ダイヤルMを廻せ!

●390 ダイヤルMを廻せ! 1954

 トニー、マーゴ夫婦の元に推理作家マークがやってくる。トニーはテニス選手だったがマーゴのためにテニスを辞めていた。しかしマーゴはマークと不倫の仲。マーゴはマークからの手紙を1通失くしてしまっており、それを元に脅迫されお金を取られていた。その夜3人で芝居に出かける予定だったが、トニーは仕事のためにいけないと言いだし、マーゴとマーク2人で行くように勧める。

 2人が外出した後、トニーは車を買う約束をしその持ち主であるスワンを呼び出す。しかしトニーはスワンに車の話はせず、大学の同窓であると言い出す。そして妻マーゴが不倫をしていることを話し出し、さらにスワンのことを調べ上げていること、スワンがヤバい仕事をしていることを話す。帰ろうとするスワンに、トニーはスワンが人殺しをしたことも知っていると話し、1000ポンド払うので妻を殺してほしいと頼む。トニーは明日の晩自分と不倫相手マークが出かけ留守の間に、この家に忍び込み、23時に電話をするので、それに出るために起きてきた妻を絞め殺してほしい、無事済んだら電話で合図をしてほしいと頼む。心配するスワンに、泥棒に仕業に見せる手立てや家に入るための鍵の隠し場所などを伝える。

 翌日トニーはマークと出かける。妻の鍵を奪うのに苦労するがなんとかスワンとの打ち合わせ通りに事を運ぶ。深夜スワンが家に忍び込む。トニーの時計が止まっていたため若干時間が遅れるが打ち合わせ通りトニーは電話をかける。電話に出たマーゴをスワンは絞め殺そうとするが、机上にあったハサミでマーゴがスワンを刺し、スワンは死んでしまう。電話に出たマーゴに慌てたトニーだったが、なんとか取り繕い急いで家に帰る。

 トニーは計画が変わってしまったが、スワンの死体のポケットから鍵を取り出しマーゴのバッグの中へ入れることに成功、マーゴの計画殺人とするために、犯行に使われたストッキングを机上に隠すなどの工作をして警察を迎え入れる。

 翌日担当のハバード警部がやってくる。警部は二人から事情聴取をするが、スワンの靴の状態からスワンが窓からではなく玄関ドアから入ってきたことを告げる。そこへマークがやってくる。警部はトニーが席を外した際に、マークとマーゴにスワンの死体から二人の手紙が出てきたことを告げる。警部はマーゴが手紙を元に脅迫されていたためにスワンを殺したと推理していた。

 スワンの裁判が行われ、死刑判決が下る。

 家に帰ったトニーの元をマークが訪ねてきて、明日死刑になるマーゴを救うためのストーリーを考えてきていた。それはトニーがマーゴを殺そうとするというものだった。しかしトニーは相手にしなかった。その時警部がやってきたためマークは奥の部屋に隠れる。別件でトニーが最近現金払いがよくなったことを調べにきていた。トニーはドッグレースで勝った金だと言うと警部は帰ろうとするが、最後に青いカバンのことを尋ねる。トニーはタクシーに置き忘れたと話すが、マークは部屋に青いカバンがあるのを見つけカバンを開ける。そこには多額の現金が。マークはこの金こそがトニーがスワンに殺人を依頼した証拠だと言うが、トニーはマーゴから隠しておくように言われたと話す。マークは諦めて帰って行く。警部も帰ろうとするが、なぜかトニーのコートと自分のコートを入れ替えて帰って行く。

 二人が帰ったのち、トニーは出かける。それを見た警部とマークはトニーの家へ。そこへなぜかマーゴが警官に連れられて家に戻ってくるが、鍵が開かずには入れないため庭を回って入ってくる。不思議がるマーゴとマークに警部が自分の推理を話し始める…

 

 これまたヒッチコックで有名な作品だが今回が初見。いやぁ面白かった。まさに倒叙ミステリーの傑作。

 倒叙といえばコロンボだが、この映画ではコロンボの犯人よりもはるかに、犯人の計画が丁寧に描かれる。犯行に及ぶのは別人のため、計画をしっかりと伝えなくてはいけないので、丁寧であることに無理がない。

 でなぜか不倫相手が推理作家で、これから、と言う時に言うセリフが、「(完全犯罪=)現実は小説のようにうまく運ばん 決して」。その通りに計画に邪魔が入りまくり(笑 妻の鍵はうまく盗めなかったり、妻が排出しようとしていたり、自分の時計が止まっていたり。さらには殺人を依頼した人間が妻に刺殺されちゃったり(笑

 それでもトニーはめげない。どんな場合も慌てず見事な嘘でごまかす。まるで「見知らぬ乗客」のブルーノのよう。妻殺しのはずが、いつのまにか妻を殺人犯に仕立てることに成功している。

 そして出てくる警部。見事にトニーの策略にはまったかに見えたが、見事にトニーの裏を書く。そして絶対的証拠となる鍵のありかをトニー本人に自白させてしまう。

 

 いやぁ見事なオチ。死刑実行前日に、というのは流石に無理筋だと思うが、トニーの油断を誘うという意味では仕方なしか。さすがヒッチコックという1本かな。