決断の3時10分

●685 決断の3時10分 1957

 駅馬車が牛飼いの牛に行く手を阻まれ立ち止まる。ベン一味は駅馬車を取り囲み金を奪う。御者ビルが一味の一人を襲おうとするが、ベンは捕まった仲間とともにビルを殺してしまう。牛の持ち主であるダンは息子たちとともにその様子を見ていたが一味を前に手を出せなかった。ベンはバターフィールドにビルの遺体を運ぶように言い、通報されないようにダンたちの馬を奪って行く。

 ダンは息子たちとともに家へ帰る。妻アリスは話を聞いて驚く。馬車を迎えに行くというダンにアリスは話をし、干ばつで干上がっている牧場に川の水を使うための200ドルを借りるように話す。

 その頃ベン一味は街の酒場に着いていた。彼らは保安官に駅馬車が襲われたと知らせろと話し去って行くが、一人ベンだけは酒場の女エミーの元へ残る。知らせを聞いた保安官は仲間を連れ駅馬車の元へ。その頃ダンも駅馬車の元へたどり着き、駅馬車の持ち主バターフィールドから話を聞く。保安官は街に知らせに来た集団が、駅馬車を襲った一味だと気づく。街にいた酔っ払いのアレックスが遅れて来て、一味の一人がまだ酒場に残っていると話し、ダンや保安官は街へ向かう。

 街に戻ったダンたちはベンを捕まえる。保安官は一味がベンを取り戻しに戻ってくることを恐れ、コンテンションから3時10分に出る列車にベンを乗せる計画を思いつき、さらに一味を騙すための一計を案じる。その頃ダンは200ドルを借りようとするが断られてしまう。

 保安官はベン護送のための作戦の参加者を募るが誰も手をあげなかった。バターフィールドは200ドルを報酬として出すと話し、それを聞いたダンはアレックスとともに参加することに。保安官はベンを駅馬車に乗せて出発する。途中、ダンの家の前で馬車は溝にはまり立ち往生する。その隙にベンをダンの家へ匿い、馬車は出発する。一味は馬車の後を追う。

 アリスはベンに夕食を振る舞う。息子たちはベンを毛嫌いするが、ダンは紳士的に応対する。そして出発、皆でコンテンションへ。街に着くとダンとベンはホテルの一室で3時10分の列車を待つことに。ベンは金を払うので逃がして欲しいとダンに持ちかける。今回の報酬200ドルに対し、ベンは7000ドル支払うと話すがダンは断る。バターフィールドが仲間を集めてくる。その頃街では一味に殺されたビルの葬儀が行われていた。ホテルのロビーには一味のチャーリーが待ち構えていた。ビルの葬儀が終わり、親族がホテルにやってくる。

 部屋にバターフィールドがコーヒーを持ってくる。ダンは扉を開けるとそこにはビルの親族が入ってきてベンを殺そうとする。ダンはそれを阻止する。その時の銃声でチャーリーはベンがホテルの一室にいることに気づき、一味を集めて戻ってくる。その頃アリスはダンの身を案じ街へ向かっていた。

 一味が集まってきたのを知り、バターフィールドに集められた仲間たちは殺されるのを恐れ逃げていく。見張りについていたアレックスも一味に殺されてしまう。列車の時間が迫りバターフィールドは勝ち目がないのでダンに逃げようと話す。そこへアリスがやってくる。ダンはアリスに息子たちに自分の姿を記憶してもらいたいと話す。ダンはバターフィールドにアリスのことを頼み、ベンを連れホテルから駅へ向かう。

 ベンを盾にしてダンは駅のそばにたどり着く。そこへ列車がやってくるが一味もまた駅に集まっていた。時間になり列車が動き出す。残念だったなと話すベンに、ダンは貨物車両に飛び乗ると話す。一味が二人の前に現れるが、ダンはベンに飛び乗れと話し二人は貨物車両へ飛び込む。追ってくる一味を撃ち殺し列車は駅から離れて行く。

 なぜ乗ったと尋ねるダンに借りを残したくない、ホテルで助けられたと答えるベン。そしてユマなら脱獄したこともあると話す。そんな列車を見送るアリスの姿があった。その時雨が降ってくる。干ばつが解消されることを喜ぶダンとアリスだった。

 

 

 先に本作のリメイクである「3時10分、決断のとき」を観ているので、同じストーリーかと思って観ていた。大筋は同じなのだが、細かい部分は全く異なると言って良いだろう。オリジナルである本作の主人公と一味のボスのおかしな友情をテーマにリメイク版はストーリーを練り直した、といったところか。列車が出る街のホテルに到着した後の主人公2人の会話、ベンがダンを買収しようとしダンがそれを拒否し続ける場面はリメイク版も本作も見所であることは同じだが。

 

 ストーリー展開は本作の方が単純でスッキリとしてわかりやすい。主人公ダンは干ばつで干上がっている牧場をなんとかしなくてはならず、それを妻に指摘され嫌々ながらも川の水を使用するための200ドルを借りようとする。しかし断られてしまい、その時逮捕されたベンの護送の手伝いで200ドルが稼げると知り、護送に参加するという話。

 

 上記したあらすじには細かいことは書かなかったが、主人公ダンは冒頭駅馬車が襲われる場面で息子たちの前で何もしなかったことを恥じており、妻にも似たようなことを言われたと勘違いする。それがダン護送の手伝いをするきっかけとなっている。また中盤ベンが妻に話しかけた内容や、ホテルの一室でベンに言われた貧しい今の暮らしと金があれば妻にしてやれることの話なども多分に影響している。

 一方でベンもダンやその家族から影響を受けていると思われる。ダンの家で過ごした夕食の時間、父のことを誇りに思う息子たちのセリフ、妻の手料理など。またラスト、夫であるダンを心配し街までやってきたアリスの姿がダンの心に響いたのだろう。

 ラスト、列車の中でホテルで助けられたことを列車に飛び乗った理由として語るが、上記したことが丁寧に描かれているため、観ている側はベンの最後の行動に納得がいくのだろう。

 そのラストもリメイク版よりも本作の方が気持ちの良い結末となっている。リメイク版ではダンが殺されてしまうという悲しい結末だったが、本作は無事列車に乗ることができた二人に、望んでいた雨が降り始め、夫婦の明るい未来が予感させられる。リメイク版を観た時はその完成度に驚いたが、やはりオリジナルである本作も良い。どちらが優れているかは観た人によるだろうが、自分はこちらの方が好みかな。

 

 蛇足ながら追加。

 ベンが酒場の女に惚れてそれが原因で捕まってしまう下りもなかなか面白い。詳しくは描かれないが、ダンの過去や酒場の女エミーの過去も想像させるエピソードだった。

 もう一つ。ダン役のヴァンヘフリン。特徴のある顔でどこかで観たことがあるとずっと思ったので、wikiで調べた。出演作を確認したが、おそらく観たことがあるのは「シェーン」のみ。最後に観たのはもう数十年前だと思うが、確かに言われてみればシェーンがやっかいになる牧場の主。あぁよく覚えていたと自分を褒めてやりたい(笑

 

 強いヒーローが悪者を倒すという単純な西部劇に対して、ストーリー性の強いしかも観終わって爽やかな気持ちになれる傑作だった一本。