カウボーイ&エイリアン

●172 カウボーイ&エイリアン 2011

 男が西部の砂漠で目覚めるが、記憶を失っていた。腹に傷、左腕に見知らぬ腕輪、側には女性の写真が落ちていた。彼は街に向かう。牧師に腹の傷を手当てしてもらう。

 街では街の実力者ダラーハイド大佐の息子パーシーが酒場の主人と揉め事を起こしていた。記憶を失っていた男はパーシーを挑発、パーシーは間違って保安官補を撃ってしまい保安官に捕まる。

 記憶を失った男は酒場にいた。彼にエラが声をかけてくる。そこに保安官がやってくる。男はお尋ね者の時ジェイク・ロネガンだった。彼は逮捕される。連邦保安官がきて、パーシーとジェイクを連行しようとする。そこへ大佐が現れ息子を取り戻そうとするが、その時UFOが現れ街を爆撃、住人をさらう。さらわれた中にはパーシーや酒場の主人の妻もいた。ジェイクは腕輪でUFOの飛行隊を撃ち落とし、混乱はおさまる。

 ジェイク、大佐などは翌朝さらわれた住民を探すために探索隊を組み出発する。ジェイクは廃屋でかつての女がUFOにさらわれたことを思い出す。盗んだ金貨を持ち帰ったところ、金貨と女がさらわれたのだった。

 探索隊は砂漠にあった船にたどり着く。周囲800kmに川はないのに船がひっくり返っていた。そこで雨をしのぐ。そこをエイリアンが襲ってくる。

 翌日探索隊はエイリアンの足跡を追い渓谷に入る。そこには盗賊団がおり追い剥ぎにあいそうになるが、ジェイクの知り合いだった。ジェイクはこの盗賊団の昔のボスだったが、今のボスは違っていた。またジェイクは盗んだ金を女のために持ち逃げしたことを恨まれていた。エラがジェイクの女だと勘違いされ撃たれそうになった時にジェイクは腕輪で反撃、盗賊団から探索隊は逃げる。盗賊団が追ってくるが、そこにエイリアン達が襲ってくる。エラが飛行隊にさらわれるが、ジェイクは馬から飛行隊に飛び移り彼女を助ける。しかしホッとしたのもつかの間、エイリアンが二人を襲い、エラは重傷を負う。彼女を連れて皆のところにジェイクは戻るが、彼女は死んでしまう。その時彼らはアパッチに取り囲まれ、捕まってしまう。

 アパッチの宴に駆り出され、エラの死体は火に燃やされる。アパッチもエイリアンの襲撃を受けており、白人のせいにされる。その時燃やされたエラが復活する。彼女は他の惑星から来た異星人で、エイリアンたちに自分の星を奪われていた。エイリアンの狙いは金だった。エイリアンと対決しようとするが、居場所がわからない。ジェイクはエイリアンから逃げて来ていたが記憶がなかった。アパッチの薬でジェイクは記憶を取り戻し、エイリアンの居場所が判明する。

 ジェイクは盗賊団の生き残りに声をかけ一緒に戦うこととなる。アパッチ、盗賊団、探索隊が合同で、エイリアンに戦いを挑む。ジェイクはさらわれた住民達を救い出す。エラはジェイクの腕輪を持ってエイリアンの母船の心臓部へ向かう。戦いの最中、エイリアンの母船は飛び立つがエラの活躍で空中分解する。

 さらわれた住民達が戻ってくるが、皆ジェイクのように記憶を失っていた。街はエイリアンが採掘した金で潤い、発展していくと思われた。ジェイクは戦いで死んだこととなり、他の街へ旅立っていく。

 

 西部劇とSFがどう融合するのかと思って楽しみに見た。しかもダニエル・クレイグハリソン・フォード。こりゃすごい、と思ったが…。これはひどい。yahoo映画の星評価が3を切っている映画は久しぶりに見た。

 いろんなエピソードが出てくるので(酒場の主人が奥さんに当たる、大佐は戦争で大勢の部下を死なせている、ジェイクは昔の女の映像ばかり思い出す、大佐に雇われた孤児でアパッチにも認められた若者、等)、あとで回収があるかと思いきや、全くなし。さらわれた人は記憶をなくす、って言うのも上手く使えば使えただろうに。てかなんで人間をさらった(弱点を探すため、と説明はあったが)のに、そのまま生かしておいたの?

 ネタ一発(西部劇とSFの組み合わせ)の娯楽映画としてだけなら見ても良いが、もう見ることはないな(笑

 

将棋エッセイコレクション 後藤元気

●将棋エッセイコレクション 後藤元気

  41編のエッセイ集。観戦記者棋士が書いたエッセイばかり。古いものが多いが、中原加藤の将棋盤の位置での揉め事やタイトル戦の前夜祭の風景が記者の目で語られていたり、「あの」桐谷さんが対局日誌で有名な河口さんの文章に反論していたり、と見所は満載。2010年に書かれた「十年後の将棋世界」は必読。

 

鬼平犯科帳 第4シリーズ #13 老盗の夢

 第4シリーズ #13 老盗の夢

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s4-13.jpg

 蓑火の喜之助は楽隠居をし京都にいたが、妻の墓参りをし寺にお金を納めたのち江戸へ向け旅立つ。

 粂八は店の客に呼ばれる。呼んだのは喜之助だった。仕事の話をする二人だったが、粂八を探しに岡っ引きが来て、粂八は店の外へ出る。その間に喜之助は帰ってしまう。粂八はあとを追うが、どこにもいなかった。粂八は鬼平に報告をする。鬼平は喜之助の手下の行方を探るように言う。鬼平は皆に蓑火の名のいわれを粂八に話させる。

 喜之助は前砂の捨蔵に盗人仲間4人を集めさせていた。喜之助は自分の仕事の掟を話し気に入らなければ出て行ってくれと話す。狙いは三徳屋、仕事の手はずを説明し始めたところへ、間違えて男が入って来た。男は慌てて出て行ったが、盗人仲間の一人があとを追い、戻って来た。すぐに外から「人殺しだ」との声が聞こえ、喜之助はこの仕事はなしだと話し、店を出て行く。

 喜之助と捨蔵は若い奴らのやり方を嘆く。喜之助は昔だったらと話し、奴らに詫びを入れさせ仕事をやり直すと話す。4人の男は自分の親分黒蜘の龍蔵に話をする。龍蔵は喜之助のやり方が古いと馬鹿にする。

 粂八は黒蜘の手下が喜之助を助けていること、喜之助の住処を鬼平に報告する。

 同心たちは喜之助を尾行するが、喜之助はなかなか動きを見せなかった。酒井は1ヶ月喜之助を尾行したが、おかしなところは一切ないと鬼平に報告する。

 三徳屋には盗人仲間の按摩が入り込んでいた。彼は十四日の祝いの席に誘われていた。喜之助と仲間たちは同心たちの裏をかき姿を消していた。鬼平は粂八を呼ぶ。粂八はまさか蓑火がいそぎ働きをするとは思えないと言うが、鬼平は蓑火の書いた筋書きを黒蜘が書き換えるのかもしれないと話し、その筋書きを調べるように粂八に命じる。

 喜之助は仲間たちを集め、三徳屋の見取り図を見せ、今晩の仕事の手順を説明する。最後にこの仕事は蓑火の喜之助の仕事だと言うことを忘れるなと話すが、一人が笑う。そしてそんなやり方は自分たちには合わないと言い出す。そして乱闘となり喜之助は押さえ込まれ、捕らえられる。店を見張っていた粂八が助けに入る。喜之助は粂八が盗賊改方の狗であることに気づく。喜之助は粂八を脅し出て行く。喜之助は仲間が集まっている水車小屋へ行き、斬られながらも仲間たちを刺し殺す。

 翌朝小屋に鬼平が現れる。喜之助の懐からは遺書と思える書付が出てくる。

 

 盗賊蓑火の最期を描く話。丹波哲郎が圧巻だった。鬼平には何人もの盗賊の親分が出てくるが、最も「それらしい」親分っぷりだった。特に助っ人たちの前で見せた目付きや最後の水車小屋での立ち回りなどは尋常とは思えないほどだった。さすがである。

 久しぶりに粂八を見たが、こちらも良い役回りだった。最後に涙するのも良かった。

 ラストが京都で蓑火が金を預けた女が他の客に同じセリフを言っている、というのもなぜか泣ける。女のために江戸へ行った訳ではないが、火をつけられたのはこの女のせいであることは間違いないだろうに。うーん。

 粂八や酒井が蓑火に心を奪われるのを鬼平が諌める。最後の場面での「たかが盗賊だ」というセリフは重い。鬼平の哲学がそこにある。

 

鬼平犯科帳 第4シリーズ #12 埋蔵金千両

 第4シリーズ #12 埋蔵金千両

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s4-12.jpg

 太田万右衛門は下女として雇い入れた下女おていに手をつけてしまった。おていの親元にも挨拶に行き50両を渡す。だがその1年が過ぎ万右衛門は重い病となる。万右衛門は床におていを呼び告白をする。5年前まで黄金の万五郎という大泥棒であるところに千両弱が隠してある、場所を書いた地図を見せ、信州上田の加納屋利兵衛を連れて来て欲しい、利平は自分の息子の行方を知っている、息子に金をあげたいと話す。

 おていは二日後信州へ向かう。

 鬼平は風邪を引く。診察した医者が太田万右衛門の話をする。別の医者宗仙を紹介したところ、宗仙は50両で治すと言い万右衛門もそれをお願いした、そして万右衛門は回復し食欲も戻り、さらに体が元の状態になればもう50両を払うと言った、と話す。鬼平は浪人が100両も払うと言ったことに驚く。

 回復した万右衛門は埋蔵金の話をしたことを悔やむ。加納屋利兵衛は須川の利吉といい、5年前万右衛門の子分だった。二人は盗賊仲間を分け前金惜しさに殺していた。

 おていは農民の姿で関所を越え、野宿をして旅を続けていた。

 万右衛門は利吉より先に埋蔵金を掘り出すために旅立つ。それを盗賊改方がつける。その報告を聞いた鬼平は佐嶋に出張るよう命じる。万右衛門は飯屋で部屋を借りて休むが、おていが利吉に殺される夢を見てまた旅立つ。佐嶋と沢田があとをつけるが、途中万右衛門は馬子を殺し一人で先に行く。万右衛門は山中で馬を降りる。穴倉で金がないことに気づいた万右衛門はそのまま死んでしまう。その報告を聞いた鬼平は一緒にいた下女が事情を知っているのではと考え、女の身元を調べさせる。同心たちがおていの親元に行く。そこにおていがいた。

 佐嶋はおていに万右衛門が死んだことを話す。おていは万右衛門の家を追い出されたとのこと。おていの親がおていが帰って三日も経たずに死んだとは、と話すと佐嶋は三日前に帰った後はどこにいたのかと尋ねる。おていは追い出された後はフラフラとしていたと話す。同心たちは引き上げ、鬼平の感ばたらきも風邪のせいで狂ったかと話す。

 おていは家族が寝ている間に出かけ、隠していた甕を掘り出す。それを佐嶋が見つけ甕の中を調べると金が出てくる。鬼平は報告を聞いて万右衛門の行動を理解する。そして鬼平はおていの取り調べを行う。おていは信州へ向かったが利平のところには行かなかった、万右衛門は死んでしまいそうだし、金を独り占めしても誰にもわからないと思った、と話す。鬼平は正直に喋るおていの話を聞き笑う。おていは牢の中でよく食べよく寝た。鬼平はおていの処分は軽くするつもりだ、おていは女娼に比べれば可愛いものだ、と話す。そこへ酒井が信州から加納屋利兵衛について報告があったと知らせる。利兵衛は十日前に病死しており、家族は利兵衛が盗賊であったことを全く知らなかったとのこと。鬼平、佐嶋、酒井は全ての事情を知り笑う。鬼平がくしゃみをすると久栄が心配するが、鬼平は宗仙先生を呼べと話す。

 

 鬼平には珍しい血なまぐさい話が一切出てこない話(シーンとしてはあるが、過去のことだったり、夢の話だったり)。見た目の悪い女が仕えた男が元盗賊で、その隠し金をせしめてしまう、というだけの話。ある意味、金が人を狂わせる、という寓話にもなっているが、それよりは金に振り回される万右衛門の愚かさが目立つ。そしておていのあっけらかんとした気持ちと行動に鬼平が笑う。小話のような話だった。

 また勘違いかもしれないが、第10話といい、この話といい、佐嶋がちょっと目立つ存在になってきている気がする。普段なら鬼平がしたり話したりすることを代わりにやっているというか。吉右衛門さんが忙しかったのかしら?

 

海外特派員

●171 海外特派員 1940

 ジョーンズは新聞社に勤める型破りな記者。社長の目に止まりヨーロッパに特派員として派遣される。ヴァン・メアというオランダの重鎮でベルギーとの条約調印者からネタを取ってこいとの命令だった。

 ヨーロッパについてすぐに世界平和党主催のヴァン・メアのための昼食会へ招待される。ジョーンズはホテルの前でヴァンと一緒になり、タクシーでサボイホテルの昼食会へ。タクシー内で戦争の危険性などについて聞こうとするが、ヴァンはけむに巻く。会でジョーンズはフィッシャーの娘キャロルと出会う。ヴァンは会を欠席すると連絡して来る。

 社から、アムステルダムでの和平会議でヴァンが重要な演説をするらしいので取材しろと連絡が来る。ジョーンズは会場に向かうが、会場前でヴァンと会う。しかしヴァンはカメラマンに扮した男に射殺される。彼は犯人を追う。偶然通りかかったキャロルに言われ車に乗り込む。運転していたのは同業のスコットだった。

 車を追ったが風車が見える場所で突然と車が消える。ジョーンズは風車の動きがおかしいことに気づき、警察を呼び戻すようにスコットたちに伝える。一人残った彼は風車を調べ、そこにヴァンが捕まっていることを突き止め、ヴァンと話をする。撃たれたのは別人で、ヴァンが暗殺されたと思わせたい連中の仕業だと聞く。ジョーンズは警察を呼びに行き風車に戻るが、そこには浮浪者しかいなかった。

 ホテルに戻ったジョーンズを警察が訪ねて来る。電話に細工をされたことを知った彼は風呂に入ると言って窓から逃げ出し、キャロルの部屋に逃げ込む。ホテル員に連絡しホテルから二人は逃げ出す。

 二人は船でイギリスに向かう。船の中で結婚を誓い合う。

 二人はフィッシャーの家へ。そこにクルーグがいた。彼は風車で見た男だった。ジョーンズはフィッシャーに事情を打ち明けるが、フィッシャーも彼らの仲間だった。フィッシャーはジョーンズの殺害を企み、味方のふりをして仲間を探偵としてジョーンズにつかせる。偽探偵はジョーンズを殺そうとして失敗する。

 殺されそうになりジョーンズはフィッシャーが敵である事に気づく。会社へ戻り同僚に相談するが、キャロルの父であるフィッシャーを訴える事、ヴァンの命も危険なことから記事は書けなかった。そこへスコットが来て、ヴァンが誘拐された事の理由を明かす。それは条約に関する事で、戦争の危険をはらんでいた。スコットはフィッシャーの娘であるキャロルを誘拐し、ヴァンの行方を聞き出そうとする。ジョーンズは断るがそこへキャロルが来てジョーンズを心配する。スコットは彼女に郊外にジョーンズを連れて行けと言いキャロルは話に乗る。ジョーンズとキャロルはケンブリッジへ。ホテルへ入るが、ジョーンズに電話がかかりフロントへ。スコットからフィッシャーが捕まらない、もう少しケンブリッジでの滞在を延ばして欲しいと言われ、ジョーンズはもう一部屋取ることに。それを聞いたキャロルは怒って帰ってしまう。

 フィッシャー宅にスコットが訪れ、キャロルを誘拐したことを告げ、ヴァンの行方を聞く。フィッシャーはスコットにヴァンの居場所のメモを渡そうとするが、その時キャロルが帰って来る。スコットはメモを受け取り外へ出るが、そこには娘の車の音がしたと書いてあった。キャロルはフィッシャーにケンブリッジへ行ったことと、そこでの話をする。

 フィッシャーはクルーグのところへ向かう。タクシーの行き先を聞いたスコットはあとを追う。フィッシャーの家にクグールから電話が入るが、キャロルが取る。クルーグの声を聞いたキャロルは事情を理解する。

 フィッシャーはヴァンの元へ行き条約のことを聞き出そうとするが、ヴァンは口を割らなかった。そこへスコットも現れ邪魔をする。フィッシャーはヴァンを拷問し条約を聞き出す。スコットが暴れホテルまで来ていたジョーンズたちと合流する。フィッシャーたちは逃げるが、ヴァンを確保する。

 イギリスがドイツに宣戦布告する。警察へ行くが、証拠がなくフィッシャーを逮捕できない。ジョーンズ、スコット、フィッシャー、キャロルは飛行機に乗る。フィッシャーはスコット宛ての電報を受け取り、ヴァンが証言したことを知り、キャロルに全てを打ち明ける。4人で話をしているとドイツ軍が飛行機を撃ってきて、飛行機は墜落する。乗客は海に投げ出されるが機体に捕まりなんとか助かる。しかしフィッシャーは海に身を投げる。アメリカ船が通りかかり他の客は助かる。中立国であったアメリカ船からは情報を伝えられなかったが、ジョーンズは電話の受話器を隠しつつ、船長に話すふりをして会社に事件の全貌を伝える。

 彼は戦争の状況を伝える記者としてロンドンからアメリカへのラジオで喋り続ける。

 

 ヒッチコック作品二つ目。「バルカン超特急」を見たばかりなので、古さは気にならない。むしろこんな昔の作品なのに、特撮はあるわ、カーチェイスはあるわ、で感心することの方が多い。場面転換も多いし、誰が敵なのかという謎も多いし、風車のシーンでは見つからないかドキドキするし、展望台では早く降りろよと思うし、話がひと段落したと思ったら飛行機は墜落するし。ずっとハラハラドキドキさせるのは、さすがヒッチコック

 ラストでアメリカを讃える歌が流れてまさに1940年なんだなと思わせるが、終盤ヴァンが話す戦争に向かう狂気を否定するセリフがあるところも上手いと感じる。全然古くないなぁヒッチコック。 

 

鬼平犯科帳 第4シリーズ #11 掻掘のおけい

 第4シリーズ #11 掻掘(かいぼり)のおけい

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s4-11.jpg

 紙問屋伊勢屋の主人の妻おけいは引き込み役となり、盗賊を迎え入れる。翌日盗賊改方の調べが入るが、主人夫婦や店の者は皆盗賊に縛られていたため、盗賊の手がかりは掴めなかった。そして伊勢屋も看板をおろし、主人夫婦も行方知れずとなり1年が過ぎた。

 忠吾は五郎蔵といそぎ働きの盗賊団について深川周辺を探索していた。忠吾は伊勢屋の女房おけいを見かけ声をかけるが、人違いだと言われる。その夜忠吾は鬼平に、おけいが怪しいと睨んだ五郎蔵があとを追ったがおけいは姿を消していたと報告する。鬼平はおけいが引き込み役だったと睨む。おまさが忠吾に女の特徴を聞くとその女は輦(てぐるま)を買っていたと話す。おまさは掻掘(かいぼり)のおけいという引き込み役の女だと話す。おけいは8つの子供が侍の馬に蹴られ死んでしまいそれ以来盗人稼業をするようになったと。

 おけいは鶴吉と一緒にいた。

 おまさたちはおけいを探し始める。五郎蔵は街で鶴吉を見かけ声をかけるが、鶴吉は逃げる。五郎蔵は鶴吉を追い詰めうどん屋に誘う。二人は5年ぶりの再会で、鶴吉は五郎蔵の下で働いていた。五郎蔵は鶴吉の父蛙の市兵衛のことも知っていた。鶴吉は5年前の仕事で押し込み先の女中を手篭めにし、上方へ逃げ生駒の伝右衛門一味にいたが、1年前に江戸に戻ってきていた。しかし盗人の掟を守って来たが、今は悪い女に引っかかっていると話し、その名前が掻掘のおけいだと聞き五郎蔵は驚く。二人は上方で一緒に仕事をしていたが、江戸で偶然再会しそれ以来男と女の仲になったと話す。鶴吉はおけいから逃げ出したいが逃げられず、助けて欲しいと五郎蔵に言う。なぜ逃げないのかと聞くと、おけいがお勤めを始めるからだと話す。

 五郎蔵はおけいと鶴吉をどうするか悩む。五郎蔵は鶴吉の父の今際の際に鶴吉のことを頼まれていた。おまさもおけいが死んだ子供の代わりに鶴吉を可愛がっているのではと話す。五郎蔵はおけいの新しい仕事のことが知りたくて鶴吉を離してしまったと話す。

 おけいは白粉所玉屋を訪ね、主人の茂兵衛と会いお茶屋へ行く。彦十とおまさがおけいをつけていた。お茶屋から黒灰の宗六が出てくる。彼は和尚の半平の手下だった。おけいは和尚の半平と繋がっているのではと彦十は睨む。玉屋の主人はおけいを気に入り結婚してくれと話す。おけいは実は弟がいて一緒に働きたいと言っていると話す。

 彦十は鬼平に報告する。鬼平は和尚の半平がすでに江戸に来ているとすれば最近のいそぎ働きもヤツの仕業かも知れないと話す。おまさはおけいがいそぎ働きの引き込みをやることが信じられないと言う。

 おけいをつけていた五郎蔵はおけいが和尚の半平と会っているのを目撃する。

 おけいは夜鶴吉に半平からの依頼で300両で引き込み役を引き受けたと話すが、鶴吉は良い顔をしない。鶴吉は盗人の掟を一度破っているので二度目はないと話し、逃げようとする。おけいは和尚の半平も鶴吉のことを知っているので、どんな目にあうかわからないと脅す。

 おけいは鶴吉を連れ、玉屋の後妻となり10日が過ぎた。店先で仕事をしていた鶴吉の元に五郎蔵が現れる。そこへ仕事のつなぎが来て「明日の晩九つ」と言い残し去って行く。鶴吉は店の中から呼ばれてしまう。五郎蔵がどうするか悩んでいるところへ鬼平が現れる。鬼平は五郎蔵に鶴吉も大人だ、もうやれることはしてやったんだと話す。

 そして翌日夜、鶴吉の引き込みで盗賊が押し入るが、盗賊改方が待っていた。捕り物の騒ぎの中、おけいは鶴吉と逃げようとする。しかし盗賊改方が店を囲んでいることを知ると短刀を出し鶴吉に自分を殺してくれと頼む。が、鶴吉は短刀を捨て逃げ出す。忠吾を前に観念したおけいは自害する。おけいは死んだ子供の名前をつぶやきながら果てる。鶴吉は自首をし、捕らえられる。鬼平は五郎蔵に鶴吉を預けると話す。

 

 鬼平の中で何話かある引き込み役の女に焦点を当てた話。子供を無残に亡くしそこから引き込みとなって行く悲しい運命を持っていた。おまさとも知り合いで、おまさは彼女の不幸な人生に涙する。五郎蔵も鶴吉の父から頼まれており、最後に鬼平から預けると言われ涙を流す。うーん、話としてはわかるが、二人が涙するシーンにあまり共感できなかった。1時間ドラマの限界と言われればそれまでだが、どちらか片方に絞りそのエピソードをもっと見せておかないとこちらも共感できないよなぁ。

 ちょっと救いのない話で切ない気持ちになるのを、最後の鬼平のセリフで救ってもらった感じか。でもこの後、鶴吉は出てこないんだよなぁ、きっと。

 

巴里の屋根の下

●170 巴里の屋根の下 1930

 街中で合唱をする住民。中央にリーダーがいる。歌に夢中になる女性のカバンから財布を盗むスリがいる。リーダーは一人目は黙認するが、美人のカバンから盗もうとしているのを見て邪魔をする。しかしスリは美人からもお金を盗む。リーダーは合唱を辞め、スリに詰め寄る。美人を迎えに彼が来てカバンが開いていることを指摘、リーダーはスリから金を奪い美人に返す。美人の彼はスリに詰め寄り、一人目から奪った財布を取り返す。カップルはその場を離れ、リーダーとスリは喧嘩を始める。

 その夜合唱に参加した住民はアパートのそれぞれの部屋で合唱した曲を歌う。財布をすられた女もそれに気づく。リーダーとスリは一緒に酒場で酒を飲んだ。カップルは踊りに行く。

 リーダーはダンスホールで仲間と酒を飲んでいたが、つまらないことで喧嘩となる。他の客を巻き込む。そこへカップルが訪れる。リーダーは目礼する。リーダーと仲間はどちらが美人に話しかけるかをサイコロで勝負するが、カップルの男が美人の横にいるのを見て二人は諦め店を出る。しかしリーダーは諦められず店の外で佇む。カップルの男は美人のカバンから彼女の部屋の鍵を盗み取る。カップルの男の女が現れ、美人は怒って店を飛び出る。リーダーは美人を家まで送る。そこでお互いに名乗る。リーダーはアルベール、美人はポーラ。家の前でアルベールはポーラを口説くが、ポーラは拒む。帰ろうとするアルベールだったが、ポーラは部屋の鍵がないことに気づきアルベールを追う。アルベールはポーラを家に連れて帰る。

 ポーラの家に男が訪れる。

 アルベールは寝ている彼女にキスをしようとして拒否される。怒って嫌なら出て行けと叫ぶ。ポーラは出る準備をしようとするが鏡を落として割ってしまい泣く。それをみたアルベールは部屋にいてもいいと話す。

 ポーラの男が彼女の部屋に入る。そこには誰もいなかった。男は部屋を出て行く。

 アルベールは部屋の電気を消しポーラと寝ようとするが、またも彼女に拒否される。結局二人はベッドを挟んで床で寝ることに。

 朝アルベールの部屋を警察が訪ねてくる。驚くアルベールだったが、本当はスリだった。旅に出るのでカバンを預かって欲しいとの願いだった。ポーラは部屋を出て行く。アルベールは彼女の割れた鏡を棚に置く。外に出るとポーラがまだ佇んでいた。彼女は家に帰りたくないと言い、アルベールはまだ部屋にいてもいいと話す。

 二人は昨日の場所で合唱を始める。アルベールがリーダーとなり、ポーラは楽譜を売る。そこへポーラの男が現れる。それに気づいたアルベールは歌のスピードを速める。合唱をうるさく思う近所の住民が集団に水をかける。その隙にアルベールとポーラは逃げ出す。ポーラはアルベールに怖いのか、私は勇敢な男が好きと話す。アルベールは男の元へ行こうとするがポーラが止める。二人はキスをする。アルベールは男を追って外に出る。合唱の演奏者に自分は結婚すると話す。結婚行進曲が演奏される。

 男フレドは俺の女に近づくなという手紙を書き、スリに渡す。

 アルベールは部屋で結婚の準備をする。ポーラも部屋を出る準備をする。アルベールの部屋に警察が訪ねてくる。またスリのいたずらだと思い相手にしないがどうやら本物だと気づく。そしてスリから預かったカバンに気づきカバンをタンスの上に隠す。警察が二人入ってくる。一人は合唱を見にきていた男だった。タンスを開けようとして上のカバンが落ちてくる。中は盗品の食器だった。お前のものかと聞かれアルベールは否定する。置いていかれたと話すが誰かは答えなかった。アルベールは逮捕される。

 スリは手紙を少年に託す。アルベールが連行される後少年が部屋に来て手紙を置いて行く。そこへポーラも来て連行されるアルベールを見る。

 ポーラはアルベールの仲間のところへ行き彼が逮捕されたことを知らせる。スリはフレドのところへ行き、アルベールに預けたカバンを警察が見つけたことを知らせる。フレドはしばらくパリを離れようと言う。ポーラはアルベールの仲間と食事をする。

 アルベールが刑務所に入って15日。スリが逮捕される。ポーラはアルベールの仲間と良い仲になっていた。スリの取り調べが行われ、アルベールの無実が証明され釈放される。彼は部屋に戻りフレドからの手紙を読み投げ捨てる。

 ポーラはアルベールの仲間と酒場にいたが、他の女の目配せに反応した彼と喧嘩になり店を飛び出る。そこでフレドと出会う。フレドはポーラを踊りに誘う。そこへアルベールが現れる。ポーラが気づき彼に話しかけるがアルベールはつれなかった。しかしフレドに彼女に近寄るなと言われたアルベールはポーラを誘い踊る。踊った後、アルベールとフレドは店の外に出る。ポーラはアルベールの仲間ルイの元へ知らせに行く。

 アルベールとフレドは喧嘩を始める。駆けつけたルイは拳銃で電灯を撃ちあたりは真っ暗となる。そこへ警察が来てフレドと仲間たちが逮捕される。アルベールとルイはポーラがいた店に逃げ込む。警察が調べに来るがうまくごまかす。喜ぶ二人だったが、ポーラにキスしようとしたアルベールの元を離れ、ポーラがルイのそばに行ったことで二人は喧嘩を始める。店の主人に止められ、アルベールは店を出ようとする。それをルイが止め、ポーラのことが好きだったことを知らなかったと話す。ルイはサイコロを投げる。アルベールはサイコロの目をごまかし自分の負けだ、全て冗談だと言い、ルイがポーラの婚約者だと話す。そして3人で店を出る。

 そしていつもの場所でまた合唱をするアルベールの姿があった…

 

 半無声映画というか、半トーキーというか。必要な部分のみセリフが音声として流れる。それでいて、ポーラが初めてアルベールの部屋に来た時と最後の喧嘩シーンなどでは、画面を真っ暗にし台詞のみが流れるというシーンもある(トーキーだから当たり前か)。

 ストーリーは、失恋をしつつ悲しさを見せないアルベールのかっこよさを描いている面とポーラの女性としての小悪魔的な面を描いている。アルベールのかっこよさはある意味寅さんの原点みたいにも見える。ポーラの小悪魔的な部分は時代に関係なくスムーズに受け入れられる。

 1930年の映画なのにストーリーがしっかりとしていて、セリフがない場面が多い分こちらの想像力が試されているようで楽しい映画だった。最後アルベールとルイが喧嘩をする場面でのウィリアムテル序曲も良く、レコードならではの針飛びによる繰り返しが効果的に使われている。

 古い映画と言って全く侮れない、そんな作品。

 

巴里の屋根の下 [DVD]

巴里の屋根の下 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
  • 発売日: 2011/02/16
  • メディア: DVD