夏燕ノ道 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●夏燕ノ道 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第14作。季節は春、4月17日の日光社参を中心に。日光社参前、今津屋への旗本森川借金申し込み、日光社参開始、弥助(長崎道中で知り合った薬売り)との再会、家基の共をしての日光行き〜御鷹匠野口・佐々木玲圓、雑賀衆との闘い、出納方組頭伊沖への叱責、例幣使への叱責、くノ一霧子とおてん。

 これまでこのシリーズは一冊でほぼ一つの季節を描いてきたが、この14作は日光社参を描くため、数日間の出来事で一冊となっている。ただ当然のことながら、大きな出来事が目白押し。

 メインは将軍家治の世子家基暗殺を企む雑賀衆との闘いであり、弥助や鷹匠や佐々木道場師範の玲圓も活躍する。また家基と磐音が道中を共にし、様々な会話を楽しむ。特に家基が磐音に奈緒のことを尋ねる場面はここまでのシリーズ中で最高の見せ場か。

 11作でも書いたが、磐音が将軍に知られていたが、本作ではその世子家基と会話までする仲になる。将軍との会話はまだだが、その分磐音の父正睦が将軍と謁見することに。話がどんどんと大きくなってきている。

 また田沼の勢力としての雑賀衆も登場、そのくノ一霧子が磐音たちの仲間になることも予想され、新しい仲間がどんどんと増えていっている。

 日光社参も本作で無事終了。一冊をかけての話だったが、それに十分見合う話だった。