死体ばんざい 星新一YAセレクション

●死体ばんざい 星新一YAセレクション

 オー・ヘンリーの短編集を読み終えたが、同じ出版社の和田誠さんのイラスト付きの星新一さんのセレクションがあるのを知ったので早速読んでみた。

 12編の短編。「YAセレクション」の「YA」は「ヤングアダルト」のことらしい。中高生あたりをターゲットにしたセレクトのよう。星新一さんのショートショートは中学生の頃ほとんど読んだと思うが、それ以来なので本当に久しぶり。

 しかし前半の数編は首を捻るものが多かった。中学生の頃読んだイメージとしては、星新一さんのショートショートのウリはブラックであったり切れ味の鋭いオチだったり。しかし前半の短編は、どちらかというと不条理さをウリにしたようなものが多かった。YA対象だからなのか…。

 それでも後半の数編は昔読んだイメージ通りのものだった。エヌ氏やエフ氏が登場し短いページ数で見事なオチをみせてくれる。

 

 「あれ」幽霊を見ることが昇進の条件となる会社に勤めた男。

 「ひとつのタブー」飛行機事故にあったスパイが孤島で女と出会う。

 「勝負」世の中を支配しているコンピュータを狂わせる菌を開発した博士。

 

 表題作の「死体ばんざい」は霊柩車の運転手たちが死体を運転中に落としてしまったと思い引き返し死体を見つけて喜ぶが、その死体がその後いろいろな人々の手に渡っていく話。星新一の真骨頂と思える話だったが、ラスト、医者が死体を持っていかれるのだが、ホントはそこには死体があるはずでそれについて触れられていないのがちょっと引っかかった。

 ちょっと昔のイメージと違う話が多かったのが残念かな。