縛り首の木

●379 縛り首の木 1959

 1873年モンタナ州黄金の道を金鉱目指し多くの男たちがやってくる。医師ジョーフレイルもその一人だった。彼は空き家を買い診療所にすることに。

 金鉱で男が金を盗もうとしたところを山師フレンチーが見つけ銃で撃つ。怪我をした男は逃げるが金鉱の多くの男たちが彼の後を追う。フレイルは男を助け手当てをする。男はルーンと名乗るが、フレイルに反抗的な態度をとる。フレイルは怒り、いつでもルーンを絞首刑にする証拠、体から取り出した銃弾を見せ、自分のところを手伝うように話す。

 ルーンは金鉱の皆に診療所が出来たことを宣伝して廻る。金鉱には信仰治療者のジョージグラブがおりフレイルの診療所が出来たことを疎ましく思っており診療所まで来て皆にフレイルのことを信じるなと話す。しかしフレイルに追い払われる。

 夜フレイルは街でカードを楽しんでいた。大きな勝負になり相手は金鉱の採掘権をかけてくる。フレイルは受けてたち見事勝負に勝つ。負けた男はフレイルに「その金でイリノイ州に帰りまた家を焼くのか」と話す。怒ったフレイルは男を殴り倒し銃で撃とうとするがやめて店を出る。フレンチーは男に事情を聞く。

 フレイルの態度を見たルーンはフレイルをなじる。フレイルはルーンに明日から金鉱ほりもすると命令する。

 山で駅馬車が襲われる。馬車は崖から転落してしまう。駅馬車の御者が街に来て助けを求める。フレイルは彼の治療のため呼ばれる。男たちは馬車に乗っていた女性を探しに捜索隊を組む。ルーンも隊に参加する。馬車は見つかるが女性は見つからず捜索隊は一夜を山で過ごす。その際街で雑貨屋を営むフラーンスからフレイルの昔話を聞く。フレイル(「儚い」という意味)は本当の名ではなく、テンプルという医師で豪邸に住んでいたが、ある日その家で男女が殺されその家を医師が焼いた、ということだった。

 翌日山でフレンチーが女性エリザベスを見つける。彼女は酷い日焼け状態だった。フレイルが診察、日焼けによる火傷と脳震盪、目もやられていた。フレイルは診療所に連れて帰り治療を続ける。エリザベスはだんだんと良くなり、アメリカに来た理由をフレイルたちに話す。

 フラーンス夫人など街の女性たちはエリザベスが来たことを風紀が乱れるといい、あまり喜んでいなかった。

 ある夜フレイルがカードで遊んでいるとフレンチーが皆から金を借りようとしているのを目撃する。誰からも金を借りられなかったフレンチーはエリザベスのいる家へやって来て金を借りようとする。そこへフレイルが帰って来てフレンチーを追い出す。彼は合図用の鐘のロープを切っていたのだった。フレイルはルーンにエリザベスと一緒の家で寝るように指示する。フレイルは酒場へ行きフレンチーと殴り合いの勝負をし、二度と家に来るな、今度来たら殺すと言い放つ。

 エリザベスの目の包帯を取る日がやってくる。視力は徐々に回復して行く。それでも怖がる彼女にフレイルは恐れることはないと話す。彼女は視力を完全に取り戻し、一緒に駅馬車に乗っていた父親の墓参りまでできるようになる。

 エリザベスはフレイルたちの夕飯を作るまでになった。しかしフレイルはカードに興じて家に帰ろうとしなかった。ルーンはそんなフレイルを見て怒る。夜遅く帰ったフレイルをエリザベスが待っていた。フレイルに愛を告白するエリザベスだったが、彼は彼女に街から出て行くように告げる。しかし彼女はフレイルの言葉に反抗する。そんな二人を見てルーンもフレイルの元を去ることに。

 翌日ルーンとともにエリザベスは街に皆に挨拶して廻る。彼女はフラーンスの店に行き、家宝のブローチを担保に採掘用の金を貸して欲しいと頼む。しかしブローチは安物だったため、フラーンスはフレイルにそのことを伝える。フレイルは金を貸してやってくれと頼む。フラーンスは金はフレイルから出ることを承知でエリザベスにはそのことは内緒で金を貸すことに。

 エリザベスとルーンは、フレンチーを仲間にして金鉱を掘り始める。しかし一月掘っても成果は上がらなかった。そこへ回診帰りのフレイルが顔を見せる。エリザベスは喜んで彼を迎える。しかしエリザベスに気があるフレンチーは面白くなく、フレイルが去った後にエリザベスに手を出そうとして拒否される。エリザベスは今日からは夜街に帰ると言い出す。

 街に帰ったエリザベスはフラーンスの店で金を借りようとするが、フラーンス夫人はエリザベスの使っている金がフレイルから出ていることを暴露し、彼女のことを商売女と言って非難する。

 エリザベスはフレイルの家に行き彼を非難する。そして自殺した女性のことを言い出す。フレイルは自分の妻と弟のことだとだけ話す。詳しい話を聞きたがるエリザベスだったが、フレイルはそれ以上は語らなかった。

 金鉱堀を続けるエリザベスたちだったが、大雨に見舞われる。そのうち大きな音がして大木が倒れ金鉱掘りの樋が壊される。しかし大木の根元から金が見つかる。大喜びする3人。金を持って街へ凱旋し、フレンチーは街の皆に酒をおごる。街は大騒ぎになる。フレンチーはフレイルが事故対応で他所へ出かけていることを知り、エリザベスの家へ行き彼女を襲う。そこへフレイルが戻って来て、フレンチーを撃ち殺す。それを見ていた住民は人殺しだと叫びフレイルを縛り首にしようとする。エリザベスは持っていた金(きん)や採掘の権利書を放棄すると言ってフレイルを助ける。住民たちは金を奪い合い大騒ぎになる。その間にルーンはフレイルを助け出し、フレイルはエリザベスの元にひざまづく。

 

 主人公グレゴリーペックの人間性がよくわからない設定でスタートするので、しばらくはそれを追いかける展開になる。金泥棒の若者を助けたと思えば、治療費も取らずに?女の子を治療し、良い人間なんだと思わせておいて、夜はカード三昧、しかも過去の話を持ち出した相手を殴り倒し、さらに銃まで抜く始末。若者ルーンならずともこの人は何者だ?と疑いたくなる(笑

 しかし映画は新たな女性の登場で新展開。エリザベスを懇切丁寧に治療するが、回復した彼女から好意を寄せられるといきなり冷たくあしらうようになる。

 ペックの人間の二重性を観せておいて、エリザベスとのやりとりでやっと真相が語られる。妻と自分の弟との不義理で人間不信になっていたのね。

 

 もう一つ。医者として金鉱に来たかと思っていたが、途中のフラーンスの話にもあるように、ペックは昔から金鉱周りで仕事をしていた男のようだ。西部劇で金鉱モノといえば、このブログでは「黄金」や「アラスカ魂」などで、金(きん)に心を奪われる人間の怖さを観ている。この映画でもラストの大騒ぎは怖い。フレンチーが街に戻って来て皆で酒を飲むまではまぁよくある話と思いきや、男たちの馬鹿騒ぎは徐々に尋常でなくなって行く。火をつけて廻る男たちがいる一方で、バケツリレーを行う住民もいるのが救いか。さらにエリザベスが金を放棄したところでの男たちの騒ぎ方も狂っている。

 

 最後に気がつくこの映画の面白い点は歌詞つきの主題歌。冒頭でも流れるがラストになり、映画のストーリーそのままの歌詞だったことがわかる。なるほどね。それでこのタイトルなわけか。