螺旋階段のアリス 加納朋子

●螺旋階段のアリス 加納朋子

 加納朋子の新しいシリーズものを読みたくなって選んだ。

 7編からなる連続短編集。「螺旋階段のアリス」「裏窓のアリス」「中庭のアリス」「地下室のアリス」「最上階のアリス」「子供部屋のアリス」「アリスのいない部屋」の7編。

 早期退職した仁木は私立探偵事務所を開く。そこへ一人の若い女性安梨沙がやってきて、探偵助手になってしまう。

 

「螺旋階段のアリス」〜ダイエットしている妻が亡夫の隠した鍵を探して欲しいと…

「裏窓のアリス」〜妻が自らのアリバイ調査を求めてくる

「中庭のアリス」〜裕福な老婦人がいなくなった愛犬探しを依頼してくるが…

「地下室のアリス」〜仁木の元勤め先の地下倉庫で鳴る電話の謎

「最上階のアリス」〜仁木の大学時代の先輩が妻の頼み事の意味を調べて欲しいと…

「子供部屋のアリス」〜産婦人科医から赤ちゃんの面倒をみることを依頼されるが…

「アリスのいない部屋」〜安梨沙が行方不明に。その夫や父が現れるが…

 

 おっさんの探偵と若い女性の助手という組み合わせ。多くの推理小説で使われる設定で気楽に読めるだろうと読み始めたが、最初の「螺旋階段の〜」を読んで少しガッカリ。事件そのものは全く面白くもなく、まるで映像化を狙ったかのような展開だっため、加納朋子さんもそういう路線を狙ったのかしら、と思ってしまったから。

 しかし読み進めて行くと、有名な「アリス」物語が微妙に話が絡んできたり、安梨沙自身の謎が少しずつわかってきたりで、俄然面白くなってくる。

 現代の探偵事務所で2人組、ということで、乾くるみの「カラット探偵」シリーズを思い出した。あちらもこちらも、持ち込まれる事件はいかにも現代っぽく、いわゆる推理小説っぽくないところが似ている気がする。

 それでも「裏窓〜」「中庭〜」「最上階〜」など、事件そのものやその解決などより依頼人とその人間関係にドキッとさせられる話が多く、さすが加納朋子さんらしい。

 ラスト、行方不明になってしまった安梨沙は戻ってきたのか?続編があるようなので早速読んでみよう。