竹屋ノ渡 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●竹屋ノ渡 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第50作。季節は1793年新春から秋まで。磐音空也家斉御目通りと土子順桂からの手紙、奈緒関前藩紅花栽培と殴られ屋向田源兵衛道場に戻る、速水右近婿入り、神保小路道場再興と引越、土子順桂との戦いと金兵衛死去。

 前作からいきなり5年後が描かれる。空也が14歳となり、12歳から道場での稽古を許されている。その空也が磐音とともに上様に呼ばれ登城し接見、その場で磐音は神保小路の道場の再興を言い渡される。

 5年が経過しているため、その他にも変化が。奈緒は関前藩での紅花栽培に全力を注ぎ、関前藩の新しい物産となることを目指している。道場には25作に登場した向田源兵衛が久しぶりの再登場。結果的に道場の師範代となる田丸輝信をサポートする。

 そのほかにも、道場の番犬だった白山も2年前に死んでおり、その代わり小梅が2匹の子犬シロ、ヤマを産んでいたり、速水右近が空也の存在から剣術の道を諦め、婿入りする決心をしたり。

 田沼一派なき後の最大の見せ場となると思われた土子順桂との戦いも意外にあっさりと片がついてしまう。

 そんな中、一番の驚きはおこんの父、金兵衛がラストで亡くなる場面。長屋の差配も隠居し、小梅村で暮らし始めていた金兵衛。自分が歳をとった、というセリフが何度かあったが、とうとう50作目のラストで亡くなってしまった。ただその最期は羨ましくなるほどの安らかな最期であった。

 

 さて次がいよいよラスト1作。最大の敵も倒し、空也もそれ相応の年齢になった。順桂が最期にまだ敵がいることを匂わせたが、それがラストを飾る話になりそう。長かったシリーズ、どんな結末を見せるのか。