日の名残り

●046 日の名残り 1993

 イギリス貴族の家に務める執事の話。

 彼の元に昔一緒に働いていた女中からまた働きたいという手紙が来る。彼の回想が始まる。彼は自分の父と共にその屋敷で働いていた。女中頭は父の高齢が故仕事の負担を軽くすべきだと主張するが、彼は認めない。そんな中父親がトラブルを起こす。翌週家で大事な会議を控えた主人である貴族からも同じよう忠告を受ける。

 迎えた会議の日、父は倒れ、晩餐会の最中に亡くなる。仕事で忙しい彼は父親のそばにいることを彼女に頼む。そして仕事はしっかりとやり遂げた。

 主人の行った会議は第一次世界大戦後のドイツを支援するもの。アメリカからの客人は反対する。しかし時が経つにつれドイツは勢力を増し、ユダヤ人が敵視され始める。屋敷で雇われたユダヤ人も主人の命令で解雇されてしまう。

 彼女からこの問題で非難される彼だったが口を閉ざしたまま。またユダヤ人たちの替わりに雇った娘が屋敷の仲間と結婚するため辞めたいと言い出す。目をかけていた彼女は落ち込み、彼に救いを求めるが彼は応じない。その後彼女は昔の仲間で元執事から求婚される。その事実を彼に伝えるが、彼はいつも通りの言葉しかかけない。

 最後にまた一緒に働くために彼女を迎えに行く現在のシーンへ戻る。しかし彼女は直前に娘の妊娠が発覚し仕事をすることを辞退する。その時の彼の表情があまりに切ない。ラスト前、二人が歩きながらする会話が泣かせる。バスでの別れのシーンも。

 屋敷の中でだけ生きてきた執事が政治への意見や恋愛感情など自分自身を出さずに過ごすその一人の男の物語。