鬼平犯科帳 第1シリーズ #04 血頭の丹兵衛

●第1シリーズ #04 血頭の丹兵衛

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 江戸の町で急ぎ働きを繰り返す盗賊が現れる。火盗改が必死に捜索するが2ヶ月なんの手がかりも得られなかった。そんな時一味の一人を捕まえようとした時、血頭の丹兵衛の名前を口にし死んでいった。しかし名前がわかっただけでそれ以上のことは何も掴めなかった。

 役宅で村松の鮎飯を食べた鬼平に佐嶋が、伝馬町の牢にいる罪人が血頭の丹兵衛のことで鬼平に会わせろと言っていると告げる。鬼平はその男、小房の粂八に会うことに。粂八は15年前血頭の丹兵衛の手下だったが、盗みに入った店で女を犯そうとしていたところを見つかり一味から破門にされたいた。血頭の丹兵衛は、殺さず、貧しいものからは奪わず、女を犯さず、という3つの掟を守る盗人だった。その丹兵衛が今江戸で行われている急ぎ働きをするはずがない、きっと偽物だからその正体を暴いてやりたい、そのために娑婆に出して欲しいと粂八は鬼平に訴える。鬼平は粂八に名乗らせる。小房の粂八は野槌の弥平一味の知恵袋と呼ばれた男だと鬼平は気づき、名乗ったからには島流しは避けられないと話すがそれでもいいのかと話す。

 鬼平は粂八を解き放す。粂八は血頭の丹兵衛一味のことを調べるが手がかりは得られず、毎夜役宅の牢へ戻ってきていた。鬼平は夜粂八の牢へ行き一緒に酒を飲む。粂八は貧しかった生い立ちを語る。そこへ酒井がやってきて血頭の丹兵衛がまた仕事をしたと知らせる。襲われた店に行った鬼平は生き残った娘から、一味が島田宿に集まると言っていたと聞く。

 同心と粂八は島田に向かう。島田に一人乗り込んだ粂八は女郎屋で騒ぎを起こす。粂八は騒ぎを起こせば、乱暴者を集める急ぎ働きに誘われると考えたのだった。しかし3日経っても誘いはかからなかった。そんな時江戸でまた血頭の丹兵衛が仕事をする。今度は店の金を密かに奪い、名前の入った木札を残すだけの仕事だった。それを聞いた粂八はそれこそが本物の血頭の丹兵衛の仕事だと話す。

 島田宿にいる粂八の元を鬼平が訪れる。江戸で起きた血頭の丹兵衛がまた仕事をした、盗んだ金をそっくり返しにきたと話す。それを聞いた粂八は喜ぶ。そして近いうちにことが進むはずだと答える。女郎屋に行った粂八はそこで血頭の丹兵衛と出会う。酒を飲みながら血頭の丹兵衛の話を聞くが、丹兵衛は昔とはすっかり変わっており、江戸の急ぎ働きは全て自分の仕事だ、このご時世商人ばかりが儲けているのが気にくわない、急ぎ働きをして稼ぐのだと言って粂八を驚かせる。さらにこれから京へ行って仕事をするので仲間にならないかと話す。

 丹兵衛が帰ったのを見届けた粂八は女郎屋を出て鬼平たちに知らせに行こうとするが、見張っていた丹兵衛の手下に見つかる。しかしそれを鬼平たちが救う。粂八は鬼平たちと丹兵衛との待ち合わせ場所へ行く。そして一味を捕らえる。

 江戸への帰り道、鬼平と粂八は茶屋で休む。鬼平は粂八に密偵になるよう勧める。そこへ老人が現れる。老人は蓑火の喜之助という大盗賊だったが、すっぱりと足を洗っていたが、血頭の丹兵衛の名前で本物の仕事をしてやったと話す。去り際、蓑火の喜之助は3つの掟を守るようにと粂八に告げていく。

 鬼平は蓑火の喜之助の名前を聞き、粂八に一緒に仕事をするつもりなら江戸を訪ねてこい、しかし嫌なら二度と俺の前に顔を見せるなと話し去っていく。粂八は鬼平を追いかけていく。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加する修正版。

 粂八初登場。その登場の仕方が良い。牢にいながら、江戸での血頭の丹兵衛の仕事が偽物だと訴え、それを暴くために娑婆に出して欲しいと鬼平に訴える。それに応える鬼平。時代劇ならではの展開。

 一味が島田にいると聞き島田へ向かうが、ここでの展開も良い。仲間に誘われるために騒ぎを起こす粂八の前に現れたのは、なんと本物の血頭の丹兵衛。つまり粂八の読みは見事に外れていた。鬼平たちと一味の盗人宿を強襲、丹兵衛を殴り続ける粂八が哀れだった。

 ラストの種明かしも良い。粂八がこれこそが本物だと思っていた、江戸に現れた丹兵衛の仕事は、蓑火の喜之助によるものだった。蓑火の喜之助役の島田正吾の話しっぷりが見事。随分とゆっくりとしたしゃべりだったが、それが逆に大物だった過去を忍ばせている。

 サブエピソードとしては、冒頭の村松の鮎飯。醤油を入れ炊いたご飯に素焼きにした鮎を混ぜ込み、さらにネギと大葉を刻んだものを混ぜる。鬼平ならずとも食欲を誘われう一品。その鮎飯で久栄も魅せる。鬼平のために鮎飯を作るのだが、その場で夜中に鬼平が酒を飲んでいることに気づいていることを明かす。言葉を失う鬼平だが、それは牢に戻ってきている粂八と酒を酌み交わすためだったと明かされる。

 以前鬼平の原作第1巻を読んだ時に、この話の原作とドラマとの相違点をあげたが、私の勘違いだったようだ。真実を知るであろう蓑火の喜之助のことを粂八が心配するのが原作、ドラマではその蓑火の喜之助に3つの掟を守るように言われるのがドラマのラストだった。ドラマの方がこの話には合っている。

 ストーリーとしては、粂八が世話になった親分を信じ真実を探るが、実は親分が変わってしまっていたという意外な展開。粂八初登場もあるが、ストーリーも意外性があり、第1シリーズ4作目としては十分な出来の作品と言えるだろう。

 

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