博士の愛した数式

●367 博士の愛した数式 2005

 ルートと呼ばれる数学教師が教壇で話し始める。ルートと呼ばれるようになった理由、数学を好きになった理由を。

 ルートの母は家政婦として博士の家へ行くことになる。博士は事故が原因で80分しか記憶が持たない数学者だった。博士の義姉から離れに住む博士の面倒を全て見るように言われる。

 翌日から母は博士の家で働き始める。博士は母の靴のサイズから階乗の話をする。数学のことを考えているときは無口な博士だったが、誕生日から友愛数の話をする。その後、母に息子がいることを聞いた博士は翌日から息子をこの家に呼んで一緒に夕食を食べるように命じる。

 息子は博士から頭のてっぺんが平らなことからルートと名付けられる。博士とルートは仲良くなるが、ともにファンの阪神タイガースの話題になった時に、博士が好きな江夏がすでに引退していることを話してしまい、博士は悲しげな表情をする。

 博士、母、ルートは次第に仲良くなって行き、ルートは博士に野球を教えてもらうことに。江夏の話題になった時に博士は江夏の背番号28は完全数であることを話す。博士がルートに野球を教える。その間母は博士の部屋で博士が義姉に書いたラブレターらしきものを見つける。野球の練習中にルートはケガをする。博士はルートを病院に連れて行き診察してもらう。ルートは無事だったが、母は博士を傷付ける言葉を吐いてしまう。その帰り道、母はルートに謝り、博士が見に来てくれる野球の試合でルートたちのチームのメンバーの背番号を江夏がいた頃の阪神タイガースの選手たちの背番号にすることを思いつく。

 博士はルートの野球の試合を観戦する。その夜は博士は疲れから寝込んでしまう。母とルートは博士の家に泊まり込み看病をする。

 母は家政婦斡旋所に呼び出され、義姉からクレームが入り博士の家の家政婦を解雇されることになる。母は別の場所へ家政婦として行くことに。それでも母もルートも博士に会いたがっていた。ある日母は電話で呼び出され博士の家に行くことに。そこにはルートがいた。博士の義姉がクビになったのになぜ子供が遊びに来るのか、狙いは何かと母を問い詰める。母はルートも自分も博士の友人だと話す。そこにいた博士がオイラーの公式をメモし義姉に見せる。

 母はまた博士の家の家政婦として働くことに。母はルートの11歳の誕生日を3人で祝うことを提案する。その夜、義姉が来て博士に頼まれたというルートへのプレゼントのグローブを持って来る。そして今後は母屋との出入りを許可する旨を話す。

 

 数学好きな学生だったので、久しぶりに観た映画だったが、数学用語を懐かしく思い出した。そう言えば「友愛数」はこの映画で覚えた概念だった。

 余談だが、教師役の吉岡秀隆ストーリーテラーとなるが、少年時代のルート役の子役が最初に画面に登場した時、あまりに幼い吉岡秀隆に似ていて驚いた(笑

 

 80分しか記憶が持たない、という設定を思いついた段階でこの原作は勝ちだと思う。あとはそれをいかに「調理」するかだが、この原作、映画は成功しているのではないか。毎朝繰り返される会話を見せつつ、母やルートが博士に惹かれて行き、博士も二人を受け入れて行く。80分記憶という人間として決定的な弱点を持ちながら、数学への愛を忘れない博士の言葉が身にしみる。数学を農業に例えたり、数学で人生を語ったり。数学好きにはたまらない言葉ばかりだった。

 博士と義姉との不貞を匂わせるシーンがあったが(それが母が一回解雇される理由になるのだろうが)、それを詳しく説明しない描き方も良かった。映画全体がほのぼのとし、大きな事件もなく平和な時間がゆっくりと過ぎて行く感じが良かったので。

 久しぶりに優しい気持ちになれる一本だった。