巴里の屋根の下

●170 巴里の屋根の下 1930

 街中で合唱をする住民。中央にリーダーがいる。歌に夢中になる女性のカバンから財布を盗むスリがいる。リーダーは一人目は黙認するが、美人のカバンから盗もうとしているのを見て邪魔をする。しかしスリは美人からもお金を盗む。リーダーは合唱を辞め、スリに詰め寄る。美人を迎えに彼が来てカバンが開いていることを指摘、リーダーはスリから金を奪い美人に返す。美人の彼はスリに詰め寄り、一人目から奪った財布を取り返す。カップルはその場を離れ、リーダーとスリは喧嘩を始める。

 その夜合唱に参加した住民はアパートのそれぞれの部屋で合唱した曲を歌う。財布をすられた女もそれに気づく。リーダーとスリは一緒に酒場で酒を飲んだ。カップルは踊りに行く。

 リーダーはダンスホールで仲間と酒を飲んでいたが、つまらないことで喧嘩となる。他の客を巻き込む。そこへカップルが訪れる。リーダーは目礼する。リーダーと仲間はどちらが美人に話しかけるかをサイコロで勝負するが、カップルの男が美人の横にいるのを見て二人は諦め店を出る。しかしリーダーは諦められず店の外で佇む。カップルの男は美人のカバンから彼女の部屋の鍵を盗み取る。カップルの男の女が現れ、美人は怒って店を飛び出る。リーダーは美人を家まで送る。そこでお互いに名乗る。リーダーはアルベール、美人はポーラ。家の前でアルベールはポーラを口説くが、ポーラは拒む。帰ろうとするアルベールだったが、ポーラは部屋の鍵がないことに気づきアルベールを追う。アルベールはポーラを家に連れて帰る。

 ポーラの家に男が訪れる。

 アルベールは寝ている彼女にキスをしようとして拒否される。怒って嫌なら出て行けと叫ぶ。ポーラは出る準備をしようとするが鏡を落として割ってしまい泣く。それをみたアルベールは部屋にいてもいいと話す。

 ポーラの男が彼女の部屋に入る。そこには誰もいなかった。男は部屋を出て行く。

 アルベールは部屋の電気を消しポーラと寝ようとするが、またも彼女に拒否される。結局二人はベッドを挟んで床で寝ることに。

 朝アルベールの部屋を警察が訪ねてくる。驚くアルベールだったが、本当はスリだった。旅に出るのでカバンを預かって欲しいとの願いだった。ポーラは部屋を出て行く。アルベールは彼女の割れた鏡を棚に置く。外に出るとポーラがまだ佇んでいた。彼女は家に帰りたくないと言い、アルベールはまだ部屋にいてもいいと話す。

 二人は昨日の場所で合唱を始める。アルベールがリーダーとなり、ポーラは楽譜を売る。そこへポーラの男が現れる。それに気づいたアルベールは歌のスピードを速める。合唱をうるさく思う近所の住民が集団に水をかける。その隙にアルベールとポーラは逃げ出す。ポーラはアルベールに怖いのか、私は勇敢な男が好きと話す。アルベールは男の元へ行こうとするがポーラが止める。二人はキスをする。アルベールは男を追って外に出る。合唱の演奏者に自分は結婚すると話す。結婚行進曲が演奏される。

 男フレドは俺の女に近づくなという手紙を書き、スリに渡す。

 アルベールは部屋で結婚の準備をする。ポーラも部屋を出る準備をする。アルベールの部屋に警察が訪ねてくる。またスリのいたずらだと思い相手にしないがどうやら本物だと気づく。そしてスリから預かったカバンに気づきカバンをタンスの上に隠す。警察が二人入ってくる。一人は合唱を見にきていた男だった。タンスを開けようとして上のカバンが落ちてくる。中は盗品の食器だった。お前のものかと聞かれアルベールは否定する。置いていかれたと話すが誰かは答えなかった。アルベールは逮捕される。

 スリは手紙を少年に託す。アルベールが連行される後少年が部屋に来て手紙を置いて行く。そこへポーラも来て連行されるアルベールを見る。

 ポーラはアルベールの仲間のところへ行き彼が逮捕されたことを知らせる。スリはフレドのところへ行き、アルベールに預けたカバンを警察が見つけたことを知らせる。フレドはしばらくパリを離れようと言う。ポーラはアルベールの仲間と食事をする。

 アルベールが刑務所に入って15日。スリが逮捕される。ポーラはアルベールの仲間と良い仲になっていた。スリの取り調べが行われ、アルベールの無実が証明され釈放される。彼は部屋に戻りフレドからの手紙を読み投げ捨てる。

 ポーラはアルベールの仲間と酒場にいたが、他の女の目配せに反応した彼と喧嘩になり店を飛び出る。そこでフレドと出会う。フレドはポーラを踊りに誘う。そこへアルベールが現れる。ポーラが気づき彼に話しかけるがアルベールはつれなかった。しかしフレドに彼女に近寄るなと言われたアルベールはポーラを誘い踊る。踊った後、アルベールとフレドは店の外に出る。ポーラはアルベールの仲間ルイの元へ知らせに行く。

 アルベールとフレドは喧嘩を始める。駆けつけたルイは拳銃で電灯を撃ちあたりは真っ暗となる。そこへ警察が来てフレドと仲間たちが逮捕される。アルベールとルイはポーラがいた店に逃げ込む。警察が調べに来るがうまくごまかす。喜ぶ二人だったが、ポーラにキスしようとしたアルベールの元を離れ、ポーラがルイのそばに行ったことで二人は喧嘩を始める。店の主人に止められ、アルベールは店を出ようとする。それをルイが止め、ポーラのことが好きだったことを知らなかったと話す。ルイはサイコロを投げる。アルベールはサイコロの目をごまかし自分の負けだ、全て冗談だと言い、ルイがポーラの婚約者だと話す。そして3人で店を出る。

 そしていつもの場所でまた合唱をするアルベールの姿があった…

 

 半無声映画というか、半トーキーというか。必要な部分のみセリフが音声として流れる。それでいて、ポーラが初めてアルベールの部屋に来た時と最後の喧嘩シーンなどでは、画面を真っ暗にし台詞のみが流れるというシーンもある(トーキーだから当たり前か)。

 ストーリーは、失恋をしつつ悲しさを見せないアルベールのかっこよさを描いている面とポーラの女性としての小悪魔的な面を描いている。アルベールのかっこよさはある意味寅さんの原点みたいにも見える。ポーラの小悪魔的な部分は時代に関係なくスムーズに受け入れられる。

 1930年の映画なのにストーリーがしっかりとしていて、セリフがない場面が多い分こちらの想像力が試されているようで楽しい映画だった。最後アルベールとルイが喧嘩をする場面でのウィリアムテル序曲も良く、レコードならではの針飛びによる繰り返しが効果的に使われている。

 古い映画と言って全く侮れない、そんな作品。

 

巴里の屋根の下 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
  • 発売日: 2011/02/16
  • メディア: DVD