源氏物語 解剖図鑑 佐藤晃子

源氏物語 解剖図鑑 佐藤晃子

 源氏物語全54帖を見開き2ページを使い解説。右ページにはあらすじ、解説はもちろんその帖の代表的な源氏絵をイラストで紹介しその見所もポイントで説明。左には、その帖に関する平安時代の習慣、考え方、登場人物の関係図などがイラスト入りで紹介されている。

 

 源氏物語関連本はこれで4冊目。

 同様な解説本として「錦絵で楽しむ源氏絵物語」を最初に読んだが、あちらは正統な源氏絵と各帖のあらすじ、和歌の3つで構成されているのに対し、本作はあらすじを非常にコンパクトにまとめ〜その長さは文庫本の裏表紙の解説程度〜、さらに和歌の紹介はカット〜何作かは紹介されている、その分関連する事象をイラスト付きで事細かく解説しているのが特徴。

 この解説(左ページ)がことの外わかりやすく、これまで読んだ作品の中で最も良かったと思う。解説本としては「カラダで感じる源氏物語」も読んだが、あちらは全てが文章で構成されているのに対し、本作はイラストで解説しているため、当時の家屋や家具、服装や髪型、人間関係図などは圧倒的に本作の方がわかりやすい。

 また用語解説や登場人物などについても、一度解説したものやこの先解説するものに対し、その言葉の後に参照ページが記載されているのも嬉しい。読み進めて行くうちに忘れてしまうことが多いため、このシステムは非常に役に立った。さらに巻末には同様に言葉の記載ページ一覧があり、源氏物語本編を読み進めるのに本作は脇にあると非常に便利なのでは、と思う。

 もう一つだけ。

 先にあげた既に読んだ2作でも触れられていたと思うが、数多くいる女性の登場人物たちの気持ちについて本作では重点的に触れていると思う。源氏物語は男性の主人公が数多くの女性に手を出す話(笑 だが、その時その主人公のそばにいた女性の気持ちが結構リアルに説明されている。源氏物語は登場人物が多いため、その関係性を理解するだけでこちらの理解が止まってしまう場合が多いが、これだけ劇的に変化して行く男性の気持ちを女性がどう受け止めていたかと理解しなくては、源氏物語の本当の姿は見えてこないのかもしれない。

 ちなみに、最終段で書かれる「二人の男性が同じ一人の女性を好きになってしまう話」について。この関係性はこのブログでもよく取り上げる西部劇の定番パターンとまったく同じだと気付いた。1000年前から人間のやっていることは変わらないんだね(笑

 

 本作唯一の弱点は、あらすじの分量が少ないため、これだけを読んだだけでは、本編のストーリーがわかりにくい、というところだろうか。つまり源氏物語をこれから読もうとしている読者にとっては、最初の解説本とはしない方が良いのでは、と思う。