ナイル殺人事件

●711 ナイル殺人事件 2022

 第一次世界大戦下、1914年ベルギー位ゼール橋。ポアロの属する部隊は橋の攻略を命じられるが、それは危険な作戦だった。それでもポアロの風向きを読む力で作戦は成功する。しかし大尉は敵が仕掛けた地雷によって死亡、ポアロも顔に大怪我を負う。入院したポアロを婚約者カトリーヌが見舞い、口髭を生やせば良いとアドバイスする。

 1937年ロンドン。クラブにいたポアロサロメの歌を聞いていた。ジャッキーとサイモンはダンスを踊っていたが、そこへジャッキーの友人リネットが現れる。リネットは遺産を相続した大富豪だった。ジャッキーは婚約者のサイモンを紹介、彼の仕事をリネットに世話してもらうことに。お礼にサイモンはリネットとダンスを踊るが、二人は怪しく惹かれ合う。

 6週間後。ポアロはエジプトにきていた。そこで友人のブークと再会。ブークの母を紹介され、彼らの友人であるサイモンの結婚パーティに招かれる。しかしサイモンの相手として現れたのは、リネットだった。パーティには、リネットの財産管理人、名付け親とその看護婦、リネットの元婚約者の医師、歌手のサロメとその姪、リネットのメイドなどが参加していた。そのパーティにジャッキーが現れる。ポアロはサイモン夫妻からジャッキーにサイモンのことを諦めさせて欲しいと頼まれる。ポアロはジャッキーと話すが、彼女は22口径の銃をポアロに見せつける。

 夫妻はジャッキーから逃れるために予定を変更しクルーズ船に皆を招待する。平和な時を過ごす夫妻と客たち。ポアロはブークがサロメの姪ロザリーに惹かれていることを告げられる。神殿を観光していた皆だったが、夫妻のそばに大きな石が落下する事故が発生する。皆が船に戻るとジャッキーが客として乗船してきた。リネットは彼女を下ろすようにサイモンに言うが、ジャッキーは正式なチケットを持っているためそれはできなかった。

 夫妻は翌日船を降りて帰国するとポアロに話しポアロもそれが良いと答える。夜更けロビーでジャッキーとサイモンは言い争いを起こす。そしてジャッキーがサイモンを撃ってしまう。興奮状態のジャッキーをロザリーが看護師、怪我をしたサイモンをブークが医師の元へ運ぶ。

 翌朝リネットが射殺されているのが発見される。22口径の銃弾跡が残っており、ジャッキーが疑われたが、前夜の事件のことがあり、ジャッキーには完全なアリバイが成立していた。ポアロはサイモンからリネット殺しを調査を依頼され、皆の取り調べを始める。

 招待客それぞれにリネットを恨む事情があることがわかってくる。川底の調査で犯行に使われたと思われるジャッキーの拳銃とスカーフ、血染めのハンカチが見つかる。さらに犯行とともに行方不明となっていたりネットのネックレスがブークの母親の部屋から発見される。

 実はポアロはブークの母親に頼まれ、ロザリーの身元調査を行っていた。そしてポアロはブークとその母親、ロザリー、サロメに対し、ロザリーはブークの理想的な相手だと話す。その後、2人目の犠牲者、リネットのメイド、ルイーズが死体となって発見される。ポアロはルイーズが事情聴取の時に発した言葉が、犯人に向けたものだったことに気づく。

 ポアロは最後にブークの事情聴取をする。彼がサイモンが撃たれた時にリネットに知らせていないことを疑問に思い、その際にリネットの部屋に行き死んでいるリネットを見つけ、報告する代わりにネックレスを盗んだのではないかと話す。それを認めたブークは犯人の名前を告げようとするが、その瞬間何者かに撃たれてしまう。

 友人であるブークを殺され、ポアロは一連の事件の謎解きを始める。リネット殺しは計画的に行われた犯行であり、ブークの母の赤い絵の具が盗まれた時点で全てが始まっていたことを説明、犯行はジャッキーとサイモンの共犯であり、サイモン銃撃は見せかけで、その隙にサイモンがリネットを殺したのだと話す。証拠がないと抵抗するジャッキーだったが、ポアロからハンカチの血が絵の具ならば川の水で薄くなっているはずだとハンカチを見せられる。観念したジャッキーはサイモンと抱き合い、自分たちに向けて引き金を引き自殺する。

 ポアロは船を降りる皆と会話を交わす。

 半年後、ポアロサロメのいるクラブを訪れ彼女の歌を聞いていた。しかし彼の顔には口ひげはなかった。

 

 1978年版の「ナイル殺人事件」を小学生の時に映画館で見ており、Amazonプライムで本作が見られるようになったので早速鑑賞。1978年版は当時小学生でありながら、ストーリー展開の上手さに感心した覚えがある。ポアロが容疑者一人一人に事情聴取をする際、誰にも犯行ができる可能性があったことを示唆するのだが、その推理の再現を画面上で見せることで非常に分かりやすかった。これはラストにポアロが真犯人を指摘する際も同じであり、ストーリー上で流れた場面の裏で犯人「たち」がいかに共犯者に危険を伝えそれを察知した共犯者が犯行に及ぶかを見せてくれていたので、犯行の手口をよく理解できた記憶がある。これは石坂金田一でも同じ手法が使われていたが。

 

 約45年ぶりに製作された本作はストーリーの展開がより丁寧になっていたと感じる。冒頭のポアロの戦争体験は置いておくとして、ジャッキーとサイモンがリネットに出会う場面やジャッキーが新婚の二人の前に現れる場面など。1978年版にもこんな説明場面あったのかしら?

 登場人物の肩書き?が変わっているのは、今時の事情があったのだろうと思うので仕方ない。ただ、ポアロの友人役で登場したブークに関するエピソードは必要だったのだろうか。おそらく1978年版が原作に近いのだと思うが(原作は未読 笑)、ブークの母親がポアロに依頼した件や、ブークが殺人を目撃していた件(結果的にこれでブークは第3の被害者となってしまう)など、1978年版との違いを出したいために改変されたのだろうか。

 

 原作ということで言えば、冒頭のポアロの戦争体験のエピソードは原作にあるものなのだろうか。子供の頃、ホームズには及ばないもののポアロものも結構数多く読んだつもりだが、そんなエピソードあったかなぁ。

 鑑賞後にネットで本作をチェックをして、ポアロが歌手サロメに惚れていた、という設定なのを知ったが、そのために冒頭のポアロと婚約者のシーンを入れる必要があったのか?

 

 トリックについて。1978年版を見た際に一番驚いたのがリネット殺しのトリック。それとともに印象に残っているのが、ラストでポアロが犯人二人を追い詰め行くシーン。ゆっくりと犯行手順を説明、そこに使用された小道具の数々のことも指摘し、最後は嘘までついて犯人を追い詰めたのではなかったっけ?本作はラストの謎解きがやけにあっさりしていたように感じたのは気のせいか。ここが一番の見せ場だったのになぁ。赤い絵の具やスカーフがなくなるシーンなど伏線として丁寧に描いていただけに、謎解きのあっさり感がちょっと残念だった。

 トリックといえば、「オリエント急行殺人事件」で私が勘違いしていた、犯行時にポアロが眠らされていたのは、やはりこちらの「ナイル」の方だったのね。確認できました(笑

 

 そうそう、1978年版はラスト、ポアロの粋なセリフで終わるのだが、それもなかったにも残念。「女の大いなる野望は男に愛を吹き込むこと」。あぁ久しぶりに聞きたかった。

 

 ここまで書いてくると、やはり1978年版をもう一度見たくなってしまったなぁ。