鬼平犯科帳 第5シリーズ #05 消えた男

 第5シリーズ #05 消えた男

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 1組の男女が江戸へ向かって旅をしている。女はお杉、8年間神田に帰ることを夢見ていた。二人は小田原で宿をとる。お杉は病気で、男に死んだら父のそばに埋めて欲しいと頼み、死んでしまう。

 与力の佐嶋が市中見廻りをしている時に愛宕権現で高松と出会い、酒を飲むことに。高松は8年前まで同心をしていた男だったが、好きな女と他国へ行き暮らす、と手紙を残し、突然姿を消したのだった。しかし佐嶋は当時のお頭が嫌で辞めたのだろうと言い、今のお頭鬼平のことを高松に話す。

 二人は店を出る。二人の男が高松をつけて行く。一人は笹熊の勘蔵で、お杉のことで高松に恨みを持っていた。高松はお杉が死んだことを告げる。男たちは高松に斬りかかるが、高松は返り討ちにする。町人が斬り合いだ、と騒ぎ、それを聞いた佐嶋が駆けつける。そこには出て来たばかりの店の提灯が残されていた。

 佐嶋は高松のことと斬り合いの件を鬼平に報告する。切られた二人のことを密偵たちに見せる。おまさと粂八が笹熊の勘蔵を知っていて、盗人で8年前に手荒な仕事をする蛇骨の半九郎の手下だったと話す。それは佐嶋が取り逃がした盗賊たちだった。佐嶋は8年前高松が疾走する3日前、蛇骨一味の配下のお杉という女を網にかけた、今2,30両が必要だと言って来たことを思い出す。その時のお金は工面できず、高松が仕事を辞めた一因だったかもしれなかった。しかし鬼平は高松とお杉が関係していたかもと話す。

 佐嶋は五鉄で密偵たちに笹熊の勘蔵のことを尋ねる。勘蔵は酒も博打もしないが、釣りだけが道楽だったが、30過ぎて初めて女にハマった、それがお杉という女だったが、お杉は侍と逃げてしまった、という話を粂八が覚えていた。佐嶋はその侍が高松だと話す。おまさもお杉という名前の盗人女に覚えがあった。8年前に盗人女たちの面倒をよくみてくれるお百という女がやっている甘酒屋でお杉をみたことがあると話す。

 佐嶋はその甘酒屋へ出向く。するとお百から高松が3日前に来たことを聞く。お百は高松から、お杉が死んだこと、自分が江戸に戻ったことを勘蔵に伝えてくれ、と言われた、勘蔵にも伝えたことを話す。佐嶋はお百から高松の住まいを聞き、鬼平へ知らせる。鬼平はお杉の初七日が過ぎるまで高松を泳がせておこうと話す。佐嶋はお百から聞いた高松とお杉の話をする。

 粂八はお百から聞いた勘蔵の父親六兵衛のところへ行く。六兵衛から勘蔵、高松、お杉の話を聞く。

 高松はお杉の初七日が過ぎ、寺を出る。そして佐嶋を待っていた。鬼平と佐嶋が高松の元に現れる。観念する高松に、鬼平は捕らえるつもりはないと話す。3人は酒を飲みに行く。鬼平は高松に勘蔵に討たれるつもりだったのではないのか、と聞く。佐嶋はなぜ返り討ちにしたのか、と尋ねる。高松はあの日佐嶋様に会い、盗賊改方の血が騒いだからだと答える。

 そして高松は密偵の一人となり、忠吾や密偵たちと五鉄で飲んでいた。店を出た高松はお杉の墓を参る。そこへ男がやって来て高松を刺し殺す。粂八から知らせを聞いた鬼平は六兵衛を捕らえに行くが、六兵衛は行方をくらましていた。

 五鉄では忠吾が高松に酒を進め過ぎたことを悔やんでいた。一人外に出た佐嶋に鬼平が歩み寄る。佐嶋は高松のことを憐れむが、鬼平はそれが高松の定めだったのだろうと話す。

 

 第5シリーズはここまで人情噺のようなエピソードが続いて来たが、今回はちょっと違う話か。元同心が主人公というのはちょっと珍しい。この男が行きがかり上、人を殺めてしまい、捕まることを覚悟するが…という話。鬼平が彼を許すのはある意味当然と言えるのでそうだろうと思って見ていたが、密偵の一員となった後にも時間が残っているので、これはヤバい方向に話が進むのかと思っていたら、案の定その通りとなってしまった。

 メインは一人の女に惚れた二人の男、ということか。それについて様々な言葉が色々な人から語られる。ちょっとやるせないという気もする。もう一つ、最後に佐嶋に会わなかったらという話が高松との会話で出てくるが、それはそれで討たれる覚悟だったし、会ったためにこの結末を迎えたとなると、やはりやるせない。鬼平の言う、これが高松の定めだった、としか言いようのない話となってしまった。珍しく少し後味が悪いかなぁ。