ミセス・ダウト

●643 ミセス・ダウト 1993

 ダニエルはモノマネが得意で声優もこなす役者だったが、制作陣とトラブルを犯すことが多かった。その日も声優の仕事での意見の食い違いからクビになってしまい、早めの帰宅となったため、3人の子供を迎えに行く。息子の誕生日だったため自宅でパーティを開くために移動動物園などを呼び大騒ぎをするが、隣家の花壇に動物が入ってしまい隣人から妻へ苦情のクレームが入ってしまう。

 デザイナーの妻ミランダは急遽帰宅するが、家の中の混乱ぶりに呆然とする。そしてダニエルに離婚を申し出る。子供たちと別れたくないダニエルは謝罪するがミランダの気持ちは変わらなかった。調停が開かれ、失業中であるダニエルは親権を奪われ、週に一度土曜のみ子供との面会が許されることに。3ヶ月後に再審が行われるため、ダニエルはTV局でのフィルム発送の仕事に就く。

 初めての土曜日、子供達を迎えにきたミランダから、家政婦を雇うつもりだと聞いたダニエルはミランダが新聞広告に出す家政婦応募の電話番号を書き換え、自ら電話をする。ヤバい人を演じミランダを失望させたダニエルは最後に英国人女性を名乗り、家政婦の地位を得る。特殊メイクのプロである兄に完璧な女装を作り上げてもらったダニエルはミランダの家へ。ダニエルは家政婦ミセスダウトとして働くことになる。

 ミセスダウトは子供に厳しく対するが、子供たちも彼女の想いを受け入れる。さらに女性同士ということでミランダも心を開き信頼を得ていく。ある日ミランダは昔の恋人で成功をしているスチュワートから仕事の依頼を受ける。彼はミランダに交際を迫る。それを知ったダニエルはミランダに様々な忠告をするが、ミランダはスチュワートに放られる一方だった。

 ダニエルはTV局の仕事をしている時に、つまらない教育番組の撮影現場に出くわす。彼はスタッフに本音を語るがそれは局の社長で番組の責任者だった。後日誰もいないその番組のスタジオでダニエルはアドリブで番組MCを演じる。偶然それを見ていた社長が番組について話がしたいので、とダニエルを金曜7時の夕食に誘う。一方、ミランダはスチュワートとの夕食に家族で誘われ、ミセスダウトにもついてきて欲しいと頼む。時刻は金曜7時、ダニエルは断ろうとするが、娘にも頼まれ断りきれなかった。

 社長との約束も断るわけにはいかなかったダニエルは、当日ミセスダウトの扮装で店へ。トイレで着替えることで、ミランダと社長の間を行き来しなんとかごまかし続けるダニエルだったが、社長に勧められた酒に酔ってしまい、ミセスダウトの扮装のまま社長の前に出てしまう。理由を尋ねられたダニエルは、番組のMCをこの格好でするというアイデアを出す。またダニエルはスチュワートが唐辛子アレルギーだと知り、彼の料理に唐辛子を入れることに成功する。しかしそれを食べたスチュワートが発作を起こしてしまう。ミセスダウトの姿のままそれを助けるが、途中扮装が外れ正体がミランダにバレてしまう。

 3ヶ月後の再審で、行動の異常さを指摘されたダニエルは親権を失ったまま、さらに土曜の面会も調査員立会いのもと、という条件がついてしまう。ミランダはミセスダウトを失い、新たな家政婦を雇おうとするが条件に見合わない人ばかりだった。そんな時、TVの教育番組でMCを務めるミセスダウトを見る。ミランダはダニエルに会うためにTV局へ。そこでダニエルの気持ちを知ったミランダは、ダニエルを家に迎え入れる。

 

 有名男性俳優の女装というと、どうしても「トッツィー」が思い出されてしまうが、あちらが仕事を失った俳優が仕事を得るために女装したのに対し、本作は子供たちと別れたくない一心で家政婦として家に潜り込むための女装、と女装のための意義が異なっているのがウリか。

 息子の誕生日パーティの大騒ぎぶりから、家政婦として乗り込みなんとかそれを成立させてしまうまで、だいぶファンタジーのような展開が続くが、コメディとして見る分には楽しく観ることができるし、腹を抱えて笑ったシーンも多い。

 ストーリー展開もラストが保証されたような話で、途中ミセスダウトに夫のことを話すミランダの言葉も想定通りだったし、そもそもミランダがダニエルと離婚をしてしまうのがやりすぎだったんじゃないかと思うが、これがなくては話が始まらないので仕方ない(笑

 3ヶ月後の再審の場でミランダがダニエルをかばって裁判?の結果を覆す、というラストでも良かったと思うが、これだとTV番組のMCとしてダニエルが活躍するという話が描けないので、これまた仕方なしか。ラストのミセスダウトが子供達に語りかけるセリフもなくなってしまうし。

 このようにちょっと考えるとおかしく思える点もあるが、まぁ楽しく笑って観ることができる2時間だった。