小さいおうち

●187 小さいおうち 2014

 タキ婆さんが亡くなり、その火葬場から映画はスタートする。タキの妹の孫である健史とその両親がタキの部屋の片付けをする。そこにタキが書いた自叙伝が残されており、健史はそれを読み始め、生前タキの部屋で彼女が自叙伝を書いていた時のことを思い出し始め、自叙伝で語られた過去が明かされて行く。

 タキは山形から東京へ出てきて、小説家の家の女中となる。しかしその後、小説家の妻の紹介で平井家の女中となる。平井家は主人でおもちゃ会社に務める雅樹、妻の時子、息子の恭一の3人家族だった。平和に暮らしていたが、ある時恭一が小児まひとなる。タキは恭一のため半年間恭一の病院へ通い、足のリハビリを行った。途中からはタキが恭一の足のマッサージを行い、彼は無事歩けるようになる。タキは時子たちの信頼を得て行った。

 戦争が始まりそうな雰囲気の時期であり、世の中もそれを歓迎していた。

 正月、平井家に雅樹の会社の部下の板倉が訪れる。彼を見た時子は板倉を気に入り、その言動にも惹かれていく。

 ある日雅樹は時子と一緒にコンサートに行く予定だったが、仕事の都合でいけなくなる。時子は不機嫌になり、結果時子一人で行くことに。しかしもう一枚の切符は板倉が使い、二人は一緒にコンサートを聞くことになる。

 台風の日、雅樹は留守をしており、心配した板倉が平井家を訪ねてくる。家の外回りを直すなど活躍し、その日は家に泊まることになる。そんな板倉に時子はキスをする。

 タキに縁談が持ち上がる。しかし相手は再婚で53歳の男だった。タキはその夜部屋で泣く。そんな時子を見て時子は縁談を断る。

 雅樹が板倉の見合いの話を持ってくる。その見合いの話を板倉に勧める役を時子に任せる。板倉に惹かれて入る時は嫌がったが、雅樹の勧めもありその役を引き受ける。日曜に平井家に来た板倉に時子は見合いの話をするが、断られてしまう。それを知った雅樹はもっと強く勧めてくれと文句を言う。次の日曜時子はタキを連れて板倉の下宿を訪ねる。それでも板倉の返事は一緒だった。雅樹は戦時下ということもあり、激怒し時子のことも叱る。時子はタキに板倉へのハガキを出すように頼む。

 次の日曜、時子は一人で板倉の下宿へ行く。家に帰って来た時子の着物の帯が出かけた時とは違う向きで締められていたことにタキは気づき、二人の仲に気づいてしまう。

 タキは悩む。時子の友人睦子が平井家に来た際にそのことを話してしまうが、睦子は時子には話さないようにと口止めをする。

 戦争が続き、板倉のような体の弱い人間も徴兵されることが発表された。それを受け板倉は正式に見合いの話を断りに平井家を訪れる。

 その頃板倉と時子のことが噂になり始めていた。平井家に出入りする酒屋はタキにそのことを話す。時子の姉貞子もその件で時子をとがめに平井家へやってくる。

 そしてとうとう板倉にも召集令状がやってくる。板倉は平井家にその報告に来る。翌日時子は板倉に会いに行こうとする。タキは悩んだ末、それを止める。その代わり時子から手紙を預かり板倉に届ける。それはもう一度だけ会いたいと願う時子の手紙だった。しかし板倉は家にはやってこなかった。

 戦争が激しくなり、タキは山形に帰ることになる。その後東京に空襲があり、平井家の家は燃え、雅樹と時子が防空壕の中で死んでいた、とタキは知ることになる。

 タキの自叙伝はここまでとなる。健史は恋人から誕生日プレゼントに本をもらうため本屋に来ていた。そこで偶然目にした個展のポスターの画家の名前が、板倉と同じであることに気づく。健史は偶然の一致だと思うが、恋人が同一人物かもしれないと調べ、同一人物だと判明する。

 翌週二人は画家の個展を見に行く。そこで平井家の恭一が生きて入ることを知り、彼に会いに行く。そこで健史はタキの自叙伝と一緒に入っていた開封されていない時子の手紙を恭一に渡す。恭一は開封して読むように言う。手紙は時子が最後に板倉に宛てて書いた手紙だった。そこで健史はタキが手紙を板倉に届けなかったことを知る。健史は恭一からタキの思い出を聞く…

 

 山田洋次監督が東京家族の次に作った映画。後の「家族はつらいよ」の俳優陣が総出演している。黒木華はこれが初主演か。この映画で彼女の存在を初めて知った。まさに昭和の顔。松たか子の夫人役も上手くハマっていたと思うが、黒木華の女中役はまさにどんぴしゃりといった感じだった。

 時子と板倉の不倫が話のメインとなっているが、映画を見て感じるのは山田監督の戦争反対のメッセージ。喜劇を作らせたら右に出るものがいない監督が、あまり笑いのないこの映画を作りたかったのは、これなんだろうと強く感じさせられた。

 あまり関係ないが、エンドロールを見ていて、なんか?と思ったら、音楽が久石譲さんなのね。ハウルの音楽かと一瞬思ってしまった(笑