アバウト・ア・ボーイ

●197 アバウト・ア・ボーイ 2002

 ウィルは38歳。独身で自由な生活を謳歌している。

 マーカスは12歳。精神が不安定気味な母親との母子家庭。学校でもいじめられている。

 ウィルは女性との付き合いもドライで、別れはいつも自分から切り出していたが、ある時付き合ったシングルマザーから別れを切り出され驚く。女性から別れを告げられたのは初めてだったから。それ以来ウィルはシングルマザーと付き合いたいと考え始める。そしてシングル・ペアレントの会に参加する。そこでは架空の2歳児を持つ父として自己紹介する。そこで知り合ったスージーを気に入り、デートをすることに。

 子連れでのデートの日、ウィルは自分の子供は母親のところへ行っていることにし、スージーとデートをしようとするが、スージーのシングル・ペアレントの会仲間のフィナオの息子マーカスもデートに付いてくることに。スージーに仕事のことを聞かれ、ウィルは仕事はしたことがなく、親が作った曲の印税で暮らしていると告げる。

 ウィルはマーカスを邪魔だと思っていたが、マーカスが公園の池のカモを誤って殺してしまった際に管理人に上手く説明しごまかすことに成功する。デートが終わり家に帰ると、マーカスの母フィナオが自殺未遂をしていた。すぐに病院へ搬送、フィナオは助かる。

 翌日フィナオは家に帰ってくるが、マーカスは母親のことが心配になる。自分と母の二人だけでは支えきれないと感じたマーカスは、ウィルに電話し食事の約束を取り付ける。ウィルは最初断るが、スージーの名前を出され了承する。しかし当日スージーは来ておらず、ウィルは逃げ出す。

 マーカスはウィルが必要なため彼の身辺を調べる。そして彼に本当は子供がいないことを突き止め、彼の家にその話をしに行き、黙っているので自分の母親と付き合ってほしいと頼むがウィルは断る。しかし翌日からマーカスは学校帰りにウィルの家に寄りそこでウィルと一緒に時間を過ごすようになる。

 ある日ウィルはマーカスが学校でいじめられていることを知る。歌を口ずさむことをからかわれていたため、マーカスはいじめられることを諦めていた。ウィルは彼を連れ出し、新しい靴を買ってやる。

 しかしマーカスは学校でその靴を盗まれてしまう。雨の中裸足で帰って来た息子を見たフィナオはマーカスに理由を聞く。マーカスは全てを正直に話す。そして船穂はマーカスとともにスージーとデートをしているウィルの元へ現れ事情を説明するように求める。そこでスージーに本当は子供がいないことがバレ、ウィルは窮地に。ウィルはフィナオにマーカスが学校でいじめられていることなどを話し、3人は言い合いになる。マーカスは場を沈めるために、ウィルをクリスマスに誘う。

 ウィルは断るが、一人家で映画を見ていて孤独を感じ、マーカスの家に行くことに。そこにはマーカスの父、その母、父の恋人がいた。大勢でクリスマスパーティをすることに。プレゼント交換をし、ウィルはマーカスにCDを送る。そこへスージーがやって来て、ウィルは居づらくなる。しかしマーカスがウィルをかばいウィルは残ることに。パーティに参加し、ウィルは初めてクリスマスを楽しく感じる。

 その後ウィルとマーカスは恋に芽生える。マーカスは学校のエリーに、ウィルはパーティで知り合ったレイチェルに恋をする。レイチェルはシングルマザーだったため、ウィルはまたも子供がいると嘘をついてしまう。子供の年齢を12歳と話し、子連れのデートをすることになる。マーカスは学校で歌えを口ずさんでいるときにエリーに話しかけられる。ラップが好きだということで二人は会話をする仲になる。

 ウィルはマーカスに事情を説明し、子供のふりをしてもらうことに。マーカスは好きならどうして本当のことを言わないのかとウィルに尋ねる。二人はレイチェルの家に行くが、そこに居たレイチェルの息子は母親に対して異常なほどの愛情を示す。怖くなったマーカスは家を飛び出るが、ウィルが二人の仲を上手くとりなす。デートから帰ったウィルは正直に本当のことをレイチェルに話すことを決意、デートの場で告白し、その場を去る。

 ある日学校から帰ったマーカスは家で一人泣いているフィナオを見る。自殺未遂をした時と同じだと感じたマーカスは母親を元気付けるために学校で開かれるロック大会に出ることを決意する。そして母親の件で助けを求め、ウィルの家に行く。しかしレイチェルと別れたばかりのウィルは、自分は家族でも親戚でもない、自分は何もできない男だ、とマーカスを突き放す。怒ったマーカスは家を飛び出る。

 一人になったウィルはマーカスの存在の重要性に気づく。そしてフィナオのところへ行き話をする。そしてマーカスが学校でロック大会に出ることを知り、フィナオを連れ学校へ向かう。舞台に出る直前のマーカスを捕まえ出ることをやめさせようとするが、マーカスは一人舞台へ。そして歌い出す。聴衆は笑い出す。そこへウィルがギターを演奏しながら出てくる。二人は一緒に歌を歌う。

 そして…クリスマス。ウィルの家に、マーカスとフィナオ、レイチェルと息子、エリー、ウィルの昔の仕事仲間などが集まっていた。マーカスとウィルは仲間といることの大切さに気づいていた。

 

 全く何も知らずに見たが、良い映画だった。最後にロック大会で歌われる「やさしく歌って」(原題: Killing Me Softly with His Song)は、決して上手ではないし、観衆の大歓声や拍手もない。もともとこの曲は昔CMで使われ、とても良い曲だと思っていたが、この映画でのこの歌が一番心に響いたのは間違いない。

 結婚もせず一人で楽しく暮らしている男が、仲間や家族の重要性に気づく物語と言えばそれまでだが、どこか心地よく見ることができた。1時間40分というのも大きいのかなぁ。映画はこの長さがベストだと思う。

 マーカスの母親フィナオが遺書を残し自殺未遂をするが、その遺書を読んだ息子に聞かれ、「内容は覚えていない、だって覚える必要がないもの」というセリフはちょっとドキッとする。自殺未遂があったり、嘘を告白し女性に愛想をつかされるなど、ひどいシーンもあるが、全体を通して気楽に見ることができる。マーカス役の少年も最初は小憎らしく思えていたが、最後には可愛く見えるのは映画のマジックだな。