高倉健、最後の季節。 小田貴月

高倉健、最後の季節。 小田貴月

 健さんの養女である著者が前作から4年ぶりに綴った手記。健さん最期の1年について、正月の体調不良発覚から、月単位で入院退院を含めその後の経緯が語られている。

 

 前作を読んでから約1ヶ月。同じ著者の最新作を読んだ。読み終えての感想は非常に複雑なモノである。

 

 正月元旦に発覚した体調不良。ご本人は単なる風邪ぐらいに思っていたその体調が治らず、体重の減少が続き、3月の著者の言葉でやっと病院へ行くことを決意。4月に検査入院することが決まる。

 検査の結果悪性リンパ腫であることが判明、早速治療が開始され4月末には一時退院することができるほどに。5月病院と自宅を行き来する日々。治療の効果で健さんに元気が戻る。しかし6月に入り硬膜下血腫が発覚。7月にその手術をし、完全退院。体重も戻理、定期検査を続ける。8月お盆を過ごしCMの撮影もできるほどに。

 しかし8月末喉の痛みを訴え9月に肺への転移が発覚。体温も上がる。10月に再入院が決まる。外出許可が出る日もあったが、体重の減少が始まる。そして11月。

 

 健さんの最期の1年。正月元旦から異変は始まる。4月の入院から約7ヶ月。11月10日に亡くなるまでのことが詳細に語られる。特に11月に入ってからの健さんの様子は非常にリアルである。「あの健さんが…」と思う言動や最後の言葉などに驚かされる。

 1ファンとして健さんの死を二度体験することになった、などと言うつもりはないが、本作を読んで健さんが本当に亡くなってしまったんだと実感し直したことは否定できない。

 一方で、これほどまでのリアルな最期を文章にすることが著者にとって辛かったであろうことも想像できる。前作を読み終えた時に著者への疑問が湧き上がりそれを書いたが、そのことは今回は少し置いておこうと思う。

 

 4月の入院以降、自宅で健さんが見たとされる3本の映画。「マイ・ボディガード」「八甲田山」「キャプテン・フィリップス」。2本は未見。いつか観なくてはいけない。また健さんの話の中に出てきた森谷監督との仕事のこと。先日「動乱」を早速観た。40年前の若く元気な健さんが眩しい。森谷監督との「無法松の一生」は是非観たかった。

 

 冒頭で書いたが、本作の感想は複雑な思い。前作同様、これが本当に健さんが望んだことだったのだろうかと言う疑問。しかしその一方で、Amazonのレビューで酷評され、著者に対する非難が湧き上がっていることに対しても疑問がある。

 みんなの「高倉健」であったのは確かだが、著者にとっての「高倉健」でもあり「小田剛一」でもあったのも事実。本作が健さんが望んだことかどうかはわからないが、健さんが最後の17年を共にした著者を非難することは健さんが望んだことではないことは間違いないだろう。それだけは肝に銘じておきたいと思う。