探偵物語

●292 探偵物語 1983

 新井直美は女子大生。親の都合で1週間後にアメリカに行くことになっていた。退学届を出しに大学に行った際にサークルの憧れの先輩永井に誘われ、バイクで海へ。そこでペンダントをプレゼントしてもらう。夕食を共にした2人、永井は新井に朝食を一緒に食べようと誘いホテルへ。

 ホテルの部屋へ新井の叔父だという男が現れ、永井は帰ることに。直美はその男に見覚えがなく騒ぎ出す。2人は警察へ。そこで男は探偵で辻山と名乗り、直美のボディーガードを頼まれたと白状する。直美は家のお手伝い長谷沼の仕業だと思う。2人は警察から解放される。

 翌日も辻山は直美を尾行する。直美は永井に連絡を取ろうとするが取れず困っていると、辻山が電話番号から住所を聞き出す。2人は永井の家へ。しかし永井の家には女がおり、直美は永井に会うことはできなかった。

 その夜、直美の送別パーティが行われ、辻山も参加、直美の希望でチークを踊る。辻山は直美を家まで送る際に色々と話をし、別れた妻がいることを話す。家に戻った直美だったが、帰る辻山を尾行、辻山は別れた妻に会いに元妻が働くナイトクラブへ。辻山が店に入るとそこに直美がいた。2人は席を共にする。そこへ女性店員がやってくるが、その女は昼間永井の家にいた女で、直美にそのことを告げる。それを聞いた直美はもらったペンダントを投げ捨て、酒を飲む。酔った直美を辻山はおぶって家に送る。

 その頃辻山の元妻は男とホテルにいた。

 翌朝辻山は元妻に起こされる。元妻はホテルで一緒だった男が殺されていたと告げる。その男はヤクザの組長の息子でナイトクラブのオーナーだった。自宅で朝食をとっていた直美はTVのニュースで辻山の元妻が殺人の疑いで指名手配されているのを知る。直美は辻山の家へ。辻山は直美を返そうとする。そこへヤクザの岡野たちがやってくる。直美は辻山の家に入り、元妻を逃がそうとするが、時間がないため、布団に入り辻山の女のふりをしてその場をごまかす。

 直美は辻山のアパートの隣の住人に相談を持ちかけ、引越しをさせる。3人はその荷物の中に紛れ、トラックでアパートから脱出、直美の家へ行く。長谷沼は直美が騒ぎに巻き込まれることに猛反対するが、直美も反抗する。

 ヤクザの岡野は辻山の探偵事務所を見つけ出し、所長を脅す。夜、辻山は直美の家を抜け出す。直美は翌日殺された組長の息子の告別式へ出かけ、岡野と組長の息子の妻がデキていることを知り、2人を尾行しようとする。そこで辻山と合流する。2人は組長の家へ。辻山と直美は2人の会話を盗聴録音する。しかし運悪く組員に見つかり逃げることに。2人はラブホテルに逃げ込む。直美は組長息子殺しの犯人はホテルの部屋に隠れていたのではないかと推理する。

 2人は直美の家に。しかし長谷沼はおらず、辻山の元妻だけ残されていた。長谷沼は岡野たちに連れ去られており、電話があり翌日正午国崎会館で長谷沼と元妻の交換を要求される。

 1人で盗聴テープを持って出かけようとする辻山を直美は止める。そしてテープの複製を作成する。辻山と元妻は別室で会話をしていた。テープができ、渡しに行こうをした直美は2人が愛し合っている声を聞いて動揺する。そして夜の街に1人出かけて行く。

 酒場で言い寄ってきた男についてホテル街へ。直美は殺人のあったホテルに男と入る。そこで風呂場の天井に点検口があることに気づく。そして家へ戻ってくる。

 家には長谷沼が戻ってきていた。元妻が出向いてきて交換された、辻山はそれを聞いて慌てて出て行ったとのことだった。直美はテープを持ち、組長の元へ。組長は息子の嫁と岡野がデキていたことを知り激怒、岡野は指を詰めるが、殺しはしていないと話す。直美はホテルの風呂場の点検口の件を組長たちに説明する。その際、点検口通路でペンダントを発見する。辻山と元妻は解放される。しかしホテルの外にいた警察に2人は捕まってしまう。

 直美は現場で拾ったペンダントに心当たりがあった。大学に行き、永井に会い、ペンダントのことを聞く。ペンダントは永井の彼女がしていたもので、直美はその女に会いに行き、事情を説明すると女が殺人を白状する。女は永井に自首するのでバイクで連れて行って欲しいと頼む。

 辻山が釈放される。警察の外で元妻が待っており、よりを戻そうと話すが辻山は断る。明日アメリカへ立つ直美は夜辻山の家を訪ね、愛の告白をするが辻山は受け入れなかった。

 翌日空港ロビーに立つ直美の前に辻山が現れる。2人は長いキスをし、直美はアメリカへ旅立って行く。

 

 松田優作探偵物語だが、工藤俊作ではない。公開当時は、まだTV版探偵物語が好きすぎて、この映画は見る気になれなかった。またTVでこの赤川次郎探偵物語をドラマ化しており、そこでの探偵役柄本明さんがあまりにハマり役で、これで十分だと思っていた。

 ということで久しぶりにこの映画を観たが、赤川次郎の世界だった。あの頃三毛猫ホームズではない赤川次郎を何冊か読んだが、悪人もさほど悪人ではない、なんか長閑な世界観がこの映画の中でも生きていた。

 公開当時から話題になったラストはやっぱりちゃんと覚えていて、今回観ていて、最後の夜、辻山の家から自分の家に帰る直美のバックに薬師丸ひろ子のテーマ曲が流れ始めた時に、あれっ?テーマ曲早くない?と思ったが、最後は音なしでのキスシーンだったのね。

 しかし薬師丸ひろ子の歌声には独特のものがある。セーラー服と機関銃もそうだったが、この人の歌声は間違いなくあの頃の時代そのものを思い出させる力がある。

 全体的に1980年台前半の、バブル前の、若者たちの世界観が良く出ていた、と思う映画。懐かしかったなぁ。