グリーンブック

●563 グリーンブック 2018

 1962年アメリカ。クラブコパカバーナで働いていたトニーは店の改装休業のため、新たな仕事を探していた。知り合いから医者が探していると教えられた仕事は、黒人ピアニスト、ドンの運転手兼雑用係だった。トニーはその仕事を断るが、ドンが後日改めて仕事を依頼してきてトニーは引き受けることに。

 ドンは8週間黒人差別が残るアメリカ南部を周るツアーに行くことになっており、トニーはその運転手を勤めることになる。トニーは黒人専用のホテルが記載されたグリーンブックを渡される。

 乱暴で言葉使いが悪いトニーをドンは嗜めつつ、二人のツアーは続く。ドンのピアノを聴いたトニーは彼の才能を認め、その話を受け入れて行く。ある日ドンが一人で入ったバーで黒人差別を受ける。トニーは知らせを受け彼を助けに行く。またある時にはゲイであるドンが警官に逮捕されるが、トニーは賄賂を使ってドンを釈放させる。賄賂を使ったことに怒るドンだったが、ついには警官に不法に逮捕されてしまい、知り合いであるケネディに連絡することで釈放をしてもらうことに。

 一方、南部での黒人差別はひどく、招待客であるドンでもその場で黒人差別を受けることが多々あった。最終目的地であるレストランでドンは食事をしたいと要望するが、店のマネージャはそれを認めない。トニーに事を一任するが、トニーも店での演奏を拒否する。食事をしていなかった二人は、黒人でも食事ができるオレンジバーとへ向かう。白人であるトニーは変な目で見られるが、店の女性店員に職業を聞かれドンに演奏をするように話す。ドンは店のピアノを引き、バンドと一緒に演奏をし、店の客に受け入れられる。

 全てのツアーが終了し、クリスマスに間に合わせるために、二人は家路に急ぐ。しかし悪天候なこともあり、トニーは諦める。しかしドンが代わりに運転をし、クリスマスの夜、無事トニーは家へ着き家族に歓迎される。ドンは一人去って行くが、しばらく後、ドンがトニーの家を訪れる。驚く家族だったが、快くドンを受け入れる。

 

 さすがアカデミー賞受賞作品、といった感じ。最初相手を受け入れない二人が仲良くなって行くパターンの映画だが、そこに黒人差別がプラスされているのがポイント。

 黒人差別が法として残る時代に、白人が黒人に使われる立場の二人という設定が良い。さらに、トニーは粗野でデタラメなのに対し、ドンが真面目で我慢強いのも。

 伏線が多かったのも見逃せない。ドンがトニーに言葉使いを教えるセリフ、トニーの拳銃所持、そしてドンがトニーに書き方を教えた手紙。どれも後で強烈な回収がある。

 しかしたった60年前にまでアメリカにこんな黒人差別が残っていたとは。知識として知っていたが実情を見せられるとやはり驚く。そして主人公ドンがそれに静かに耐え続けたことも。それが最後のレストランの痛快さに繋がるのだが。

 ラストシーン。トニーが家で無事クリスマスを迎えられたところで終わるのかと思いきや、本当のラストで差別の正直な感情が描かれるのも悪くない。それでも本編中で唯一心からの叫びをあげたドンをトニーの妻が暖かく迎え入れるのが泣ける。