ジュディ 虹の彼方に

●582 ジュディ 虹の彼方に 2019

 ジュディガーランドは少女時代映画に出演しスターとなっていたが、実情は大人たちに強制的に仕事をさせられていた。

 現在。娘と息子とともに場末の舞台に出ることでお金を稼いでいたジュディだったが、定宿であるホテルから支払い滞納で追い出されてしまう。仕方なく親権を争う夫の家へ子供達を預けるが夫からの言葉に怒り、もう一人の娘ライザの家へ行く。そこでミッキーという男性と知り合い仲良くなる。

 子供たちと一緒に暮らすためお金が必要になったジュディは、エージェントにロンドンで仕事を勧められるが子供と離れ離れになるため拒否をする。しかし他に手段のないジュディはロンドンへ行くことに。

 ロンドンでは大歓迎を受けるが、子供時代から服用していたクスリの影響でジュディは情緒不安定な状態だった。練習やリハーサルも拒否し、本番当日も出演が危ぶまれたが、助手のロザリンの助けもあり舞台に立つ。そしてショーは大成功。しかしジュディは眠れない夜を過ごしていた。

 ある時楽屋口にかつてからジュディのファンだという男性2人組が待っていた。ジュディは彼らと食事をともにしようとするが、時間が遅く店はどこもやっていなかった。仕方なく彼らの家で時間を過ごすジュディ。彼らはゲイで世間から認められていなかった時にもジュディの歌に励まされていたと聞いたジュディは感激する。

 ホテルに帰ったジュディをミッキーが訪れる。ジュディは彼に一緒に暮らそうと提案、ミッキーは受け入れる。そしてジュディに新しい仕事をするようアドバイスする。TVのトークショーに出演したジュディは、子供のことを聞かれ不機嫌になってしまう。その日の夜のショーでは観客のヤジに激怒、ショーを台無しに。そんなジュディにミッキーは新たな仕事の提案、実現すれば子供たちと一緒に暮らせると話す。ジュディはミッキーにプロポーズをし二人は結婚する。

 幸せな生活を送り始めるジュディだったが、夫が子供のことで相談にやってくる。子供たちは今の状態を続けたいと言っていると言われたジュディは激怒。ホテルに帰るとミッキーが新しい仕事は先日のショーの出来事を理由に契約できなかったと話す。ジュディは怒りミッキーを追い出してしまう。その日のショーは散々な出来だった。

 ジュディは子供達に電話をする。彼らの思いが夫の言う通りだと知ったジュディはショックを受ける。さらにショーの失敗を受け、ロンドンでの公演もクビになってしまう。ロザリンと最後の食事をしたジュディは、ショーを見たいと頼み舞台袖に。その日の主演者に頼み、1曲だけ歌を歌わせてもらう。大歓声を受けたジュディは、もう1曲over the rainbowを歌う。そしてショーから半年後ジュディは47歳の若さで亡くなる。

 

 これまた何も知らずに観た一本。ジュディガーランドの名前は知っていたし、「オズの魔法使」も観たことはあるが。

 晩年のジュディの生活が描かれる。そこにはかつて大スターだった面影はない。子供たちと小銭稼ぎをしている姿、ホテルからも支払い滞納を理由に追い出されてしまう姿が痛々しい。

 そこからロンドンでの公演に話は展開、そこでハラハラさせながらも大成功することで、ここから良い方向に話が進むのかと思ったが、やはりジュディの状態が尋常ではない。子役時代のクスリの影響だが、所々で挟まれる子役時代の思い出、その時周りにいた大人たちのひどい振る舞いが明かされる。まるでジュディは商品のように扱われる。

 自分の子供時代、TVで夜遅い時間になると小さい子供スターが出演できなかったのを思い出した。あの頃は残念に思ったが、ジュディのような子供を生み出さないための法律だったのね。

 

 劇中ジュディが4曲歌うが、それぞれがその時のジュディの思いと見事にダブっており歌詞が刺さった。しかしジュディと言えばコレというover the rainbowが出てこないと思っていたら、ラストで感動的に歌い上げられる。「オズの魔法使」では、夢見る子供が歌う一曲だったが、本作ラストでジュディが歌うそれも見事に彼女の思いを表していたのに思わず涙してしまった。

 主演のゼルウィガーは、「ブリジット・ジョーンズの日記」の彼女だったのね。全く気づかなかった。アカデミー主演女優賞も納得の一本。