雨降ノ山 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●雨降ノ山 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第6作。江戸に戻って季節は夏。磐音が今津屋と関わる事件が主。隅田川花火大会用心棒、幸吉の長屋の婆詐欺被害での自裁、今津屋吉右衛門妻お艶大山詣りとその道中、磐音江戸に戻り弓場家慶長大判詐欺事件。

 奈緒の件が一段落し、第6作は今津屋での騒動が中心。特に後半3話は今津屋主人吉右衛門の妻お艶の病が発覚、大山詣りをするが、そこでまた悪人たちに狙われ…という話。途中釜崎弥之助という越後高田藩の凄腕らしき浪人が初登場し、おやっと思わせるが、結果登場した次の話で磐音と対峙し、あっさりと負けてしまう(笑 まぁいつも通りか。

 第5話の大判詐欺事件では、花魁となった奈緒を身請けしようとする旗本まで登場する。奈緒の件は一段落したはずが、こんな形で関係してくるとは。

 第4作で磐音が奈緒を追い、九州から京都や金沢まで駆け巡るが、これがまるで一昔前の刑事ドラマのような御当地紹介となっていて面白かったが、今回の大山詣りも同じような感じで、江戸から通常ルートではなく池上本門寺経由で大山へ行こうとする道中の紹介となっていた。登場人物の豊富さに加え、あちらこちらの土地の紹介もあり、より小説の舞台が身近に感じられるようになってきている。

 吉右衛門の妻お艶の死、という悲しい結末を迎える第6作だが、磐音と仲間たちと大山詣りをする小旅行をする、という楽しさや、おこんの磐音に対するセリフなどもあり、全体としては暗さは感じられず、相変わらずスイスイと読める話となっている。