書籍紹介文より
『源氏物語』はエロ本である。どんなにエロティックか、そしていかに現代的であるかをあますところなく暴きだす、気鋭の古典エッセイストの『源氏物語』論。「病気好き」「ブス好き」「コンプレックス」だらけの男たち、「ストレス過多」で、「拒食症」で、その中で自己を見出していく女たち。当時の時代背景、経済事情まで解説し、さらにオナニーにも使えると喝破する。
本作は以下の4章から成る。
第1章 感じるエロス
第2章 源氏物語のリアリティ
第3章 五感で感じる源氏物語
第4章 失われた体を求めてー平成の平安化
「錦絵で楽しむ源氏絵物語」に続き、源氏関連2冊目。次の作品を探していた時に、表紙の絵が伊藤理佐さんだったので気になって内容を調べてみた。1冊目で大雑把にあらすじを読んだので、今度は内容の解説を、と思っていたが、上記の紹介文にもあるように、源氏物語を「エロ」だと決めつけているのが面白く、思わず選択。
1章では、なぜ源氏物語がエロなのかを解説。病気の女性、死んだ女性、果てはブスにまでエロを感じる源氏物語の特殊性を述べている。
2章では、源氏物語のリアリティについて語る。登場する女性の外見の描写が細かい事を指摘、そこからそれまでの小説とは異なる登場人物たちのリアルさについて述べる。それは男性も女性も、である。さらに、主人公である光源氏のコンプレックスについて語る。そしてコンプレックスを抱いているのは光源氏だけでなく、源氏物語の登場人物のほとんどがそれを抱えているという指摘。これが物語にリアリティを生んでいるのだと。紫式部の言葉も紹介し、いかに物語の著者がリアリティにこだわっていたかも解説する。
3章では、リアリティのあるエロについて、五感にこだわって解説。視覚、触覚、聴覚、嗅覚。物語の中でどのようにそれぞれの五感が描かれているかを語りつつ、時代設定(平安時代)での習慣なども紹介、セックス=見る事だった、という事を教えてくれる。最後にあまり源氏物語に登場しない味覚についても。ここでは、食事を拒否する女性について説明し、それが死につながって行く理由を述べている。
4章では、源氏物語の描かれた平安時代と、本作が書かれた平成との比較。それらが非常に一致している事を解説している。
読み終わって1番の感想は、源氏物語を読むのに当たって、2冊目に選択する本ではなかったかも、という思い(笑 あまりにぶっ飛んでいて、源氏物語に対する感覚が全く変わってしまった。この本の通りならば、およそ高校生が学習するのにふさわしい内容ではないではないかと思ってしまう。自分にとっては、2冊目が本作で逆に良かったことになるかもしれないが。
一つだけ気になった事を。本作著者の文章表現。文末を「〜だが。」で終わらせる事が非常に多い。その表現が的確な箇所もあるが、多くはちょっと首をひねることが多かった。著者のお気に入りワードなのかもしれないが。
1冊目に比べるとだいぶ源氏物語に対する自分の中のハードルは下がったのは間違いない。引き続き解説本を読んでみたいと思う。
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