストーリーは、時代劇で定番の妻の仇を取る侍の話といえば良いのだろうか。ただそこに至る過程でのサブエピソードのようなものが面白く、トータルで面白かったと言えるだろう。

 

 特に序盤が面白かった。貧乏な主人公の侍がやっと稼いだ金を賭け碁で失う。その相手の店で不逞な浪人を追い払うことで、主人公と相手が仲良くなる。そしてケチで有名だった相手が商売の仕方まで変えてしまうほどの仲に。

 この序盤は「居眠り磐音」を彷彿とさせた。これで貧乏な主人公の生き方も変わるのかと思って見ていたら、中盤物語は意外な方向へ展開して行く。

 

 中盤、それまで明かされなかった主人公の過去が明かされる。主人公は妻の敵討ちの旅に出ようとするが、同時に主人公に50両をネコババした疑いがかけられてしまう。50両があれば、ということで主人公の娘が自ら吉原へ身売りすることを決意する。

 正直この展開を見た時に、アレレ?と感じた。まるで落語の世界、有名な「文七元結」と同じ展開。序盤が面白かっただけに、この展開はちょっと残念な気がした。

 

 終盤は、敵討ちがメイン。中山道へ旅をする主人公だが、相手はなかなか見つからず。藩の仲間と同行しやっと相手を見つけ江戸へ戻る。時は大晦日。娘の身売りが決まってしまう刻限が近づく中、やっぱり碁での勝負(笑 いやこれはそうだろうけど。碁がわからないので、最後の局面の大逆転(だと思う)の面白さはわからなかったが、きっとそういうことなのだろう。仇が足掻くところはちょっとリアルなのか。

 そしてもう一つの見せ場、50両が出て来て主人公が首をもらうと言っていた二人をどうするのか、という場面。二人がお互いをかばい合うのがポイントだったのか。それとも主人公の性格なのか。碁盤が斬られ大団円。

 

 見終わってネットで調べたら、このストーリーの大部分は落語がベースなのね。いろいろと納得。格之進と源兵衛の出会いがこの映画での創作であり、源兵衛のケチぶりも同じらしい。さらには、格之進の妻が柴田の手にかかり…という設定もこの映画オリジナル。つまり、私が面白いと思った序盤は映画オリジナルだったが、中盤の展開は原作落語まんまの世界のようだ。wikiで原作落語のあらすじを読んだが、「文七元結」にかなり似ている話だった。

 

 草彅剛の映画やドラマは一本も観たことがなかった。ワルイコはよく見ているが(笑 それでも他の映画などで賞賛されている理由がわかった気がする。