情婦

●090 情婦 1957

 退院したばかりの毒舌弁護士ウィルフリッド卿は口やかましい看護婦ミス・プリムソルに付き添われ事務所へ戻る。そこへ突然の訪問者、事務弁護士メイヒューと彼の紹介による依頼人、刑事訴訟で容疑者ヴォールだった。ヴォールはエミリー・フレンチ事件の容疑者だった。フレンチ夫人は、夫を亡くし家政婦と住む中年女性。ヴォールが訪問した夜、家政婦が休暇から戻り遺体を見つけた。証拠はヴォールに不利なものばかり。アリバイが鍵となる。

 ウィルフリッドはヴォールにフレンチ夫人との関係を聞く。彼は発明家で、発明品の宣伝・製造のための資金でフレンチ夫人をあてにしていた。弁護士仲間の情報では、彼はフレンチ夫人の遺言で遺産8万ポンドがヴォールに贈られることとなった。彼はハーン警部により逮捕される。そこへヴォールの妻クリスティーネが訪れる、彼女には東ドイツに夫がおり、ヴォールとは結婚していないことを話す。クリスティーネは彼のアリバイを話すが、妻の証言は採用されないのと彼女の言葉に不信を持ったウィルフリッドはクリスティーネを証言に立たせない。

 裁判が始まり、検察側が夫人を証人に。彼女は証言をひっくり返す。ヴォールは圧倒的に不利な立場になる。しかし突然新たな証人の女が電話してきて、ユーストン駅で夫人の手紙を売り込んでくる。彼女は昔男を夫人に取られたのだった。

 その手紙を元にウィルフリッドは裁判最終日に臨むが…

 

 こんな古い映画なのに、裁判モノとしてのお手本のような話だった。英国の裁判の雰囲気もよくわかったし、何よりラスト10分のどんでん返しは見事だった。途中に挟まれる弁護士と看護婦のやり取りも面白く、全く飽きさせない。

 映画の構成として、最初の事務所40分・刑務所10分・裁判1日目20分・裁判3日目20分・駅10分・ラスト20分。最初の事務所で一気に事件の内容、容疑者の弱点がわかり、あとは半分の時間が裁判でのシーン。

 被害者の家の家政婦の女性も弁護士も印象的だったが、やはりマレーネ・ディートリヒに尽きる。ラストで見せる駅の再現はすごい。

 昔からタイトルもどんでん返しがあることも知っている映画だったが、初見。ラストのナレーション、「まだこの映画を見ていない人に決して結末を話さないでください」は今では定番のコピーだが、この映画が最初だったのだろう。それに見合うインパクトがあった。