鬼平犯科帳 第6シリーズ #04 浮世の顔

 第6シリーズ #04 浮世の顔

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 滝野川村で二人の死体が見つかる。一人は侍だが、下帯を外した状態で撲殺されていた。もう一人は町人風情で、刺し殺されていた。

 役宅では同心村松が同心山田に朝飯の大切さを説いていた。そこへ忠吾が来て、町方からの使いが滝野川で殺された侍が持っていた書状を鬼平に持って来たと知らせる。書状は鳥羽の家臣小野田が鬼平に宛てたもので、仇討ちをする佐々木を紹介するものだった。小野田は鬼平の高杉道場時代の仲間だった。

 書状の内容を知った与力天野は、佐々木が殺された状態について呆れていた。天野は殺されたのが侍でしかも旅先ということ、書状のこともあり、町方がこの一件を盗賊改方に押し付けるつもりだろうと話す。鬼平は彦十を捜査に当たらせる。

 彦十は忠吾と共に滝野川へ出向く。そこで御用聞きの伊三郎と知り合う。二人は伊三郎に町人の死体を見せてもらうが、彦十は知らない顔だった。伊三郎の話から、男は侍から20両を奪ったがその後に殺されたらしいことがわかる。早速町人の人相書きを元に調べたところ、男は名古屋を根城にしている盗賊で、藪塚の権太郎という男だった。

 鬼平は報告を受け、名古屋を根城にしている盗賊が旅姿でなかったことに疑問を抱く。権太郎が滝野川あたりで仕事をするつもりではないかと疑い、天野に調べさせることに。そこへ伊三郎が殺された侍に狼藉をされたという村娘を連れてくる。鬼平はその娘よしから、その時の話を聞く。侍佐々木に襲われたおよしだったが、それを町人権太郎が後ろから撲殺、金を奪ったところへもう一人の男がやって来て、二人が争いとなり、磯七と呼ばれた男が権太郎を刺し殺した、ということだった。そして二人が板橋宿の旅籠に戻ろうと言っていたことも聞き出す。鬼平は二人が旅籠で何をしていたかと話すと、天野が口合人と待っていたのではと答える。口合人とは一人働の盗賊を頭に斡旋する仕事のこと。

 忠吾は彦十が口合人の鷹田(たかんだ)の平十と知り合いであることを確かめ、権太郎と磯七に仕事を世話したか確認するように言うが、五日前に平十は死んでしまっていたため、彦十は平十のカミさんに話を聞くことに。平十は二人を神取の為右衛門に紹介していた。鬼平は、手下の権太郎が殺されたことを知れば為右衛門は江戸から逃げ出すだろうと考える。そして為右衛門が板橋にいるだろうと推測し、早急に板橋宿の調査をするように命じる。しかしなかなか情報は集まらなかった。

 そんな時、五郎蔵が賭場で昔の盗賊仲間おろくと出会う。五郎蔵はおろくから、磯七が権太郎を殺したこと、為右衛門一味が江戸にはもういないこと、一味が狙っていたのは長崎屋だということ、を聞き出す。

 五郎蔵の報告を受け、盗賊改方では為右衛門一味の探索を中止する。長崎屋という名前から、一味が狙っていたのは下谷長者町の長崎屋だと判明、長崎屋から酒の差し入れが届けられる。

 月日が経つ。五郎蔵は五鉄のお時に呼び出され、彦十が半年も行方知らずだと聞かされる。その頃役宅に伊三郎が彦十のことを知らせに来る。忠吾は板橋宿に行くと、そこに五郎蔵も来ていた。彦十は板橋宿でずっと為右衛門一味が来ないか張っていて、病気になっていた。その三日後、板橋宿の入り口で張っていた五郎蔵は、昔の盗人仲間 、牛久保の甚蔵が徒労を組んでやって来るのを目撃、彼らの板橋宿での宿上州屋まであとをつける。

 上州屋の張り込みが続く。甚蔵が動き、彦十と五郎蔵、鬼平があとをつける。その頃上州屋には為右衛門がやって来て、今晩お勤めをすると配下の者に言う。

 甚蔵は釜屋という店で釘を買いに店に入る。彦十は甚蔵をつけ、鬼平は五郎蔵に長崎屋の人間を連れて来るように命じる。長崎屋が来たところで、五郎蔵がボヤ騒ぎを起こし、釜屋の店の人間をおびき出す。それを見た長崎屋は、半年前に長崎屋から消えた女がいることに気づく。鬼平は、為右衛門の狙いがこの店であると確信する。そして夜、為右衛門一味が店を襲うのを捕らえることに。

 後日談。鬼平が友人の見舞いの帰り道で、女が襲われているのを助ける。その犯人の中に、佐々木の仇だったことが町方から知らせで判明する。それを聞いた天野は、仇を討つ方も討たれる方も、路上で女を辱めようとしたとは、と驚く。鬼平はそれが浮世の仕組みというものであろうよ、人が何かをしようとすると必ず報いがある、良くも悪しくも、この当たり前のことが人という生き物にはなかなか飲み込めない、と答える。

 

 第6シリーズで初めて真っ当な盗賊の話。死体発見というちょっと派手なシーンから話が始まる。その死体が江戸を根城としていない盗賊のものだとわかり、探索をして行くが…

 与力天野が調べの中心となって動く。他の与力が出て来ない珍しい話となっている。また第6シリーズで五郎蔵の登場も初、というか前シリーズ第5シリーズでも最初の方で少し出ただけの五郎蔵が帰って来た、といったところか。天野役の御木本伸介さんや、五郎蔵役の綿引勝彦さんは、他に仕事でもあったのかしら?

 一つ良くわからないのは、彦十が為右衛門一味の捜査中止を受けても半年も単独で捜査を続行していたところ。ここだけがちょっと引っかかったが、良く考えてみると、冒頭で殺された侍が、以前世話になった小野田という男からの書状を持っていたため、昔の恩義を忘れていなかった彦十が頑張ったというところなのか。彦十が半年も頑張っていることを聞いた鬼平が何も言わないのではっきりとはわからないが。

 後半、釜屋前で鬼平が取る行動〜五郎蔵にボヤを起こさせる〜が、最初は?と思うが、わかってみるとなるほどと思わせる作戦だった。

 第6シリーズ、やっと見応えがある話だったが、最後の後日談は少し余計か。それとも最後に鬼平が珍しく長く語るところをみると、これが言いたかったことなのか。だからタイトルにもなっているのか。なるほどと思うが、ちょっとうーむ、かな。