湯島ノ罠 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●湯島ノ罠 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第44作。季節は春。佐野善左衛門暗殺妨害とおすな弟五十次、闇読売2枚と利次郎土佐藩仕官ならず、道場剣術試合と五十次関前藩船へ、利次郎関前藩指南役と辰平失踪捜索、辰平小伝馬町牢屋敷からの救出。

 前作で怪我から復帰した霧子が早活躍を始める。田沼意次と磐音の周りを「ちょろちょろ」している佐野善左衛門に暗殺の危機が迫り、それを弥助とともに妨害する。その暗殺者の一人が、おすなの弟五十次。39作で読売と手を組み一儲けをしようとしていたあの弟。そう言えば39作終わりで弥助も霧子も読売の店に潜入したが、次作40作では全くそのことに触れられていなかった。この五十次の話が前半の中心か。読売も世に出回ることになる。

 後半2章は、なんと辰平が拉致されてしまう話。登場人物たちの会話にもあるが、もう道場の中でも高弟となった辰平が簡単に拉致されるはずはなく、皆がその敵を訝しがあるが、なんと奉行所の人間であることが判明する。この探索に力を発揮、見せ場を作ったのが、南町与力の笹塚。上司にあたる南町奉行牧野との会話は、脇役ながら最後の見せ場となったか。

 霧子が怪我をしたり、辰平が拉致されたり。ラストに向けて、敵の攻撃も手段を選ばないようになって来た感じ。そして舞台は1784年。大きな事件が起こるはずだが。