夕陽の挽歌

●249 夕陽の挽歌 1971

 (序曲)

 アールバー牧場の風景。多くの男たちが働く牧場の仕事が終わり、皆帰ってくる。馬から降りる際に一頭の馬が暴れ、それが元でバーニーが亡くなる。牧場主のウォルターはロスとフランクにバーニーを街へ運ぶよう命じる。

 ロスとフランクは親子ほど歳が違う二人だが話があった。街への道中、若いフランクはバーニーの事故のことから、ロスに人生や結婚、将来の夢などの話をする。二人は街の酒場で飲んでいたが、そこへ羊飼いのハンセンたちと喧嘩になる。二人はなんとか牧場へ帰るが、喧嘩したことがウォルターに知られており、酒場で店を壊した分の弁償をさせられることに。ウォルターは保安官事務所の牢に入れられていたハンセンの元へ出向き、羊を牧場に入れたら命はない、と警告する。

 仕事に戻ったロスとフランクだったが、フランクはロスが50歳になるのを知り、あと25年も牛追いはしたくない、金持ちになり牧場を持ちたいと話し、今晩銀行強盗をしようとロスを誘う。

 家でウォルターは二人の息子、ジョンとポールと仕事の話をしていた。兄ポールは慎重な性格、弟ジョンは単純で軽率な性格をしていた。3人はロスとフランクが街へ出かけるのを見かける。

 ロスとフランクは銀行で働くジョーの家へ行く。そこでジョーの妻と赤ん坊を人質にし、ロスとジョーが夜銀行へ行き、金を盗むことに。フランクはジョーの家で彼の妻とメイドを見張ることに。

 その頃ジョンはロスとフランクが売春宿に行ったと勘違いする。新しい売春婦がくるものだと思ったジョンは、ポールと共に街へ出向く。

 ロスはジョーを銀行に行かせ、自分は酒場で待つことに。しかしジョーの馬が銀行前に停めてあるのに気づき、売春宿前に停め直す。そして銀行へ行くと、ジョーが拳銃を持ってロスを脅す。しかしロスは冷静に自分を撃ったら、フランクがジョーの妻を殺すだろうと話す。ジョーは大人しくロスの言うことを聞くことに。

 その頃、ジョンが売春宿前にフランクの馬が停まっていることに気づき、売春宿へ乗り込み、女将と口論になる。女将は新しい女は来週来る、フランクも来ていないと話すとジョンは外へ出る。その時、ロスとジョーがいることに気づき、話しかけて来る。ロスはフランクが売春宿にいると説明、ジョンは売春宿に戻り、拳銃を乱射する。保安官が出て来て、ジョンとポールを止める。

 ロスとジョーは家に戻るが、家の外にフランクがいて、クーガーがうろついている、と警告する。クーガーはジョーの家の犬を噛み殺していた。クーガーを撃ち殺すが、代わりにジョーの馬が噛み殺されてしまう。ジョーの家へ戻り、ロスはジョーに、牧場の給料分と手伝ってくれた礼として3000ドルを渡す。ジョーは拒否するが、ロスは金を置いて外へ出る。ロスとフランクが去ったのち、ジョーの妻は3000ドルの件を保安官に話すのはやめて、自分たちのものにしようとジョーに提案する。しかしジョーはそれは盗みだと拒否するが、妻は3000ドルを貯めるのは大変なことだと話す。

 牧場にフランクの馬だけが戻って来る。それを見たウォルターは街へ向かう。街ではジョーが銀行強盗にあったことを保安官に報告していた。ウォルターはロスとフランクが強盗をしたことで、顔に泥を塗られたと思い、二人を探し出すように息子二人に命じる。

 ロスとフランクはメキシコを目指していた。1頭の馬に二人が乗っていたため、ロスの知り合いのベンの家へ行き、ラバを買うことに。ついでにジョーの家からフランクが連れて来た生まれたての子犬にミルクもあげることに。ベンは親猫に子犬を預けるが、ラバが欲しければ子犬を置いて行くように要求する。

 ジョン、ポール兄弟と保安官はロスたちを追跡する。しかし州を越えることがわかり、保安官は帰ることに。ポールも帰ろうとするが、ジョンは父親の命令は二人を連れ戻すことだ、と一人でも追跡をしようとする。ポールもジョンについて行くことに。

 ロスとフランクは荒野で野生の馬の群れを見つける。その中の一頭を捕まえ、慣らすことに。

 (間奏曲)

 ロスとフランクはベンソンの街へ着く。

 その頃、アールバー牧場にハンセンが羊を連れて来ていた。しかしウォルターたちがそれを見つける。ハンセンは仲間と迎え撃とうとするが、仲間たちはハンセンを残し逃げようとする。ハンセンは仲間を撃ち殺すが、ウォルターたちに撃たれてしまう。しかし最後の一発でウォルターを撃ち殺し、二人とも死んでしまう。

 ロスは街で女を買い、フランクはポーカーに興じる。ポーカーが大勝負となり、フランクは勝つ。しかし負けた男たちが銃を抜き、銃撃戦となり、相手を倒すがフランクもケガを負ってしまう。銃声を聞き、女の元にいたロスも駆けつけるが、フランクの味方をしたバーテンまで撃ってしまう。二人は街を出ることに。

 その後、ジョン、ポール兄弟がベンソンの街に着き、保安官と行動を共にする。フランクは正当防衛が認められそうだったが、ロスがバーテンを撃ったために保安官も二人を追跡するのだった。その頃、ジョン、ポール兄弟に父親の死が知らされる。

 ロスはフランクの体内に残った銃弾を取り出す。ジョン、ポールたちはまたも州境に来たため、保安官たちと別れ、兄弟のみで二人を追うことに。フランクのケガの状態はどんどんと酷くなっていった。そしてとうとうケガが元で死んでしまう。ロスはフランクを埋葬し、一人でメキシコへ向かう。

 しかしジョン、ポール兄弟に追いつかれてしまう。撃たれて落馬したロスは、ジョンと取っ組み合いになり、ライフルでジョンを殴ろうとした際に、ポールに撃ち殺される。死の直前、ポールはロスに謝罪し、ロスもポールに謝る。ジョンはロスの死体を持ち帰ろうとするが、ポールは一人ジョンを無視して帰ってしまう。

 

 いつも通り、タイトルも知らなかった初見の映画。とても不思議な映画だった。

 不思議な点その1

 『親兄弟の敵討ち』が出てくるわけでもなし、『街を牛耳る悪者』が出てくるわけでもなし、『派手な銃撃戦』があるわけでもない。ごくごく小さなエピソードが繋がって行く、という感じ。将棋の解説に「細い攻めをうまく繋いで〜」というのがあるが、まさにそんな感じで映画が進行して行く。銀行強盗→子犬→ラバ→野生馬と続いて行く。まるで二人のロードムービーのようだが、それを狙っている感じもしない。

 その2

 映画開始時に「序曲」として数分間の間奏が入る。昔の長い映画にあった「インターミッション」が映画最初に来た感じ、と言えば良いだろうか。なんでこんなことをしたのか。インターミッションでは、長いのでそれまでを振り返る&休憩、という意味も込めて、画面にそれまでの印象的なシーンが流されるが、この映画では、『まだ見ていない』シーンが「序曲」の間に流される。どうしろと(笑 でインターミッションもあるし。よくわからない。

 その3

 銀行を襲った二人組が逃亡する映画、なので、悲観的なラストが予想でき、まぁその通りになってしまうのだが、ラストシーンで『ロスを撃ったポールが、死んで行くロスに謝罪する』というのがよくわからなかった。同じ牧場で働いていた仲間だったからなのか?ジョンは二人組を追跡する気満々で、父親が死んだ後もしつこく追跡するし、死んだロスも連れて帰ろうとするぐらいなのに対し、ポールはそこまで二人組を捕まえる気がなかったということなのか?弟ジョンがロスに殴り倒されそうになり思わず撃ってしまった、ということなのか?

 その4

 途中にあるエピソードで結末が明示されていないのだが、銀行員ジョーが家に戻り、ロスが彼に3000ドルを託すのだが、それを見たジョーの妻がそれを自分たちのものにしようと言い出すシーンがある。結果がどうなったのかは明示されない。

 観ている途中では、ロスの人の良さを表すシーンとして3000ドルを置いていくのだと思ったが、それだけならば、このジョーの妻が言い出すエピソードはいらないはず。このシーンは何?と考えると、もう一つきになるシーンを思いついた。それは牧場主ウォルターと羊飼いハンセンの闘いで二人が相撃ちになるシーン。何か意地の張り合いの結果が招いた悲劇に見えるこのシーンとジョーの妻のシーンは両方とも、人間の業について語りたかったのかと思えてくる。フランクが銀行強盗を言い出し実行してしまうのも含めて、そういうことなのかなぁ。そう考えると冒頭でロスがフランクに人生とは、と語るシーンもそう思えてくる。

 この映画もアメリカン・ニューシネマに数えられるのかしら?ちょっと不思議な映画でした。