男はつらいよ ぼくの伯父さん

●208 男はつらいよ ぼくの伯父さん 1989

 冒頭珍しく(おそらくシリーズ初めて)満男のナレーションで始まる。満男は伯父さんのことを語る。

 タイトルバック。電車の中での寅さんと老人のエピソード。高校生が席に座っているのをどかして老人を座らせようとするが、老人が拒否し喧嘩となってしまう。

 さくらの家の朝の食事風景。満男は食事もソコソコにバイクのガソリン代をさくらにねだる。博はさくらが甘いと非難する。

 満男の予備校の風景。授業が身に入らず、高校時代のブラスバンド部のことを回想している。

 夕方、さくらの家。帰ってきた満男に手紙が来ていることをさくらが知らせる。それは高校のブラスバンド部の後輩、泉からのものだった。手紙は転校し友達ができず、同居している母親も夜の商売を始めたため、一人での夕飯が寂しいと書かれていた。

 寅さんが柴又に帰ってくる。とらやに顔を出すとさくらから満男のことを相談される。寅は満男の話を聞いてやると答える。夕方とらやに満男が顔を出す。寅は満男を飲み屋に誘う。そこで酒の飲み方を教え、飲ませる。とらやでは受験生である満男をとらさんに任せて大丈夫なのか、という話がされていた。寅さんは酔った満男から恋をしていること、そのため勉強が手につかないことを聞き出す。寅は昔博から聞いた「自分を醜いと知った人間はもう決して醜くない」という言葉と博がさくらに恋をした時のことを満男に語る。

 寅と満男は酔ってとらやに帰る。家の者は皆寅を非難する。博は満男を叩く。翌日寅は旅に出る。その夜、満男が帰ってこないことを博とさくらが心配している。満男のことを話している最中に、さくらが閃き、満男の部屋に入る。そこには満男の「旅に出ます」という書き置きがあった。

 満男は泉のいる名古屋にバイクで向かう。手紙の住所のアパートを訪ねるが誰もおらず、隣の住人に母親の勤め先であるスナックの場所を聞く。スナックに母親を訪ねて行くと泉は佐賀にいる母親の妹のところに預かってもらっていることを聞く。そして佐賀の住所を聞き出す。

 満男は佐賀に向かう。途中バイク事故を起こし、優しいライダーに助けられる。しかしそのライダーはホモでホテルで襲われそうになり逃げ出す。

 満男は佐賀の家にたどり着く。玄関の前にいると学校から泉が帰ってくる。二人は河原で話をする。満男はブラスバンド時代の譜面を泉に渡し、帰っていく。満男は駅前の安旅館に泊まる。相部屋だと言われ戸惑うが、相部屋の相手は寅さんだった。寅さんはとらやに電話をする。満男の行方を心配していたさくらは電話に満男が出て驚き泣いてしまう。

 翌日寅は満男に泉に会いに行くんだろうと声をかけるが、満男は自信をなくしていた。寅は小野小町深草少将の話をしてやり、泉に会いに行くように勧める。それでも自信のない満男は寅に一緒に泉の家に言ってくれと頼む。

 二人で泉の家にやってくる。出迎えたのは少しボケの入った泉の祖父だった。祖父は歴史の話を聞きに来た客だと思い二人を招き入れる。そこへ泉と叔母が帰ってくる。二人は祖父から夕食に誘われる。夕食時楽しい会話をするが、時間が来て寅さんは帰ろうとする。しかし叔母が祖父に叱られると言い、泊まって行くように勧められ泊まることに。そこへ叔父が帰ってくる。翌日寅は祖父の知り合いの歴史の勉強会に連れ出される。満男と泉はバイクでドライブをする。3人は吉野ヶ里遺跡で一緒になったりする。満男は泉から両親の離婚の話を聞く。どうして離婚するんだろうと尋ねる泉に満男は上手く返せない。

 二人は家に帰ってくる。叔母も叔父も泉の帰りが遅いことを叱る。満男は二人に謝るが、叔父から偏差値のことを言われ、東京へ帰ると言い出す。満男は泉に叔父さんの悪口を言い、東京へ帰っちゃえよと話すが、泉は満男さんは幸せだから言えるのよと答える。満男は別れ際泉にキスをしようとするが、ヘルメットがぶつかり無様な姿を見せてしまう。満男はさくらに電話をし、これから帰ることを伝える。

 翌日祖父たちと温泉に泊まった寅も泉の家に戻り、挨拶をする。その際叔父から満男のことを迷惑だと言われる。最後に寅は満男は間違ったことはしていない、むしろよくやったと褒めてやりたいと話し、家を後にする。そして泉の学校へ行き、泉にも土地の言葉を早く覚え良い友達を作りな、と話し去って行く。

 とらや。皆が満男の帰りを待っている。満男はさくらと博に謝罪する。そこへ寅から電話が入り、皆が寅に話しかける。

 正月。満男が家に友達を連れ帰ってくる。皆を家に上げようとするが、階段の上には泉の姿が。満男は慌てて友達たちを追い返す。泉は寅さんから手紙をもらったことを話し、内容を読んで聞かせる。

 寅さんはポンシュウと旅先でまた仕事をしていたのだった。

 

 42作から4作続く「満男・泉」シリーズの1本目。主役が寅さんから満男に変わったためか話の展開が非常に面白い。またバイクが出てくるからか画面にも動きが多く、これまでのシリーズとはちょっと違った感じが出ている。

 後藤久美子は決して上手だとは思わないが、親が離婚した暗い影のある役にピッタリだったと思う。だからこそこの後もこの「満男・泉」シリーズが続くことになったんだろう。これが25年ぶりの新作に続くことになるとは誰も思いもしなかっただろうなぁ。

 渥美さんもまだ病魔に襲われる前だったようで、動きもセリフも生き生きとしている。主役を譲ったことなど全く感じさせない。飲み屋で満男に酒の飲み方を教えるシーンや、深草少将のエピソードのくだり、泉の叔父への最後の挨拶など、らしさ全開と言ったところ。

 

 男はつらいよシリーズは何回も見て来たが、ここ数年は例の新作を除けば、なんとなくだがあえて避けていた。しかしやっぱり面白いし、やっぱり泣ける。本当に良い映画を観た、と思わせてくれる。感謝。