居眠り磐音江戸双紙読本 番外編 跡継ぎ 佐伯泰英

●居眠り磐音江戸双紙読本 番外編 跡継ぎ 佐伯泰英

 磐音シリーズ25冊目にして初めての番外編を含む読本。

 シリーズ関連の場所の地図、書名の由来と巻数、家の見取り図、番外編「跡継ぎ」、登場人物一覧、河合敦氏による江戸コラム、著者佐伯泰英氏インタビュー、名台詞集、年表など。

 いわゆる「読本」ものならば、ここに記すのはヤメにしようと思ったが、番外編として「跡継ぎ」が掲載されているので記録として残すことに。

 「跡継ぎ」はおこんが今津屋へ奉公するきっかけとなった由蔵との出会いを描き、実際におこんが奉公を開始するその1年後の世界がメイン。出会いの方は、由蔵の人の良さが描かれると同時に、今津屋先代の吉右衛門が主人だった頃の話。由蔵もまだ老分ではない。そしてその由蔵が事件に巻き込まれていくのをおこんが助ける、という話。

 これは前作の磐音とおこんの祝言当日2人を送る由蔵が漏らした昔話の真実の内容となっている。何も世間のことを知らなかったおこんを由蔵が手助けし、今津屋に奉公することとなり、その頃由蔵が巻き込まれていた今津屋に関わる大事件の解決に今度はおこんが手助けをする、という内容。wikiを見ると、前作24作と同時にこの読本は刊行がされており、同時並行的に書かれた内容かと思うが、それにしても佐伯氏の話の作り方の上手さに感心するばかり。

 読本の内容としてはシリーズ愛読者にはもってこいの内容となっている。絵図もわかりやすく、年表も毎回つけて欲しいぐらいの内容だった。

 でも一番の収穫は、番外編の内容から、今津屋吉右衛門と由蔵の年齢がわかったことか。由蔵は吉右衛門の5歳上であり、磐音が今津屋と知り合った1772年には、由蔵47歳、吉右衛門42歳だと判明、吉右衛門が再婚した1776年は46歳だったことになる。後添えをもらって子供を作るにはまだ十分若い(笑

 もう一つの収穫は、著者のインタビューで著者自身が、シリーズは23作あたりで一区切りついており、その後は第二部のつもりで書いている、と言っていたこと。ここ2、3作で磐音の生活環境が大きく変わり、街の事件相手にしていた磐音が、最大の敵田沼意次との戦いに突入したことから、シリーズの雰囲気が変わったと思っていたが、著者もそのつもりで書いていたということだ。

 一旦休憩を取ったような感じで、また次作からが楽しみになった。

 

「居眠り磐音江戸双紙」読本 (双葉文庫)

「居眠り磐音江戸双紙」読本 (双葉文庫)

  • 作者:佐伯 泰英
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 文庫