花芒ノ海 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●花芒ノ海 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第3作。前作で明らかとなった友2人の死に関わる事件の黒幕、宍戸文六との闘いまでが描かれる。

 深川不動の夏祭りの仕切り問題、今津屋借金取りたての用心棒、幸吉の願い〜豆蔵の母吉原身売り、豊後関前藩へ、宍戸文六との闘い、など。敵討ちは終わるが、許嫁奈緒が身売りしてしまっており、磐音は奈緒を探し始める。これが次作以降のテーマとなる。

 シリーズ3作目にして、1作目冒頭での事件の仇討ちが達成され、やっと溜飲が下がる。ちょっと早い気もするが、このシリーズはテンポよく話が進むのが特徴のようだ。前作「寒雷ノ坂」で書いた、磐音の知り合いが出てきて次々と殺されてしまいその敵討ちというパターンはとりあえず3作目では回避されている(もちろん、最大の敵である宍戸文六は出てくるが)。

 様々な事件に巻き込まれるのはいつも通り。前作でも磐音には直接関わり合いのない男と女を描いた一編があったが、今回も幸吉がらみで子供の母親が吉原に売られてしまい、夫がその母親を吉原に訪ねて行き事件となる話がある。悲しい結末となるが、そこはひどく淡々と書かれており、藤沢周平氏の作品などと比べるとやはり軽さを感じるのは否めない。しかしまぁこの先も長く続くシリーズなので、このぐらいがちょうど良いのか、と感じ始めている。とりあえず次の作品を読みたくなるのは間違いない。