あなたを抱きしめる日まで

●623 あなたを抱きしめる日まで 2013

 元BBCのジャーナリストで、政府の報道官をクビになったマーティンはある日パーティでジェーンから声をかけられ、ジェーンの母フィロミナが50年前に生き別れとなった息子のことを調べて欲しいと頼まれる。フィロミナは若い頃恋に落ち妊娠、アンソニーを出産をするが、父親の命令で修道会へ入れられる。1日1時間しかアンソニーに会えない状況が続きそれに耐えていたが、修道会は同じような境遇の子供達を養子として送り出しており、フィロミナはアンソニーと生き別れになってしまう。50年が経ちフォロミナはアンソニーのことをジェーンに打ち明けたのだった。

 当初は断ろうとしていたマーティンだったが、知り合いの雑誌編集長から記事にすると持ちかけられ、フィロミナとアンソニーを探す旅に出る。修道会へ行くが火事があり、昔の記録は全て燃えてしまったと聞かされる。二人は修道会のそばのバーへ。そこで修道会ではそのような子供たちをアメリカ人に売買していたと聞かされる。

 マーティンはフィロミナとともにアメリカへ。ジャーナリスト時代のつてを頼りアンソニーのことを調査、アメリカ政権下で法律顧問をしていたことが判明するが、既に死亡していた。アンソニーの死を知ったフィロミナは全てを諦めイギリスに帰ろうとするが、マーティンは編集長から記事にするように命じられる。フィロミナは空港まで行くが、アンソニーのことを知っている人の話を聞きたいと望み、アメリカに残ることに。

 アンソニーの仕事仲間であった女性に会うことができ話をする。アンソニーは優秀だったが、ゲイであることが判明。その相手がピートだったこともわかる。ピートと連絡を取るが、彼はフィロミナに会おうとしてくれなかった。マーティンは最後の手段としてピートの家を訪ねる。しかし門前払いを食ってしまう。フィロミナはマーティンの代わりにピートの家を訪ね、アンソニーのことを知りたいと直接話す。

 ピートはフィロミナを受け入れ、アンソニーのビデオなどを見せる。そのビデオの中にアンソニーが修道会を訪ねているシーンが映っていることに気づく。ピートによればアンソニーは母のことを訪ねて修道会に行ったが母のことは教えてもらえなかったこと、そこにアンソニーお墓があることを告げる。二人は修道会へ。マーティンは全てを知っていたのにフィロミナにもアンソニーにも事実を告げなかったシスタービルデガードを非難するが、フィルミナは彼女を赦すと話す。二人はアンソニーの墓参りをし、イギリスへ帰って行く。

 

 何も知らずに観た一本だったが圧倒された。この前見た「ウィンストンチャーチル」に続きイギリス映画の傑作を観た感じ。

 50年前に生き別れになった息子を探す母の物語。映画冒頭でそれが明かされ、二人のロードムービー的な展開となる。修道女としての経験があるフィロミナと神を信じないマーティンの会話、会社の金でビジネスクラスに乗る初めての経験に喜ぶフィロミナなど、ユーモア溢れるシーンも多い。きっと息子との50年ぶりの再会が結末なのだろう、ひょっとしたらこの男性(マーティン)がその息子本人なのかも、などと思いながら観ていたが、映画中盤であっさりと息子アンソニーが既に死亡していることが判明。

 後半はどう展開するのか、と思って観ていたが、生前のアンソニーのことが知り合いによって徐々に明かされて行く展開。息子がゲイだとわかっても何も驚かないフィロミナ。そして最後には、修道会が全てを知っていたことを知る。ラストはシスタービルデガードを相手にのカタルシスかと思いきや、フィロミナの見事な赦し。

 ラストの「赦し」については、「尼僧物語」を観ていなければきっと納得できなかったに違いないが、あの映画のおかげでビルデガードの考えもさもありなんと思うことができた。もちろんその考え方に納得いったわけではないが。

 「尼僧物語」の感想でも書いたが、本作も教会側からの反論はなかったのかと思ったら、wikiにその旨の記載があった。そりゃそうだよなぁ。

 

マーティンが書いた映画の原作本

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