舞妓はレディ

●686 舞妓はレディ 2014

 京都下八軒には舞妓が一人しかおらず困っていた。下八軒の万寿楽に鹿児島弁と津軽弁を話す少女春子が舞妓になりたいとやってくるが女将である千春は紹介がないと春子を追い返そうとする。そこにいた言語学者の京野は春子の訛りを直して舞妓にするという賭けを旦那である北野と行うことを提案。京野が後見人となることで春子は万寿楽で修行を始めることに。

 春子は京野の研究室で京言葉を覚えると同時に、稽古事も始める。京言葉を優しく教えてくれる京野に春子はだんだんと惹かれて行く。ある時春子は先輩芸妓の里春とその馴染み客高井とのデートに生粋の京都人のふりをして付き添うことに。しかし高井の言葉に驚いた時に本来の訛りが出てしまう。京野の助手である西野からは、舞妓という仕事の本来の目的や京野も春子のことを思って京言葉を教えているわけではないと言われてショックを受ける。春子はそれが原因で声が出なくなってしまう。

 知らせを聞いた京野は自分も鹿児島出身でなまりで苦労したことを鹿児島弁で春子に語る。万寿楽の女将千春も自分の若い頃の恋物語を春子に聞かせ励ます。その際、万寿楽にいた芸妓が駆け落ちをして出て行ってしまい、そのため母親に言われて万寿楽に戻ってきたことなども話す。その芸妓は春子の亡くなった母親のことだった。

 千春のアドバイスで春子は踊りの稽古を再開するが、師匠にキツい言葉を言われ泣き出してしまう。それがきっかけで春子は声を取り戻す。春子は稽古事や京言葉のレッスンを続け、京言葉をマスターすることに成功する。

 下八軒唯一の舞妓であった百春は30歳を迎え芸妓となることを熱望、女将である千春をそれを認めると同時に、春子を舞妓とすることに。春子は小春と名乗り、初めて客である旦那北野や京野や女将千春、先輩芸妓の前で踊りを披露する。その場で小春がかつて万寿楽にいた芸妓一春によく似ているということが話題となる。小春は一春が自分の母親であることを告白するが、女将千春や先輩芸妓里春たちは皆とっくにそれに気づいていた、皆一春のことが大好きだったと話す。

 小春はお礼に京野の研究室を訪ねる。そこで助手の西野から京野は鹿児島出身などではなく東京出身だと聞かされた小春はそれを京野に確かめる。京野は小春を励ますためだったと謝るが、それを聞いた小春はまた声が出なくなる。慌てる京野たちだったが、それは小春の芝居だった。

 小春が下八軒にきて1年が経ち、お化けが行われる。皆が踊る中、小春は北野から立派な芸妓になったと認められ、京野が賭けに勝ったことを告げられる。小春は京野への思いを言葉にする。

 

 上白石姉の初主演作となる映画。タイトルも知らない一本だったので、見ている途中で初めて本作が「マイ・フェア・レディ」のパロディかと気付いた。

 だからなのだろうけど、劇中で歌と踊りがこれでもか、と披露される。一番最初に歌い出した時にはなんだこれはと思ったが、その時に「マイ・フェア・レディ」のパロディなのかと。

 つまり和製ミュージカルなのだが、ミュージカル特有の悪い部分が全面に出てきてしまっていると感じる。話としては田舎から出てきた少女が舞妓となるために努力するという感動系の話なのだが、途中途中に挟まれるこれらの歌と踊りがその感動の邪魔をしているとしか思えない。「マイ・フェア・レディ」はその辺りが上手くいっていると思う。使用されている歌が映画を別にしても名曲となっているのに対し、本作で使用されている歌は全てオリジナルのようで、聞きなれない歌であるため、ストーリー展開の邪魔になってしまっていた。

 

 それでも主演の上白石姉の歌の上手さはさすがであり、現在様々な映画や舞台で活躍しているのも頷ける。もちろん劇中の習い事の稽古が徐々に上手くなっていく様も見事であり、相当苦労したんだろうと思われる。

 また春子が漬物嫌いであることが伏線であることや春子の母親のことが最後に明かされる点などストーリーもよくできているし、竹中直人による「Shall we ダンス?」のパロディなどコメディ部分もしっかりしているなど、他の点が良かっただけに本家に合わせてミュージカル仕立てにした点だけが惜しかったと思う。

 

 本作とは関係ないが、「舞妓さんちのまかない」という漫画を今読んでいる。漫画を読み始めた際は、こんな狭い世界をよく漫画のテーマに持ってきたなぁと感心したが、漫画の3年も前にこんな映画があったのね。周防監督は「Shaa we ダンス?」といい、本作といい、目の付け所が見事。