鬼平犯科帳 第5シリーズ #07 お菊と幸助

 第5シリーズ #07 お菊と幸助

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s5-7.jpg

 鬼平甲州へ旅に出る。三日が無事に過ぎ、与力、同心などは久栄の差し入れの酒を飲んでいた。役宅に以前お屋敷に勤めていたお菊が訪ねてきて久栄が相手をする。お菊は八王子の松葉屋に勤めていたが、3年前に父親の昔のことが店に知れ飛び出してしまっていた。今は浅草田原町に住んでいると話す。お菊は久栄に願い事を申し出る。

 屋敷を出た菊を男が待ち構えており、鬼平の帰宅日を確認する。男は10日はたっぷりあるとほくそ笑む。

 久栄は上州屋を呼び出す。菊からお願いされた伝吉に仕事を紹介してもらうためだった。上州屋は受け入れ、明日から仕来りを覚えてもらうために店に泊まり込んで欲しいと話す。伝吉は店に泊まり込むが、夜中盗賊の引き込み役をする。盗賊たちは急ぎ働きをし、店の者は皆殺される。

 同心たちは鬼平の留守を狙われたと思い憤る。そこへ久栄が入って来て、箍直しの清兵衛のことを佐嶋に話し出す。佐嶋は昔密偵だったが殺されてしまったと答える。久栄はその娘のお菊のこと、伝吉を上州屋に紹介したことを話す。

 佐嶋とおまさは聞いていたお菊の住処を訪ねるが、そこにお菊は住んでいなかった。二人はその近辺を探す。

 お菊は甘酒茶屋で亭主に内緒で客を引いていた。そこに伝吉が訪ねてくる。伝吉はお菊の父が狗になったおかげで仲間が何人も捕まったことを忘れないと話す。さらに仕事の分け前だと1両を差し出す。お菊がお金に困っているのを見越していた。お菊は金を取って逃げる。家に帰るとそこに伝吉が待っていてお菊を脅す。そこへお菊の亭主が帰ってくる音が聞こえ、伝吉は帰って行く。亭主は体が不自由だった。

 久栄は忠吾、おまさとともに街中を歩きお菊を探す。長屋でお菊を見かけるが逃げられてしまう。お菊は伝吉の家へ行く。伝吉はお菊を犯そうとするが、お菊は酒瓶で殴ってしまう。お菊は呆然として長屋へ戻るが、そこにはおまさと佐嶋が待っていた。佐嶋は伝吉のことをお菊に問いただすがお菊は答えない。おまさは女同士ならば、と二人で話をする。お菊は亭主には内緒にして欲しいと泣き崩れる。そして全てをおまさに話し、奥方様に謝りたいと話す。おまさは伝吉のところへ連れて行って欲しいと話すが、お菊は私が殺したと答える。佐嶋たちは伝吉の家へ行く。そこには伝吉はおらず伝吉の子分がいたため捕まえる。伝吉の死体は一町離れた小川で見つかった。お菊は伝吉の頭を酒瓶で殴ったと話したが、死体は背中を匕首で刺されていた。

 鬼平が帰ってくる。久栄は鬼平に謝るが鬼平は佐嶋から話を聞いていた。久栄はお菊の罪を見逃して欲しいと頼むが、鬼平は罪は罪だと話す。

 鬼平は伝吉の家へ調べに行く。家の外に足跡を見つける。それは足の悪い者の足跡だった。鬼平は捕らえたままのお菊を家に返すよう申し付ける。

 お菊は家で亭主幸助を出迎える。亭主は昨夜どうしたと尋ねる。亭主は伝吉の家での出来事を一部始終見ていて、伝吉を刺し殺していた。夜夢をみてうなされた亭主は役宅へ出向き自首する。鬼平は伝吉を殺した理由を問う。そこへお菊が入ってくる。二人はお互いをかばい合う。鬼平は伝吉殺しは盗賊仲間のしたこと、二人については盗賊改方をたぶらかした罪で江戸四方十里所払いを命じる。

 

 ちょっと毛色の違った話だと思ったら、原作ではなくオリジナルの話のようだ。第5シリーズ特有の人情噺っぽくもあるが、久栄の紹介で盗賊の急ぎ働きが発生してしまう、という考えようによっては、大失態の話である。しかし元と辿ると、お菊の父親が密偵として働いていたことが原因であり、密偵が影の主役とも言える鬼平らしい話、とも言える。

 冒頭鬼平が単身で旅へ出るシーンから始まり、ちょっと珍しいと思ったが、鬼平が江戸にいればこんな事件は起こらないはずなので(もし鬼平がいて急ぎ働きが起きていたらとんでもないことになってしまう)、仕方なかったのね。

 最後幸助お菊夫婦に所払いを命じる鬼平、久しぶりにカッコ良かった。その後の久栄との会話も良し。オリジナルにしては良い出来だったのでは。