謎の部屋 謎のギャラリー 北村薫

●謎の部屋 謎のギャラリー 北村薫

 北村薫さんの選ぶアンソロジー。こんな本を何冊か北村さんが出しているのは知っていたが、読んだのは初めて。いやぁ驚かされる。17編の小説が取り上げられているが、もちろん読んだことがあるものは一つもない。というか、作家の名前もほぼ知らない方ばかり。

 宇野千代さんのとても短い小説からスタート。何これ?が正直な感想。しかしひとつずつ読み進めて行くと、北村さんが選んだ理由がなんとなくわかってくる。そこにあるのは推理小説ではなくて、「謎」のある小説なのだ。いろんな「謎」が出てくるが、思わず笑ってしまったのは、「遊びの時間は終わらない」。とある小説新人賞を取った作品らしく、映画化もされているらしい。とにかく話の展開が可笑しくてたまらない。

 読み進めて行くと、本の後半は推理小説がチョイスされている。いつの時代に書かれたものなのかもわからないような、しかしなぜかどんどんと読み進めたくなる話ばかり。圧巻は「エリナーの肖像」。前半にある「桃」を読んだ時に、この設定は上手く捌けば凄い推理小説になるなぁと思ったのだが、話の内容は全く異なるものだが、この「エリナーの肖像」は、「絵画」をテーマに推理小説ができるのか、と驚く内容だった。1枚の絵画から、事件を解決するなんて、まるで「9マイルは遠すぎる」みたいだ。

 北村さんの小説は大変面白いが、これだけの読書量がその一部を支えているのかと思うと大変納得できた。