散華ノ刻 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●散華ノ刻 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第41作。季節は引き続き春。磐音お代の方と面会、正睦お代の方と面会、武左衛門旅へと鑓兼一味の嫌がらせ、おそめからの祝い着と大決戦前夜、鑓兼成敗と武左衛門の帰着。

 前作で誘拐された正睦が戻り、いよいよ関前藩の内紛に決着が着く。キーポイントとなるのは、藩主実高の正室お代の方。磐音、正睦が面会し説得しようとするがダメなので、最終章で鑓兼との決戦となる。

 敵組織との大勝負となると、紀伊隠れ里での勝負以来となるが、あちらは剣での戦い。今回は言葉での勝負となる。まさに「半沢直樹」最終回(笑 もちろん言葉以外に説得力のある証拠が必要で、それが今回は阿片。事前に南町奉行所の力も借りて準備万端。憎くき相手でしかも田沼一族の鑓兼を成敗する場面は久しぶりにスカッとした。

 決着前にも鑓兼の嫌がらせ場面がなんども出てくるが、こちらも速水、利次郎、辰平など磐音の仲間たちがスカッと助っ人をしてくれている。

 決着後、乱心していたお代の方も尼寺へ入り死ぬことは免れる。こちらはホッとするところか。

 大決戦以外の見せ場ももちろんある。

 おそめが京都への修行の前に、祝い着を持って磐音のもとに訪れたり、武左衛門が金もなしに旅に出たり(笑

 巻末には短いながらも珍しく著者のあとがきもある。やはり人間は同じ過ちを繰り返す愚かな生き物である、という言葉がある。前作で感じて書いたことがそのままだ。

 いろいろとあったが、前作から続く関前藩の騒動が無事決着。さて次の展開はどうなるのか。あとがきによれば、「あの人」が出て来そうな予感。